梅雨の大雨による水害に備える

2021.06.09風水害

1. はじめに

雨の季節がやってきました。今年は、例年と比べて梅雨入りの早い地域が多くなっています。日本では、12の地域ごとに気象庁から梅雨入り、梅雨明けが発表されます。筆者の梅雨のイメージといえば、「しとしとと降り続く雨」なのですが、近年は、災害が発生するレベルの激しい雨が長い時間、降ることも珍しくなくなりました。みなさんの梅雨のイメージはいかがでしょうか。大雨の回数は、長期的にみると全国で増加傾向にあります。今回は、過去の梅雨の季節の大雨による水害を知って、他人事から自分事へ「大雨への備え」を考えたいと思います。

なお、梅雨入り、梅雨明けの期日は、気象庁が秋に確定します。

図表 令和3年の梅雨入り(令和3年5月16日時点)

地方 令和3年 平年差 昨年差 平年 昨年
沖縄 5月5日ごろ 5日早い 11日早い 5月10日ごろ 5月16日ごろ
奄美 5月5日ごろ 7日早い 12日早い 5月12日ごろ 5月17日ごろ
九州南部 5月11日ごろ 19日早い 19日早い 5月30日ごろ 5月30日ごろ
九州北部 5月15日ごろ 20日早い 27日早い 6月4日ごろ 6月11日ごろ
四国 5月15日ごろ 21日早い 26日早い 6月5日ごろ 6月10日ごろ
中国 5月15日ごろ 22日早い 26日早い 6月6日ごろ 6月10日ごろ
近畿 5月16日ごろ 21日早い 25日早い 6月6日ごろ 6月10日ごろ
東海 5月16日ごろ 21日早い 25日早い 6月6日ごろ 6月10日ごろ
関東甲信       6月7日ごろ 6月11日ごろ
北陸       6月11日ごろ 6月11日ごろ
東北南部       6月12日ごろ 6月11日ごろ
東北北部       6月15日ごろ 6月25日ごろ

出所:気象庁 「令和3年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)」より
https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/baiu/sokuhou_baiu.html

2. 令和2年7月の豪雨

まだ記憶に新しい令和2年は、5月から7月にかけて沖縄地方から東北地方にかけて各地で大雨となりました。特に7月は、梅雨前線が九州付近を通って東日本にのびて停滞し、前線の活動が非常に活発で、西日本や東日本で大雨となりました。九州北部と九州南部では、線状降水帯(※)が形成されて記録的な大雨になり、岐阜県周辺で激しい雨が断続的に降りました。その後も前線は、本州付近に停滞して西日本や東北地方の広い範囲で雨の降る日が多くなり、中国地方と東北地方で大雨となりました。九州南部、九州北部、東海地方および東北地方の多くの地点で時間降水量が観測史上1位の値を超えました。

この大雨では、全国で960件を超える土砂災害が発生し、九州地方から東北地方にかけて200河川で洪水等による水害も多く発生しました。特に熊本県の球磨川は、複数個所で堤防が決壊等したため氾濫し、球磨村の高齢者施設で14名が亡くなり、球磨川流域において氾濫による死者50名に及ぶ被害が生じました。高齢者関係施設・医療施設・薬局・商店街・工場・商業施設への浸水、LPガス容器の流出・土砂埋没等により企業活動の被害も多く発生しました。

※線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される。線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。

図表 令和2年7月豪雨 渡地区の浸水被害跡(第二球磨川橋梁)

令和2年7月豪雨渡地区の浸水被害跡(第二球磨川橋梁)

図表 令和2年7月豪雨 青井阿蘇神社の蓮池に水没した車

令和2年7月豪雨青井阿蘇神社の蓮池に水没した車

出所:財団法人消防科学総合センター 災害写真データーベースより

出所:内閣府防災情報のページ 「令和2年7月豪雨による被害状況等について」より

http://www.bousai.go.jp/updates/r2_07ooame/index.html

出所:国土交通省 「令和2年7月豪雨による土砂災害発生状況」より

https://www.mlit.go.jp/river/sabo/jirei/r2dosha/r2_07gouu.html

3. 平成30年7月豪雨

平成30年の7月に前線や台風の影響により、日本付近に温かく非常に湿った空気が供給され続け、西日本を中心に全国的に広い範囲で大雨となりました。九州北部、四国、中国、近畿、東海、北海道地方の多くの観測地点で当時の観測史上第1位の降水量を記録しました。

この大雨では、全国で2,500件を超える土砂災害が発生し、死傷者は230名以上に及ぶ被害が生じました。特に広島県内においては20市町で484箇所の土砂災害が発生し、死者・行方不明者は100名以上に及ぶ被害が生じました。また、94河川で破堤・越水が起き、県全域にまたがるライフラインへの被害、線路敷の流失など鉄道への被害や道路損壊も発生し、交通ネットワークが多数被災したため、操業不能(一部操業:64社、操業不能:82社)になる企業も続出しました。

