自社の防災・減災対策は万全か?⑤
従業員の生命維持と復旧活動の準備

2022.03.30防災設備特集
事業継続力強化計画(ジギョケイ)実践講座 ~防災設備編~

本動画では、5回シリーズの記事をまとめてご紹介しております。
ぜひ記事と合わせてご覧いただければ幸いです。

従業員のために用意しておきたい災害グッズ

前回までは事業を継続するうえで欠かせない防災設備を紹介しましたが、ここでは従業員を災害から守るための対策、いわゆる“人のケア”について考えてみたいと思います。企業や団体、自治体等に防災・減災対策の指導をしている中小企業基盤整備機構(中小機構)アドバイザーの山﨑 肇氏と、猿川 明氏に話を伺いました。

従業員を抱えている企業における、災害対策の基本的な考え方とは。

「従業員の生命の維持を最優先に考えるべきです。災害が発生すると、あらゆる場所で同時に被害が出るため救護活動に遅れが生じるほか、水や食料といった支給物資が届くまでそれなりに時間がかかります。そうした外部からの支援を受けられない期間が、災害後約3日間といわれています。その間は備蓄しておいた物資でやり過ごす自助努力が必要になります。従業員を抱えている企業は、従業員が3日間社内に滞在しなければいけないことを想定し、その対策を講ずることが必要になります」(山﨑氏)

どういった物資を備蓄しておけばいいのか。

「最低3日分の飲料水と食料は必ず用意してください。飲料水はひとりあたり1日3〜4リットルを目安に、食料は3日間で9食分です。このほかにも防災用アルミ保温シート、毛布、段ボールなどがあると、社内で宿泊しなければいけないときに役立ちます」(山﨑氏)

トイレの問題はどうすればいいか。

「多くの人が制限された空間で共同生活をするので、避難所と同じ問題が発生します。最も懸念されるのはトイレの問題です。断水した場合、トイレが使えなくなるため、簡易トイレを用意しておくといいでしょう。簡易トイレにはさまざまな種類がありますが、オフィスのようにすでにトイレが設置されている場所には、洋式トイレの便器に被せるタイプを使うのがいいでしょう。便器にビニール袋を被せ、その中に凝固剤を入れて使用します。一回ごとに捨てられるので、トイレを常に清潔な状態に保つことができます。ひとりあたり1日4〜7回分を目安に用意してください」(山﨑氏)

洋式トイレにビニール袋を被せて使用するタイプ。ホームセンターで購入できる

従業員が社内で滞在するうえで懸念されることは。

「女性社員がいる場合は、女性に対する配慮が必要になります。災害時はオフィスの中に女性専用エリアを設けることで、男性が立ち入らないようにします。従業員同士ということもあり相互扶助の考え方ができているので避難所のようなトラブルは起きにくいと考えられますが、こうした男女のゾーニングを明確にすることで、女性社員のストレスを少しでも軽減させる工夫をしましょう。このゾーニングの考え方は、机上訓練でも取り上げるべき大切なテーマだと思います」(猿川氏)

災害時、社内での宿泊といった非日常な状態が続くと、中には体調を壊してしまう従業員が出る可能性があります。そうした人を安静にする場所を確保することも必要です。

また、感染症のリスクを抑えるうえでも、アルコール消毒液、除菌シート、ハンドソープなども多めに用意しておくのがいいでしょう。また、合同での飲食、限られた空間に何人もの従業員が集まることも避けたいものです。

たとえば会議室を災害対策本部に、応接室を救護室に、更衣室を女性専用ルームにといった具合に、
災害時におけるオフィスの部屋割りを事前に決めておけば混乱を回避できる

事業継続の事前対策と、災害時に重宝する便利なアイテム

従業員の安全が確認でき、社内でひとまず作業できる態勢が整ったら、次は事業継続のための取り組みに入ります。復旧活動の際に必要となるアイテムを用意しておくと、いざという時にすぐ対応できるようになります。

初動対応時に必要なアイテムは。

「建物が倒壊、あるいは設備が転倒や落下している場合、建物の中に侵入するのはかなり危険です。しかし、従業員の救助や捜索、設備の緊急停止などの操作でどうしても必要な場合は、安全を十分に確認したうえで活動を開始します。ヘルメットや作業着、手袋、懐中電灯、トランシーバーなどを常備しておくのがいいでしょう」(山﨑氏)

災害時の役割分担はどうするか。

「災害が起きると社内の体制が混乱するので、災害時の役割を事前に決めておくのがいいでしょう。下記は一例ですが、このように社長以下、部門のトップが災害時における担当の責任者となって、それぞれが決められた担当の範囲で取り組めるようになります」(猿川氏)

各部課長がそれぞれ決められた役割に集中することで、事業を早期に復旧できる。平時にここまで細かく決めておくのはかなり手間がかかるが、災害時における社長の負担を軽減させるうえでも、机上訓練の課題に取り上げたい

災害対策本部の設置と情報の共有

「社長や防災担当者の指示で災害対策本部を設置します。従業員同士で情報を共有することで互いに現在の問題点を掌握し、作業の優先順位が明確になれば、早期の事業継続につながります。災害の状況、被災・稼働状況、指示や連絡事項をまとめるホワイトボードを用意します。あらかじめ罫線を引いておくと効率良く情報を記入できるようになります」(山﨑氏)

防災用に関する項目を記入できるホワイトボードが販売されているほか、専用オーダーで罫線を引いたホワイトボードを作成するサービスもあるので、そちらも参考にしてみたい。

災害時に必要なアイテムは事業者ごとに異なります。業務内容、拠点(都心部か郊外か)、従業員の数、勤務地と住居の距離などから総合的に判断し、効率良く事業を継続できる方法を、机上訓練でしっかり話し合っておくのがいいでしょう。

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