産官学連携による防災意識の向上で、水平型の連携を実現

尼崎鉄工団地協同組合

  • 所在地:兵庫県尼崎市東海岸町1-63
  • 業種:工業団地
  • 組合員数:24社(準組合員1社)
  • ホームページ:https://www.amateko.org/
地震製造業

1967年(昭和42年)8月、大阪湾に面した尼崎市東海岸町埋立地に、鉄工、金属、機械、電機等の業種による複数の組合企業が集積した工業団地として設立。団地内に共同受電(電力供給)、ガス供給、食堂や購買、事務所等の共同施設を設けることで、各組合企業の近代化や産業の発展に寄与した。2017年には設立50周年という大きな節目を迎え、将来の事業継続に関する対策を前向きに検討。そこで近年、自然災害が多発していることから、組合に参画している複数企業による水平型の連携事業継続力強化計画の認定を取得した。

産官学連携による防災意識の向上で、水平型の連携を実現 尼崎鉄工団地協同組合

インタビュー(6分52秒)

関西圏を麻痺させた2018年台風21号
防災・減災対策が喫緊の課題に

阪神電車 尼崎駅から車で大阪湾方面に走ること約5分。阪神高速5号湾岸線 尼崎東海岸出入口のすぐそばという好立地に尼崎鉄工団地協同組合がある。

大阪湾に面したこの地域は、大規模なロジスティクスセンターや工場といった工業施設が立ち並んでいる印象があるが、近年は開発が進み、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をはじめ、広大な面積を有する運動施設や公園など、多くの人が訪れる観光スポットとしても人気が高まっている。

尼崎鉄工団地協同組合が設立したのは、今から54年前の1967年のこと。当時、国内産業は高度経済成長期のまっただ中であったが、工場制限法の適用や、周辺住民からの公害や騒音といった苦情が相次いだことで社会問題になり、尼崎市内で操業していた一部の製造業は移転を余儀なくされた。

そこで、国及び県、市の中小企業施策に基づき、鉄鋼や金属製品、機械・電機器具といった製造業の中小企業24社が新たに設立された尼崎鉄工団地協同組合の組合員となりこの地に移転。2年後の69年には、全社が新工場での操業を開始した。

これにより、一連の社会問題を解決すると同時に、相互扶助の考え方に基づく共同化によって組合員は経営体質が改善し、さらなる技術の発展や生産性の向上を目指すことが可能になった。

2017年には設立50周年の記念式典を開催。半世紀という大きな節目を迎え、今後の組合の運営の方向性を組合員らが模索していたちょうどその頃、2018年9月に台風21号が関西に上陸した。

この当時の状況を、尼崎鉄工団地協同組合 専務理事兼事務局長である宮田德三氏が当時を振り返った。
「関西空港につながる道路の橋脚に大型船が衝突し、空港のライフラインが一時寸断されたことで全国的なニュースになりましたが、あの台風21号の風水害は、私たちにとっても想定外の被害が出たことで今でも鮮明に覚えています。具体的な被害は、組合員の施設の屋根が飛んだり、私どもの事務所の天井が落ちたりというようなことがあったほか、組合企業に電力を供給する共同受電システムが支障をきたしたことで約1日停電し、組合員のみなさまの操業に大変な迷惑をおかけしたことがありました。とはいえ、あれほど強風でありながら、人的被害が一件もなかったのが不幸中の幸いだと思っています。事業を継続する点については、多くの課題が見つかり、その後の組合の会合では、自然災害に対して具体的な策を講じないといけないという方向で意見がまとまりましたが、一方で組合員から財政的な支援が得にくいという状況もあり、別の方法での支援を検討するという結論に至りました」(宮田氏)

製造業24社を組合員に持つ尼崎鉄工団地協同組合

組合員らの防災意識を大きく変えた
インターンシップによる学生との交流

自然災害は次にいつ起こるか分からない。だからこそ、事務局としては防災対策に一刻も早く取り組みたい。そこで、食料や飲料、簡易トイレ、懐中電灯、燃料(カセットボンベ等)をひととおり用意し、災害に備える体制を整えた。

この備蓄によって、ハード面の対策ができたが、組合全従業員約300人の防災意識まで改革するのが難しいという点が浮き彫りになった。そんなとき、尼崎市からある連絡が入った。
「学生の体験学習の一環として、当組合と社会問題について考えるプログラムが何かできないか、という話がありました。具体的には、関西大学 社会安全学部のゼミが防災・減災について考えていきたいということで、事務局としてもこれは組合員の防災対策の意識の向上、つまりソフト面として効果があるのではないかと考え、インターンシップという形で、学生の受け入れの準備を整えました」(宮田氏)

令和元年度(2019年度)に始まったこのインターンシップによって8つの組合員で計14名の学生を受け入れ、そこから学生と企業がともに災害について考えるきっかけが生まれた。それからまもなくして、学生らは『企業のための減災ガイドBOOK』という冊子を制作した。これは、災害時の行動をあらかじめ決めておくことで、緊急時に適切な初動対応を可能にするものであった。