図表 平成30年7月豪雨により崩壊した斜面

平成30年7月豪雨により崩壊した斜面
平成30年7月豪雨により崩壊した斜面

出所:財団法人消防科学総合センター 災害写真データーベースより

4. 全国で発生している大雨災害

平成21年から平成30年までの10年間において全国にある1,741市区町村(平成30年末)のうち、一度も河川の氾濫等による水害が起きていないのは、48市町村(2.8%)だけです。残り1,693市町村(97.2%)は、1回以上の水害が発生、そのうち980市区町村(56.6%)では、10年間で10回以上の水害が発生しています。また、梅雨の大雨は、毎年のように大規模な水災害を引き起こしています。
出所:政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201507/1.html

図表 平成21年から平成30年までの梅雨の大雨災害

災害名称等(期間)
平成30年7月豪雨(6月28日~7月8日)
平成29年7月九州北部豪雨(7月5日~6日)
平成28年梅雨前線による大雨(6月19日~30日)
平成27年梅雨前線および台風第9号、第11号、第12号による大雨(6月2日~7月26日)
平成26年台風第8号および梅雨前線による大雨と暴風(7月6日~11日)
平成25年梅雨前線および大気不安定による大雨(7月22日~8月1日)
平成24年7月九州北部豪雨(7月11日~14日)
平成23年7月新潟・福島豪雨(7月27日~30日)
平成22年梅雨前線による大雨(7月10日~16日)
平成21年7月中国・九州北部豪雨(7月19日~26日)

出所:気象庁 「災害をもたらした気象事例(平成元年~本年)」より
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/index_1989.html

過去、梅雨の大雨による水害事例では、例えば、従業員が土砂崩れの発生に巻き込まれたり、工事作業中の河川や下水管内で急激な増水により流されて従業員が亡くなっています。また、港湾に材木等が流出し埋め尽くされる等して一定期間、港湾が使用できなくなるなども起きました。農業、林業、水産業での水害は、もとより多くの業種で被害を受けています。

企業活動における水災害事例

  • 物流センターの造成工事現場で排水管に流され死傷者
  • 部品工場の裏山の土砂崩れによる死傷者
  • アルミ工場への浸水による爆発・火災
  • 国道の法面崩落による運送車両の物損
  • 観光地域で延べ1.5万人の宿泊予約キャンセル
  • アンダーパスの浸水による車両の水没
  • 高速道路の通行止め
  • 鉄道の運休

5. 豪雨災害に備える

大雨による災害の特徴を知り、自治体が提供している「水害ハザードマップ」を活用し、自社の事業所や工場等が立地している地域にどのような災害リスクがあるかを確認しましょう。水害ハザードマップには、想定される最大規模の降雨、浸水範囲や深さの情報の他に避難場所等の必要な情報も記載されています。また、拡張現実(AR)技術を使った浸水被害を疑似体験できるアプリを活用する方法もあります。自宅や勤務先がどの程度まで浸水してしまうのかを視覚的に確認できるので、商品や機械設備等を移動する際の参考や実際に浸水してしまった際の安全な避難方法と避難場所の検討にも活用できます。浸水の危険を視覚的に捉えることで防災について考えるきっかけに役立ちます。

従業員等が安全に避難するためには、避難場所、避難経路、避難方法を平時から従業員へ周知させておくことも重要になります。また、定期的に安全の再確認や見直しをすることも必要です。
参考:国土交通省ハザードマップポータルサイト https://disaportal.gsi.go.jp/

企業活動における事前対策事例

  • テレワークへの切り替え
  • 計画的な休業実施
  • 時差出勤の実施
  • 安否確認と出勤可能者確認
  • 業務の前倒しや終業時刻の切り上げ
  • 重要設備や商品等の高所への移動
  • 防水資材の設置
  • モニタリング実施(河川水位・避難情報等)
  • 保険(契約・見直し)

6. まとめ

毎年6月は、「土砂災害防止月間」でもあります。防災・減災の取組の一環として、梅雨や台風の時期を迎えるにあたり、土砂災害の防止および被害の軽減の重要性について認識し、理解を深めるよう定められました。全国の都道府県において約64万箇所(※)が土砂災害警戒区域に指定されています。
※令和2年12月31日時点

自社では、何から始めていいのかわからない場合、自然災害や感染症等による事業活動への影響を軽減することを目的として考案された「事業継続力強化計画」の策定内容に沿って検討することをお勧めしています。「事業継続力強化計画」では、経営資源のうち重要なヒト、モノ、カネ、情報の災害対策を記載します。自社のヒト、モノ、カネ、情報の視点から大雨への備えを点検し、災害対策について従業員のみなさまと話し合うキッカケにしては、いかがでしょうか。

中小企業基盤整備機構では、事業継続力強化計画の策定の無料支援メニューを複数ご用意しています。また、中小企業基盤整備機構の強靱化サイトでは、事業継続力強化計画の手引きの解説を掲載しております。

事業継続力強化計画 手引きの解説 https://kyoujinnka.smrj.go.jp/guidance/

【プロフィール】

小沼 耕一 独立行政法人中小企業基盤整備機構アドバイザー
中小企業診断士

特殊用途の検査装置や加工装置の開発、品質管理、不動産の企画や営業を経験。現在は、新規事業展開、BCPや連携事業継続力強化計画策定、各種補助金申請等の支援を行う。

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