自治体による事業継続力強化計画書策定支援
実例 埼玉県行田市

2022.04.07事業継続力強化計画を策定したい事業継続力強化計画を知りたい
自治体による事業継続力強化計画書策定支援 実例 埼玉県行田市

本動画では、実例の記事をまとめてご紹介しております。
ぜひ記事と合わせてご覧いただければ幸いです。

現在、多くの自治体が地元の中小企業に対して、事業継続力強化計画の策定をサポートしています。その実例を紹介するお役立ちコラム・行政/自治体編として、埼玉県行田市の取り組みを紹介します。

行田市が計画策定を推進した背景

埼玉県の北部に位置する行田市(ぎょうだし)の人口は約7万9000人(令和4年3月1日現在)。地場産業としては約300年前に武士の妻たちの内職として始まった足袋作りが有名で、最盛期には「行田足袋」は全国の約8割を生産するまでに発展しました。現在でも足袋や被服などを扱う繊維業者は行田市内に数多く存在します。また、現在は建築・製造業やサービス業、小売業の企業も多く、行田市では約3000の企業が事業活動を行なっています。

これらの中には、BCPや事業継続力強化計画について知らなかったという企業が少なくありませんでした。地元の商工会議所が行ったアンケート調査でも、「事業継続力強化計画について、聞いたことはあるが、よく知らない」という答えが多数を占めました。このような現状を変えたのが、行田市が交付した「中小企業等事業継続力強化計画策定奨励金」(以下、奨励金)です。この取り組みについて、行田市環境経済部の次長兼商工観光課長の森原秀敏さんと、同課主査の田島孝代さんに聞きました。

「行田市は令和元年10月12日の台風19号で浸水被害を受けました。昭和40年代には利根川の氾濫で市中心部が水没したこともあります。そうした経験もあり、行政としても市内の中小企業のみなさんに、事業継続力強化計画を策定していただく必要性を感じていました。しかし、計画の認定を受けるには、書類をそろえて国に申請しなければなりません。中小企業のみなさんだけでなく、私たちも何から手をつけ、どう進めればよいのかわかっていませんでした」(田島さん)

この状態を打破するきっかけとなったのが、令和2年度に創設された「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下、臨時交付金)」です。

「新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、行田市でも多くの自治体と同じように、中小企業などに対して一律10万円を支給するなどの支援を行っていました。しかし、令和3年に事業者向けの臨時交付金をいただくにあたって、中小企業に対して一時的ではなく、将来の事業継続に役立つ支援をしたいと考えたのです」(森原さん)

地方創生臨時交付金を財源に奨励金を交付

行田市は、事業継続力強化計画の策定および改定を行う中小企業に対し、1事業主につき10万円の奨励金を交付することにしました。また、この取り組みを実施するにあたり、行田商工会議所と、南河原商工会の協力を得ることにしました。

交付要件は、「商工会議所または商工会が開催するセミナーを受講すること」「事業継続力強化計画を策定し、経済産業大臣の認定を受けること」「その計画を商工会議所または商工会に提示し、確認を受けること」などです。

100社の参加を目標に周知活動を実施

奨励金とセミナーについて市内の企業に周知するため、行田市は、市報や市のホームページで情報発信しました。さらに、商工会議所や商工会もホームページや広報を通じて、会員企業に周知を図りました。

「商工会議所や商工会は、中小企業とのつながりが緊密です。そのつながりを活用していただいたおかげで、奨励金についてほぼすべての事業者に知っていただくことができました。この段階で、BCPや事業継続力強化計画についても、ある程度の認知を得られたと思います」(森原さん)

この活動について、行田商工会議所の中小企業相談所 経営支援課課長・経営指導員の田口泰伸さんに、活動の詳細について伺いました。

「行田商工会議所は、令和2年度に行田市と協働して防災計画の策定事業を行っており、令和3年度は年間20社を目標に同様の取り組みを行うことを計画していました。そこに奨励金交付のお話とともに目標を100社に拡大したいと聞いて、商工会議所としても地元企業のためになるのならと、広報活動にさらに力を入れました」

