令和2年度 会社と社員の未来のために 中小企業
「強靱化」シンポジウム

~ 会社を強くする事業継続戦略 ~

開催レポート

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プレイベント

トークセッション

事業継続力を強化する
「儲かる企業連携」とは

自然災害や感染症の蔓延など会社の事業継続を脅かす非常事態に備えることは、今や会社経営において重要な戦略のひとつに位置付けられます。そのためには事業継続計画(BCP)の策定をはじめとした事前の備えをしておくことが不可欠です。
本イベントでは、秋に行われる中小企業「強靱化」シンポジウムプレイベントとして、賀陽技研代表取締役社長平松稔様にご登壇いただき、事業継続計画(BCP)の重要性や、計画にとどまらない戦略・実践としての事業継続の取り組み、そして、平時の経営力の強化にもつながる企業連携についてお話しいただきました。

株式会社賀陽技研 代表取締役 平松 稔 氏

東日本大震災の翌年2012年、株式会社賀陽技研を設立した平松稔代表取締役は、2013年に岡山県産業振興財団主催のBCP実践塾に参加。当時BCPについて知識のなかった平松氏が、地震や災害の少ないと言われていた岡山県でどのようにBCPに取り組んだのか。自身の考え方や企業の在り方について交えながら、経営戦略の一つとしてのBCPについて考えるヒントが見つかります。

平松 稔 氏

株式会社賀陽技研 
代表取締役 
平松 稔 氏

1971年岡山県高梁市生まれ。専門学校在学中にプレス加工会社を経営する父の仕事ぶりに心を打たれ、1990年に平松精工入社。2012年賀陽工場を分社化し、弟などと共に株式会社賀陽技研を設立。単なる「防災対策」ではなく、企業の成長に繋げる成長戦略としてのBCPに取り組んでいる。2016年、経営戦略と事業継続に関する取組を積極的に行っている団体に送られる国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)を、製造業として初めて取得。


第1回

トップセミナー

「計画」から「戦略」へ
危機に負けない
経営のあり方

自然災害や感染症の発生だけでなく、現代社会において経営を取り巻く環境は日々大きく変化しています。今、企業経営者は、様々なリスクに遭遇しても事業を継続し、会社や社員を守る力を備えることが求められています。その第一歩となるのが事業継続力強化計画の策定です。もちろん、計画を策定するだけでなく、その計画に基づいた訓練や内容の見直し、さらには「想定外」にも迅速に対応できる人材の育成も欠かせません。そうした事業継続力強化の取り組みは、会社の成長力にも直結し、まさしく企業の強靱化につながります。
本シンポジウムでは、事業継続力強化に取り組む企業経営者および危機対応や防災に詳しい専門家の方にご登壇いただき、ご自身の経験や知見をもとにリスクに強い経営についてお話しいただきました。

株式会社セコマ 代表取締役会長 丸谷 智保 氏

1971年に1号店をオープンし、日本で現存するもっとも古いコンビニエンスの一つと言われるセイコーマート。全国約1,200の店舗運営を行う株式会社セコマの丸谷智保代表取締役会長は、企業としてだけでなく地域も一緒に強靭化をしなければならないという一貫したテーマを持っています。
2018年の北海道胆振東部地震では、95%以上の店舗が震災当日に営業を行い被災直後の市民の生活を支えられました。予期せぬ事態が発生しても事業継続を可能にした取り組み、コミュニティロイヤリティを醸成する組織づくりなど、危機的状況下での地域復興と企業の復興について具体的な対応策が見えてきます。

丸谷 智保 氏

株式会社セコマ 
代表取締役会長 
丸谷 智保 氏

1954年北海道池田町生まれ。慶應大学法学部卒業後、1979年北海道拓殖銀行に入行。シティバンクを経て2007年株式会社セイコーマート(現 株式会社セコマ)入社。専務取締役、取締役副社長を経て、2009年代表取締役社長に就任。2020年4月より現職。


第1回

パネルディスカッション

BCP運用における
経営者の心構え

現在、自然災害や新型コロナウイルス感染症など、不測の事態に遭遇した際でも事業を継続することが可能な計画(BCP)策定の必要性が叫ばれています。
今回はパネリストに、ハイテク製品や精密機器の緩衝包装を手がける株式会社生出 代表取締役社長 生出 治氏、中小企業庁「中小企業の災害対応の強化に関する研究会」委員ほか政府系委員を歴任されているNPO法人事業継続推進機構 副理事長 伊藤 毅氏、日本気象協会「トクする!防災」プロジェクトリーダーとして、企業や自治体とともに防災啓発活動の輪を広げている一般財団法人日本気象協会 メディア・コンシューマ事業部 コンシューマ事業課 木村 知世子氏の3名にご登壇いただき、経営者が取り組むべき防災対策、社内の情報共有や役割分担などの実践的な部分における対策のお話をいただきました。