翌令和2年度(2020年度)にも8名の学生を受け入れ、組合員の避難訓練を実施した。
「鉄工団地から6つの避難ルートを設定し、組合の従業員のみなさんに実際に歩いていただき、そこから見えてきた課題や問題点を学生らが取りまとめました。さらに、令和3年度(2021年度)にもインターンシップを実施し、学生らと意見交換する機会が増えてきたこともあって、組合員の災害に対する危機意識が徐々に高まっていったのを感じました」(宮田氏)

「事務局が備蓄を用意したからといって、それは防災対策の一部に過ぎません。
災害が起こったら何をすべきかを学生らと真剣に考えたことで、
組合員の災害に対する危機意識が高まったと感じます」と述べた宮田氏

組合の全従業員(約300人)が3日間過ごせる水や食料、簡易トイレ、その他生活に必要なものを用意している

防災意識を風化させてはいけない
連携事業継続力強化計画の策定に着手

組合員の防災意識の高まりとともに、防災・減災の取り組みを何かの形として残せないかと考えた宮田氏。そこでたどり着いたのが、事業継続力強化計画(ジギョケイ)の策定だった。
「せっかく高まってきた防災意識を風化させないためにも、何か客観的に担保するものが必要ではないかなと思っていました。そうした時に、中小機構 近畿本部のアドバイザーの方からお話をいただき、事業継続力強化計画の策定を進めることにしました」(宮田氏)

尼崎鉄工団地協同組合は24社の事業者(組合員)で構成されていることもあり、連携型を視野に策定を進めることにした。計画には、喫緊の課題となっている地震対策、特に今後30年のうちに約8割の確率で起こるといわれている南海トラフ地震を想定し、その具体的な対策を盛り込むことにした。その際、防災対策の基本にしたのが、以前作成した減災ガイドブックだった。
「何分後に誰がどこへ避難するとか、何分後までに非難を完了するとか、災害時における初動対応は、各組合員で作成した減災ガイドブックの内容に合わせる形にしています。そうしたうえで、事務局は災害対策本部としての役割を担い、本部と支部(組合員)が連携し、災害時に組合員同士がどう協力していくのか。情報をどういう形で伝達するのかといった内容を検討しました」(宮田氏)

複数企業の足並みを揃えなければならない連携事業継続力強化計画の策定ということもあり、中小機構のアドバイザーからの意見が非常に参考になったという。
「私どもが見えない部分、たとえば組合員の避難体制をもっと具体的に作成する必要があるのではないかといった指摘を受けたり、当然書面としての基本的な部分に手を入れていただいたりしたおかげで、策定から認定までスムーズにできたのではないかと思っております」(宮田氏)

こうして、尼崎鉄工団地協同組合は、2021年5月20日に事業継続力強化計画の認定事業者となった。

2019年にインターンシップによる学生の受け入れを開始し、そこから3年後の2021年5月に連携事業継続力強化計画の認定を受けた

災害と真剣に向き合う時間が大切
学生らがそれを教えてくれた

連携事業継続力強化計画の認定を終えて宮田氏は、
「現段階では、防災・減災対策の第一歩に過ぎません。ですが、こういった認定をいただいたことで、防災意識を風化させないという当初の目的は果たせたのではないかと思っています。また、今回の計画策定にあたり、学生らと組合員が減災について一緒になって考えたことが大きなきっかけになったと感じています。やはり、これまで防災・減災に関して私たちも甘く考えていた部分がありました。そうしたところに、学生からの忌憚のない意見、さらに問題等を指摘されたことで、防災対策に真剣に取り組まないといけないと動機付けられたのだと思います。2021年で3年目を迎えたインターンシップですが、大きな意義があったのではないかと感じます」(宮田氏)

いつかはやらなければいけないと分かっていても、実行になかなか移すことができない防災・減災対策。尼崎鉄工団地協同組合の場合、それを産官学、つまり企業と自治体と大学が連携することでインターンシップを実施し、それによって組合員の防災意識が高まり、今回の連携型による計画の策定につながったといえる。

このような複数企業を抱えている全国の協同組合や工業団地は、今後防災・減災に関して前向きに取り組み、組合企業と連携しながら相互に事業継続力を高めていく必要があるだろう。そうすれば、連携事業継続力強化計画の認定を視野に入れた、より具体的な対策に移すことも可能だ。

事業継続力強化計画の策定について分からない点があれば、全国にある中小機構各本部に問い合わせてみたい。

関西大学 社会安全学部の学生らが制作した「企業のための減災ガイドBOOK」。
尼崎鉄工団地協同組合の組合員に配布し、その後市内の事業者にも配布された

  • <事業継続力強化計画の策定に生かせる、3つのヒント>

    1)災害と真剣に向き合う機会を設ける
    2)中小機構の専門家派遣(支援)を活用する
    3)組合内で防災・減災対策を相互連携する

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