行田商工会議所には、市内約3000社のうち半数強が加入しています。そのすべてに情報が行き渡るよう、商工会議所から市内の銀行や保険会社に依頼し、顧客企業に情報発信してもらいました。また、商工会議所に所属する4名の経営指導員も、各自の担当企業に向けて、奨励金の情報とともに「この機会に、ぜひ事業継続力強化計画の策定にチャレンジしてください」と呼びかけました。こうした周知活動の成果によって、計画策定に取り組む100社が集まりました。

今回の奨励金予算は、1事業主10万円として100社分、計1000万円でした。しかし、実際には100社以上のエントリーがあり、セミナーに参加できなかった企業が出てしまいました。

「反省点として、事前にアンケートを実施してどの程度の企業が計画策定に参加するか、意思確認をすべきだったと考えています」(森原さん)

認定申請ができる段階まで徹底的にサポート

奨励金の交付要件の一つが、「商工会議所または商工会が開催するセミナーを受講すること」です。セミナーではまず、講師が事業継続力強化計画やBCPについての基本情報、認定を受けることによるインセンティブについて説明します。その後、講師と一緒に計画を作成し、実際に申請の準備を進めます。

「どの企業も防災計画への関心は高いのですが、一方で国への提出物がちゃんとできるか不安を持っていました。そこで、単に説明して終わるのではなく、セミナーに参加してもらえれば提出する直前の段階まで書類を仕上げられる『体験型セミナー』としたのです」(田口さん)

セミナーで、講師は「実効性の高さがポイント」であることを強調しました。例えば、「離れた場所にデータを保管する」と記載するだけでなく、「誰が、どこに、どうやって」まで記載された、具体的な計画を求めたのです。また、計画策定後のブラッシュアップがポイントであることも伝えました。

「ブラッシュアップについて記載しないと、認定されません。これらのポイントを押さえた上で、提出前には私たちが内容を確認し、確実に認定を受けられるようにサポートしました」(田口さん)

この取り組みによって、令和3年度は行田市で活動する96社が事業継続力強化計画の策定を行い、国の認定を受けることができました。また、セミナーに参加した企業からは、「非常にわかりやすく、参加してよかった」「内容が濃く、実用的なセミナーだった」という反応がありました。

行田市の取り組みについては、複数の自治体が関心を示しています。ある自治体からは「市単独ではない企画をどのように成功させたのか」と問い合わせがありました。行田市は、「商工会議所や商工会と組んだことが奏功した。商工会議所などには中小企業の現状をよく把握しており、セミナーのノウハウが豊富だ。今後、計画をブラッシュアップする段階でも、地元の経済団体との連携が必要になるだろう」と回答しています。

一方で、来年度以降、奨励金なしで計画策定をいかに推進していくかは、市にとっても商工会議所にとっても課題となっています。商工会議所は、「令和3年度までで計画を策定できていない企業もある。そういった企業にも計画策定に取り組んでもらえるよう、引き続き呼びかけていきたい」と話しています。

「策定しただけ」で終わらせないための取り組み

今回の取り組みは、計画の認定を受けた中小企業だけでなく、行田市や商工会議所、地域社会にもメリットをもたらしました。

「中小企業の中には、今回の取り組み商工会議所との接点が生まれ、会員になった企業もあります。今後は計画策定に加えて、防災・減災計画を実行するための融資などの面からも、中小企業をサポートしていきたいと考えています」(田口さん)

「研修に参加した企業の代表者は、BCPや事業継続力強化計画についての情報を自社に持ち帰り、社内にフィードバックしています。それがきっかけとなって、社員1人1人が一市民としても防災意識を高めてくれているようです」(田島さん)

「行政は街の賑わいを創出することを目指して、さまざまな事業をおこなっています。その賑わいの要となるのが、地元企業の活力なのです。万が一の際にも市民が頼りにできる企業として事業を持続していただくためにも、今後も各社で計画のブラッシュアップを続けていただきたいですね。また、市としてもアンケートや各種セミナーなどを通じて、計画が効果的に活用されているかなどをチェックする体制を整えていきたいと考えています」(森原さん)

BCPや事業継続力強化計画を策定したいと思ったとき、頼りになるのは地元の自治体や商工会議所、商工会です。相談してみると、お得な情報やサポートが受けられるかもしれません。また、中小機構のサイトに無料の作成支援メニューがありますので、ぜひご活用ください。

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