同社がISO22301を取得したのは2014年で、以降、BCPの内容を毎年見直しています。
「BCPに、どの会社にも当てはまるような正解はないと思っています。どうすればよりよいものになるのか、運用はどうすればいいのかを、毎年毎年自分たちで確かめています。ただやはり、そこで助けになるのは外部のサポートです。ISO22301、さらに並行して取得したレジリエンス認証により、事業継続についてのPDCAがしっかり回っているのかどうか、新たに備えなければならないリスクは何か、広い視野を持つ外部の目で確認していただき、適切な指導を受けることができます」(古江氏)
そしてこうした動きは、BCPの担当者だけでなく、社内全体に「有事への即応」という意識付けをもたらしているとのことです。
「毎年のISO22301への対応は、従業員の意識改革というか、士気の高まりにつながっていると思います。じつは2015年1月に岡山県内で高病原性鳥インフルエンザが発生する事例がありました。鳥インフルというと、保健所の職員とか自衛隊の方が現場の対応にあたるニュース映像が浮かぶと思いますが、じつはそうした部門が動く前、現場のでのテントの設置や埋却のための穴掘りは私たち建設業者の仕事なんです」(古江氏)
この鳥インフルの第一報が入ったのは木曜日の夕方だったのですが、同社は即応体制をとりました。
「リース会社にテント20張ほどを手配し、社内の備蓄から仮設トイレを調達、どちらも翌朝の作業開始までに現地に設営することができました。こうした対応が可能になった背景には、やはり日頃から有事に備えて訓練していたこと、そしてその訓練により、従業員の高い士気を持ち、かつ『いま何をすべきか自分の頭で考えて行動する』という判断力を備えることができたためと考えています。そのあとも鳥インフル対応は続きますが、年度末という繁忙期にもかかわらず、通常業務と緊急対応をうまく並行して進めたことで、どの現場も工期の遅れはありませんでした」(古江氏)
こうした単独でのBCPのほか、同社は広域連携のBCPにも注力しています。
「徳島県を中心とした、瀬戸内海を囲むエリアの建設業者が連携し立ち上げた『なでしこBC連携』に参加しています。じつは2016年の熊本地震の際、当社からもボランティアで複数の社員が現地に行きました。しかし復旧作業の主体とうまく連携が取れなかったことで、さまざまな専門技能を持っていたにもかかわらず、任されたのは一般のボランティアと同じ民家の片付けなどに止まったのです。もし会社としてBCPの連携が取れていれば、重機を使った作業など、より専門性が高く、効率的な作業にリソースを使えたはずだと考え、同業者が作るネットワークへの参加を決めたのです。こうした災害がもし身近で発生した場合、こうした連携は、事業継続の大きな力になると思っています」(古江氏)