昨今のビジネスをめぐるリスク~事業継続力強化が大事なわけ~

頻発する激甚災害

近年、地球温暖化によって、日本の平均気温は1898年以降では100年あたりおよそ1.2℃の割合で上昇しています。気温が上昇すると、海水温も上昇し、これが台風を発達させることになり、日本列島は「100年に一度」と形容される台風や豪雨に、毎年見舞われるようになってきました。日本を襲う「100年に一度」クラスの台風や豪雨が、2040年までには3倍になるとの予測もあります(出典:マッキンゼー・アンド・カンパニー「アジアの気候リスクと対応(Climate risk and response in Asia)」)。今後、激甚災害への備えは必要不可欠だといえます。

また、日本は地震の多い国です。全世界のマグニチュード6以上の地震の20%が日本付近で起きており、地震や津波は日本全国、いつ、どこで起きてもおかしくありません。

台風等により、水災害がますます頻発化しています。地震についても、今後30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は70~80%、根室沖の巨大地震が80%程度、首都直下型地震も70%とされています(地震発生確率は「地震本部」サイト、『国土交通白書2020』による)。ほかにも大雪による被害、竜巻、火山の噴火、高潮等も起こり得ます。自然災害のリスクは高まる一方です。

自然災害による事業への影響

ひとたび自然災害が発生すれば、従業員やその家族の命が危険にさらされ、事業活動の停止を余儀なくされる可能性は少なくありません。営業が停止すれば、経営上の損失が生じます。

では、地震や台風・豪雨に見舞われると、どれほどの経済損失が出るのでしょうか。

日本における近年の激甚災害

日本における近年の激甚災害

東日本大震災(2011年3月11日)

マグニチュード9.0。日本周辺における観測史上最大の地震でした。被害額は約16兆9,000億円(内閣府推計)。 サプライチェーンの寸断・停滞により、被災地域の生産活動が止まったのはもちろん、震災被害のない地域の製造工場が休止に追い込まれた例も多数ありました。想定外の巨大な津波で沿岸の街は破壊され、電力供給不足も大きな問題となりました。

熊本地震(2016年4月14日・16日)

中小企業被害額は1,600億円でした(内閣府政策統括官「平成28年熊本地震の影響試算について」より)。震度7の地震が2回、余震も数多く発生しました。多数の建物が損壊。余震が続き、生産再開に困難をきたす企業が多数出ました。工場の操業停止により、国内のすべての工場で1週間程度、操業停止を行ったメーカーもありました。

北海道胆振東部地震(2018年9月6日)

北海道全域で停電が発生。中小企業の被害額は42億円に上りました(「中小企業白書2019」より)。
停電で営業(操業)を取りやめたことによる売上(出荷)への影響額は、推計約1,318億円、宿泊施設、フェリー・遊覧船のキャンセル等による観光消費への影響額は約356億円(2018年11月21日現在。北海道庁の資料「平成30年北海道胆振東部地震による被害の状況について」より)

西日本豪雨(平成30年7月豪雨)(2018年7月)

中小企業被害額4,738億円(「中小企業白書2019」より)。
長期間の記録的な大雨により、西日本を中心に1道2府28県という広域で多くの河川が氾濫し、がけ崩れが発生しました。岡山県総社市のアルミ工場では、河川の氾濫によって工場内に大量の水が流入し、水蒸気爆発が発生。山口県では酒蔵の冷蔵設備が停止し、1か月弱、製造停止となりました。このほかにも浸水や部品供給への影響から操業停止となった工場が多数出ました。

令和元年房総半島台風(台風15号)(2019年9月)

千葉県内で送電塔2本と電柱84本が倒壊するなどし、広範囲で長期間の停電が起きました。また停電により断水が発生し、ガソリンスタンドではポンプが動かないため給油ができないという被害も出ました。
農作物等の被害は124億円(農林水産省「令和元年房総半島台風(台風第15号)に係る被害情報 農林水産関係の被害状況等」令和2年11月27日)。冷凍施設や養殖施設の機能停止による水産業の被害も大きく、浸水による工場の一時操業停止も起きました。

自然災害の被害額は1人3,385ドル

自然災害による経済損失は非常に大きくなります。2015年1月に報告された、1980年から2014年までの世界の主な自然災害で経済損失が最も大きかったのは、2011年3月11日発生の東日本大震災です。その額は2兆1000億ドル(被災時のレート換算)に上ります。

また、1985年から2015年の被害総額を2014年の人口で割った額を各国別に算出すると、日本は3,385ドルにもなります。1ドル=110円で換算すると、37万円余りです。決して小さな額ではなく、備えの必要性を示す数字といえるでしょう。

諸外国における1人あたり*の自然災害被害額
(1985-2015合算値、ドル)

新たな脅威 新型コロナウイルス

自然災害が増える近年、まずは自然災害によるリスクを想像し、災害に負けない事業継続力をつけることが求められます。

同時に、2020年、新型コロナウイルス感染症により、社会はより一層、先行き不透明感が増しました。2020年4月から6月までのGDPは、実質の伸び率が、年率に換算してマイナス27.8%となりました(2020年8月内閣府発表)。リーマンショック後の2009年1月から3月の年率マイナス17.8%を超える落ち込みとなり、新型コロナウイルスが経済に与えた影響の大きさが、数字からも見てとれます。
今後の事業継続を考えるときは、自然災害と同様、こうした感染症のリスクも1つの災害リスクとして考え、影響を確認し、対策を立てることが大切です。