株式会社生出 代表取締役社長 生出 治 氏

非常時にも対応できる組織を作るためには、日常業務から改善を進めていく必要があるという生出氏。現場の業務や経営資源のどこに災害のリスクが潜んでいるのか、それを本当に熟知しているのは現場の担当者である。現実的な対応策を導き出すためには、現場の担当者の声をどんな風に吸い上げるか。現場を重視した対策のお話しをいただきました。

生出 治 氏

株式会社生出 
代表取締役社長 
生出 治 氏

1958年の創業以来、高度かつ高品質の緩衝包装設計技術を提供。情報通信機器、測定機器、分析器など日本を代表するハイテク精密製品の緩衝包装を手がける。BCP策定のきっかけは得意先から「緊急時も供給は止められない」と策定の要請を受けたことだった。東京都の中小企業BCP策定支援事業最優秀賞に選ばれた。

NPO法人事業継続推進機構 副理事長 
伊藤 毅 氏

想定外とは、無限の事態を引き起こす可能性があるということ。つまり、あらゆる事象が発生することを覚悟しないといけない。そのためのBCP対策は「多様化とスピードが鍵」であると伊藤氏。本当の意味でのBCPとは、想定外の事象が発生した際の対応力や応用力のこと。情報をできるだけ多く集め、早期に対応する、そのような事態に対して見極める力が重要である、と語っていただきました。

伊藤 毅 氏

NPO法人事業継続推進機構 
副理事長 
伊藤 毅 氏

富士通株式会社で富士通グループの事業継続マネジメント(BCM)責任者、株式会社富士通総研ではBCP及び危機管理コンサルティング部門責任者(執行役員)を担当。2017年より株式会社レジリエンシープランニングオフィス代表取締役。300社以上のコンサルティング実績を持ち、大手自動車メーカー、大手化学メーカー、メガバンク、行政機関、中小企業向けBCP研修講師など多岐にわたるプロジェクトをリードする。中小企業庁「中小企業の災害対応の強化に関する研究会」委員など数多くの政府系委員を歴任。

一般財団法人日本気象協会 
メディア・コンシューマ事業部 
コンシューマ事業課 木村 知世子 氏

平時と有事の垣根をできるだけ減らし、普段から少し多めに食材や加工品などを買い、使ったら使った分だけ買い足していくローリングストックという考え方を推奨。これは家庭内に限らず、企業活動においても同じこと当てはまるという木村氏。さらに、防災対策は女性の意見も積極的に取り入れ、女性のニーズを反映させることが、結果として企業の質の向上にもつながるというご意見をいただきました。

木村 知世子 氏

一般財団法人日本気象協会 
メディア・コンシューマ事業部 
コンシューマ事業課 
木村 知世子 氏

関西でフリーアナウンサーとして活動。現在、日本気象協会「トクする!防災」プロジェクトリーダーとして、企業や自治体とともに防災啓発活動の輪を広げている。普段の備えや避難に必要な知識や情報などをテーマとした防災セミナーを実施している。立教大学社会デザイン研究所研究員として女性の視点・語りから背景にある社会を見つめ直し、「語り/物語」による越境と社会創発プログラムを開発、防災分野への社会実装を目指す。


第2回

トップセミナー

事業と地域を守る
事業継続マネジメント
とは

混迷、激動の時代を生き残るには「商品や企業に対する信頼・信用が最も重要な条件」という齊藤氏。これからの観光産業を盛り上げるためには、魅力ある街づくりが欠かせないという。人口減少による過疎の不安といった危機的な状況をどう乗り切ればいいのか。地元企業や経営者らが集まる地域ブランディング報告会に、自社の役員や社員が参画し、新たなアイデアを出し合っているという。事業の安定化とは、自社を取り巻く地域と一緒になって新しい街作りを目指すことにあり、強いては地域への貢献につながるというお話をいただきました。

