震災を風化させてはいけない。その思いを事業継続力強化計画に!

熊本輸送団地協同組合

  • 所在地:熊本県上益城郡益城町大字古閑134-22
  • 業種:輸送事業者を中心とする協同組合
  • 1974年11月設立
  • 従業員数:14名
  • ホームページ:http://www.k-yuso.com/
地震協同組合

熊本輸送団地協同組合は、1974年に貨物自動車ターミナル等集団化事業として設立。共同給油事業や共同金融事業、高速道路料金後納事業のほか、現在は日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会によるローカルネット事業も行っている。組合に加入しているのは運送業9社と自動車整備業1社、そこに燃料卸売サービス会社1社が連携に加わり、計11社で連携事業継続力強化計画の認定を受けた。災害時は県トラック協会を通じて、被災地への災害支援活動をいち早く行っている。

震災を風化させてはいけない。その思いを事業継続力強化計画に! 熊本輸送団地協同組合

インタビュー(6分20秒)

真夜中に突然起きた巨大地震
その瞬間、何もかもが変わった

熊本市街から阿蘇くまもと空港へアクセスする道路として整備された県道36号線と、九州縦貫自動車道・益城熊本空港インターが交差する非常に交通が便利な場所に熊本輸送団地協同組合がある。

同組合は、1974年11月に貨物自動車ターミナル等集団化事業で設立。現在は運送業9社、自動車整備業1社の計10社が組合員となっており、まもなく50周年という節目を迎えようとしている。

現理事長の永井正人氏は、2017年5月に7代目として就任した。永井氏は就任する前年に起きた熊本地震の被災経験から、組合のBCP策定の重要性や災害対策に対して強い思いを持って取り組んできた人物である。

「4月14日夜(21時26分)に起きた地震では、それなりに大きい地震ではありましたが、施設は持ちこたえることができたので、とりあえず安心していました。しかし、今振り返ればそれが前震でした。その2日後にまさか大きな本震が来るとは、まったく想像もしていませんでした」(永井氏)

最初の地震発生から約28時間が経過した4月16日深夜1時25分に、マグニチュードM7.3、上益城郡益城町及び阿蘇郡西原村において最大震度7を観測する巨大地震が発生した。

「とにかく驚きました。深夜に起きた地震ということもあり、どんな状況なのかまったく分からず、無心でこの団地に向かいました。すると、やはり建物には大きな被害が出ており、倉庫内のラックはほとんどが倒壊。そこに収めている得意先の荷物は無残にも崩れ落ち、周囲に散乱している状態でした」

深夜だったことが唯一の救いとなり、倉庫内には誰もおらず、人的被害は皆無だった。だが夜が明けてから、周辺道路はいたる箇所で陥没しているほか、従業員が通勤のために利用する近くの橋は段差が生じて車両が通れないなどといった被害状況が次々と明らかになった。

「従業員やその家族も被災しており、事業再開は困難を極めました。だが、そのような状況の中でも、操業を再開できる組合企業から救援物資の輸送に着手することで、復興に向けてできる限りの取り組みをしました」

理事長の永井氏は「事業継続力強化計画の認定を受けたことで、組合員の防災意識がさらに強くなったと感じます。
災害を風化させないという想いがひとつの形になりました」と語った

2016年熊本地震の本震で甚大な影響を受けた倉庫内部の様子。
ラックが倒壊し、荷物が散乱しているのが分かる

1坪コンテナに50人分の物資を確保
さらにBCPの取り組みを優先課題に

永井氏は理事長に就任すると、まずは救援物資の準備に着手した。命をつなぐ物資の必要性を組合全体の課題とし、そこから1坪コンテナのアイデアが生まれた。

「災害に備えて、やはり生活を守る衣食住に必要な物資を自分たちで確保しておくべきだと考えました。そこで事務局を通じて、緊急時に必要な飲料水や食料、日用品などを1坪コンテナに備蓄し、各社へ設置しました」(永井氏)

1坪コンテナには、50人が約72時間しのげる12種類の物資を備蓄。各社が倉庫の脇など、それぞれが災害時に対応しやすい場所に置くことにした。また、同コンテナはフォークリフトを使ってトラックの荷台に簡単に積み込むことができるため、近隣地域で災害が発生した際は、物資を素早く送り届けることができる。1坪コンテナはそうした可搬性も考慮しており、災害で困っている人たちを優先的に助けられるという用途も持ちあわせている。

しかし、永井氏はこれでも災害対策は万全ではないと語る。やはり、組合員や従業員らが、常に防災意識を持つことが大切であると考えていた。

「時が経ち、通常の世界を取り戻していくうちに、被災経験が風化していくのを感じました。そうならないためにも、危機管理をもっと身近なところに感じながら、組合として取り組むことができないかと考えていました。ちょうどその頃、とある組合員の方が自治体に相談に行った際、職員からBCPの取り組みをすすめられたという話が挙がりました。それがきっかけとなり、BCPを組合の優先課題にしました」

