迅速な初動対応を可能にする防災訓練とは?⑤
[課題4] 情報収集・整理・共有

2022.04.12防災訓練特集
事業継続力強化計画(ジギョケイ)実践講座 ~防災訓練編~

本動画では、5回シリーズの記事をまとめてご紹介しております。
ぜひ記事と合わせてご覧いただければ幸いです。

発災後72時間は、身勝手な行動を自粛する

ここでは、災害時における情報収集の手段、入手した情報の整理、さらに従業員と情報を共有する方法について考えてみたい。中小企業基盤整備機構(中小機構)アドバイザーの山崎 肇氏に話を聞いた。

「災害発生時はすべてが混乱します。経営者は勤務している全従業員の安否、自社設備の被害状況、さらに取引先との連絡などの対応に追われます。ですが、そうした慌ただしい時に従業員から『社長、帰ってもいいですか?』と相談されることがあります。従業員にも家族がいるので、終業時間を過ぎれば今すぐ帰宅したいと考えたくなるのは当然です。ですが、周囲の状況が確認できなければ、帰宅をすぐに許可するのは避けた方がいいでしょう」(山﨑氏)

社内で身の安全が確認されている従業員に対しては、帰宅を許可しても構わないと思いがちだが、ここでは一体何が問題になるのか。そこで下記の設問について考えてみたい。

[設問①]
災害発生時の混乱した状況のなかで、適切に意思決定し、行動を開始するには、必要な情報を収集し、実務担当者等に適切な指示を出さねばなりません。そのための情報収集の方法、連絡・通信するための方法を書き出してください。
[設問②]
収集すべき情報はどのような情報ですか。また、収集した情報をどのように整理し、対策本部内で共有を図りますか。

東京都の場合、大地震が発生したら72時間は帰宅せずに社内で待機することが求められている。(参考:東京都帰宅困難者対策ハンドブック(令和2年7月 東京都))。では、帰宅することの何が問題なのか。山﨑氏によれば、
「災害発生時の対策は、2011年東日本大震災からの教訓に基づいています。3.11の直後、首都圏の電車や地下鉄は一斉に運休してしまい、交通手段を失った多くの人々は主要な幹線道路上を徒歩で帰宅しました。こうした帰宅困難者を出さないためにも、企業は従業員に的確な帰宅指示を出さなければなりません」(山﨑氏)

72時間は帰宅せず、社内で待機させる理由は以下の二つである。

①社内で身の安全が確認できているのであれば、そこで待機している方が安全

社内に被害はなくても、外では大きな災害が起きている可能性がある。(公共交通機関の運休、ビル看板の落下、道路の寸断、天候や気温による体力の消耗、事故や事件に巻き込まれる等)

②救える命が救えなくなる可能性がある

人命救助のデッドラインは約72時間と言われている。その間、大勢の人が一斉に帰宅すると、歩行者が道路を埋め尽くし、激しい交通渋滞が発生する。そうなると緊急車両は運行できず、救助活動に支障を来すことが考えられる。

災害発生時は、各事業者が備蓄している飲料水や食料、寝袋等をできるだけ活用して、政府からの指示があるまで社内で待機したい。

情報を正しく理解し、的確な指示を出すために

[設問①]
災害発生時の混乱した状況のなかで、適切に意思決定し、行動を開始するには、必要な情報を収集し、実務担当者等に適切な指示を出さねばなりません。そのための情報収集の方法、連絡・通信するための方法を書き出してください。

災害が起きた後、経営者や災害対策担当者はできるだけ多くの情報を入手し、そこから必要な情報を整理することが大切だと山﨑氏は語る。
「従業員がそれぞれ情報を入手し、それに基づいて勝手な行動をしてしまうと、社内における統制が取れなくなってしまいます。中には勝手に帰宅する人もいるでしょう。そうなると従業員の安否確認すら難しくなります。経営者や災害対策担当者を中心に、情報を整理し共有することが、的確な指示を出すうえで重要になります」(山﨑氏)

最新情報の入手は、テレビやラジオなどの主要メディアが確実だが、インターネットからも取り入れるなど、できるだけ多くの情報を入手することが望ましい。その際、SNSから発信された情報にはフェイク(偽物)が紛れ込んでいる可能性があるので注意したい。

情報収集する手段は以下のとおり。

【情報収集手段】
  • ●テレビ(含むワンセグ)、ラジオ
  • ●インターネット①(国・自治体等のサイト、新聞社のサイト、Yahooなど)
  • ●インターネット②(SNS/Twitter、Facebook)、LINEなど)
  • ●自動車、バイク、自転車、徒歩
  • ●一般電話、携帯電話、050(IP)電話、PHS、公衆電話、衛星電話
  • ●MCA(アマチュア)無線等
[設問②]
収集すべき情報はどのような情報ですか。また、収集した情報をどのように整理し、対策本部内で共有を図りますか。

経営者や災害対策担当者が情報を掌握し、それを従業員に共有する手順にすれば情報の混乱は避けられるという。
「社内における緊急事態が一旦収束したとはいえ、外に出ればどこでどんな災害に遭うか分かりません。そこで、政府が声明する最新情報、公共交通機関の運行状況、水道や電気、ガスといったインフラ復旧のメドなど、世の中の状況を可能な限り入手し、情報を整理して従業員に共有します。経営者(もしくは災害対策担当者)はそれらの情報から総合的に判断し、従業員を帰宅させるのか、社内で待機させるのかといった指示を出します」(山﨑氏)

【収集すべき情報】
●一般情報
地震の規模、震度分布、被災地名、電気・ガス・水道・交通・通信・物流等の被災状況
●社内の情報
人的被害・物的被害の概要、各種業務(生産、システム、各種サービス)の稼働状況
●取引先の情報
取引先の被災状況、生産活動やサービスの提供状況
【収集した情報を整理する方法】
●ホワイトボードや模造紙に記録し共有する
●記録する情報の種類を踏まえ、カテゴリーを区分し整理する
●整理に際して、発生時刻や認知時刻、対応時刻等の時間を記録する
●記録する様式やフォーマットをあらかじめ準備しておく

また、この「情報収集・整理・共有」の項目だけでも、細かな課題まで突き詰めていくことで机上訓練のテーマのひとつになるという。

各種最新情報の収集・整理、社内で優先される作業の一覧などは、
大きなホワイトボードや壁を使い、従業員が誰でも確認(共有)できるようにしておく

参加しやすい災害対応訓練が、今注目を集めている

近年、中小企業経営者や従業員の防災意識の高まりとともに、災害対応訓練の実施方法が大きく変わってきたという。山﨑氏は、
「経営者からただ『机上訓練をやります』と従業員に伝えても、それで積極的に参加したいと考える人は少ないでしょう。そこで最近では、避難訓練と合わせてデイキャンプ感覚で楽しめる炊き出しや非常食の試食会、防災をテーマにした運動会といったイベントと組み合わせることで、参加しやすい訓練にしているところが増えています。その際、従業員の奥様やお子様も参加するようにすると、家族全員で防災意識を高められると同時に、企業として防災・減災対策に真剣に取り組んでいるという姿勢を理解してもらえると思います」(山﨑氏)

児童のうちから災害の危機を正しく知り、実際に避難する訓練をしておくと、万一の災害時に被害を最小限に抑えられた、という報告がある。

経営者は従業員のため、従業員は家族のため、それぞれが守るべき命のために、机上訓練や災害対応訓練等で、災害に対する理解を深めておきたい。

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