さいとう製菓株式会社 取締役会長 
齊藤 俊明 氏

東日本大震災により大きな被害を被ったものの、スタッフを全員集合させ、約1か月後には再開できる体制を築いた。その間、全国のお客さまから励ましの手紙が届き、恩返しの意識を強く感じたという。5月には売り上げがV字回復し、以前のような活況を取り戻した。過去に二度の震災を経験したが、どんなときも前に向かって進んできたという齊藤氏。現在はコロナ禍により経済的な閉塞感があるが、いつの時代にも必ずお客さまのニーズがあるという。消費者の価値観を見抜き、ニーズに対応した事業に取り組む企業には、大きなチャンスがあると語っていただきました。

齊藤 俊明 氏

さいとう製菓株式会社 
取締役会長 
齊藤 俊明 氏

1941年生まれ。大船渡商工会議所前会頭。1960年のチリ地震津波、2011年の東日本大震災と大船渡を襲った二度の津波を乗り越え、零細の自営菓子製造業から三陸を代表する菓子メーカーに成長。銘菓「かもめの玉子」をはじめ、岩手県産の地元素材を使った和菓子・洋菓子を製造・販売している。


第2回

パネルディスカッション

危機は乗り越えられる 強靱な経営のススメ

自然災害やコロナ禍のようなリスクといった危機的な状況にどう備えるか。また、有事の際にも事業を継続し、会社を永続させていくにはどうすればいいのか。
今回のパネリストは、高精度研磨加工において世界最高レベルと言われ、航空宇宙分野にも進出されている株式会社ティ・ディ・シー 代表取締役社長の赤羽優子氏と、総合宴会場や結婚式場、葬儀式場で事業を展開している株式会社八幡台やまたまや 専務取締役 幸徳信市氏にご出演いただきました。
この二社はともに東日本大震災で被災した企業です。その経験から学んだことは何でしょうか。事業の立て直しの具体的な取り組みについてお話をお伺いしました。

株式会社ティ・ディ・シー 代表取締役社長 
赤羽 優子 氏

リーマンショックの経験から、災害や景気の波の変動に左右されない強い会社にしたいと決めていた赤羽氏。創業からの下請けというスタイルを脱却し、インターネットで自社の高い技術力を発信。精密加工における世界的なブランドを目指したことが、現在のティ・ディ・シーの企業価値を高めるきっかけになった。
自然災害やコロナ禍で多くの企業が被害を受けているが、「事業においてそもそも当たり前なんかない、という心構えでいたほうがいい」と語る。多くの経営者は非常事態に何をすべきか分からなくなるが、「ビジョンを明確にしてゴールに向かうことが企業にとって大切なことである」というお話しをいただきました。

赤羽 優子 氏

株式会社ティ・ディ・シー 
代表取締役社長 
赤羽 優子 氏

1997年東北学院大学法学部卒業後、広告制作会社勤務を経て2000年株式会社ティ・ディ・シー入社。2015年より同社代表取締役社長。株式会社ティ・ディ・シーは宮城県宮城郡利府町に本社を構え、超精密研磨のオンリーワン技術を強みとし、幅広い分野に事業を展開。2014年「グローバルニッチトップ企業100選」、2016年「地域未来牽引企業」、2020年精密工学会「ものづくり賞」、2021年「富県グランプリ」などの表彰や認定を受けている。

株式会社八幡台やまたまや 専務取締役 
幸德 信市 氏

福島県いわき市にある「八幡台やまたまや」も震災で甚大な被害を受けた企業のひとつ。特に大きな被害となったうえだ商店会は、国が助成している「グループ補助金」制度を活用し、復興を目指した。震災前の同社は総合結婚式場としての色が濃かったが、震災以降は地域の人より利用しやすい施設にすべく、多目的利用が可能なコンベンションホールとして生まれ変わった。「諦めずに取り組むことが大切」という幸德氏。周囲の意見を取り入れながら、物事を丁寧に進めていくことが、最終的に成就する鍵であると語る。

幸德 信市 氏

株式会社八幡台やまたまや 
専務取締役 
幸德 信市 氏

1968年大阪生まれ。アメリカライオグランデ大学卒業後、社会人経験を経て、家業である食品製造業に従事する。平成7年8月より、(株)八幡台やまたまやに勤務し、平成19年10月に取締役に就任。ブライダル、宴会など冠婚葬祭を中心とした接客サービス業務に従事。22年8月に専務取締役に就任。23年の東日本大震災後は現職として復興活動に従事している。