組合の各企業にそれぞれ1坪コンテナが用意され、中には緊急時に必要な生活物資を備蓄している。
コンテナごと運ぶことができるので、この状態のまま被災地域に届けることができる

若き後継者からなる青年部会が
連携事業継続力強化計画を策定

BCPの作成は事務局が主導し、実際には青年部会が取り組むことになった。

各組合企業の二代目、三代目といった将来を担う若き後継者からなる青年部会は、この取り組みをどういった想いで進めたのか。青年部会長を務める株式会社 高森運送の大川雄司氏は、次のように語った。

「私も熊本地震を経験し、自分たちに何ができるのかを模索する日々が過ぎました。そんな中で今回BCPセミナーを受けたところ、国が認定する事業継続力強化計画の存在を知り、青年部会でこれは早急に取り組むべき課題であると全員で可決しました。やはり祖父、あるいは父から譲り受けた会社を守っていくことが雇用機会の創出になり、それが熊本市や熊本県の発展に繋がると考えています。100年先の子や孫の世代にも、今と同じような関係で連携企業が手を取り合っていければ、という想いがあります」

熊本県中小企業団体中央会の協力のもと、中小機構の中小企業アドバイザー・薗田恭久氏が組合事務局にアドバイスする形で、連携型による事業継続力強化計画の策定が進められた。

「今まで災害マニュアルがなかったので、事業継続力強化計画を策定したことにより、災害時にはどういった対応をすればいいのか? 組合内で共有できるようになったのがとても良かったと思います」(大川氏)

計画の内容を事務局と青年部会で詰め、その後理事会の承認を得る形で計画書を作成した。

本計画では、組合に加入している運送業者9社と自動車整備業1社のほかに、燃料卸売サービス会社1社が連携した計11社で、災害が起きたときに素早く対策を講じることができる体制作りを目指した。

具体的には、対策本部の設置や情報収集体制の整備、被害状況の確認や情報共有など。そうした初動対応を早めることで、災害支援活動の素早い対応を可能にするという狙いがある。また、現在課題としている企業間の代替輸送については、これから話を詰めていく予定だという。

青年部会長を務める大川氏。「熊本地震の前までは、防災・減災対策は正直皆無でした。
自然災害に対する危機意識はたしかに低かったのですが、事業継続力強化計画を策定したことによって、
改めて緊急時の対応について考えるようになりました」と語った

計画の策定で仲間との絆が深まった
連携事業継続力強化計画の効果

熊本県はかつて自然災害とはほぼ無縁な地域といわれていた。

だが、熊本地震に続き、2020年7月には県南部を中心に記録的な大雨が降り、河川周辺部に甚大な被害が発生した。そうした地震や台風、集中豪雨といった災害がここ数年頻発しており、この地域で営む企業は災害リスクを踏まえて、適切な対策を講じる必要性が求められてきた。

「このところ荷主様から災害対策について問い合わせを受けることが増えました。その際は連携事業継続力強化計画の認定の話をしています。国からのお墨付きのもとで、防災・減災対策をアピールできるのは魅力だと思います」(大川氏)

また、計画の策定によって各企業が連携したことで、青年部会メンバーの意識に変化が現れてきたという。

「防災について話し合ったことで、みんな一人じゃないということを強く感じたのだと思います。それまでは会っても他愛ない会話が多かったのですが、計画の策定がきっかけとなったと思いますが、意識が明らかに変わりました。絆がより深まったと思います」(大川氏)

熊本地震からまもなく6年が経とうとしている。その震災の経験を風化させないためにも、今回の連携事業継続力強化計画の策定は、大きな役割を果たしたことは間違いない。

事業継続力強化計画の策定は、今後自社に起きる自然災害(=課題)を想定し、防災・減災対策(=戦略)を立てるという、経営の基本中の基本である。

ことわざの“獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす”ではないが、熊本輸送団地協同組合のように若い後継者に事業継続力強化計画の策定を任せてみる、というのもひとつの手ではないだろうか。

  • <中小機構・中小企業アドバイザー・薗田恭久氏より>

    一般的な攻めの経営に対して、事業継続力強化計画の策定は守りの経営といえます。攻めと守りの両方を併せ持つことが、今後の経営者にとって重要な取り組みになると考えています。また、防災の考え方に、自助、共助という言葉あります。自助は自分の安全は自分で守る、つまり企業が単独で対策を講じることですが、これではどうしても限界があります。そこで共助という考え方、つまり今回の熊本輸送団地協同組合のような各企業が連携することで、より強い災害対策が可能になります。これからはまず共助に注力し、そこから個々の企業の自助に繋げていこうと考えています

    中小機構・中小企業アドバイザーの薗田氏は「自助も大事ですが、共助の重要性を理解していただき、今後は連携(事業継続力強化計画)に取り組んでもらいたいと思っています」

  • <事業継続力強化計画の策定に生かせる、3つのヒント>

    1)中小機構の専門家派遣&個別支援を活用する
    2)若い後継者に事業継続力強化計画の策定を託す
    3)被災経験で見えてきた課題を計画に盛り込む

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