ただ、同組合を構成する宿泊施設は、大規模な旅館からごく少人数、家族単位で運営するところまで、規模はさまざまでした。
「宿泊業というのはお客さまに接する業務を最重要視しているため、管理部門は一般企業に比べ、ぜい弱です。そしてそうした特性は、規模が小さくなればなるほど、顕著です。今回の申請においては、まず連携してジギョケイに取り組むことができる17事業者とともにスタートすることとなりました」(奥村氏)
こうして策定したジギョケイは、事業継続に影響が出る大規模災害や感染症拡大が発生した場合、組合員同士の相互扶助と県や市との連携、関連する約1000社超への協力要請、宿泊者の安全確保、事業継続を可能とする対策、帰宅困難者への対応などについて、各事業者が連携してあたることを定めています。
「具体的な内容については、私どもが単独で進めていたジギョケイの中身に加え、愛媛県中小企業団体中央会へ相談し、支援していただいた内容を肉付けしていきました。これ以前にも、組合の設立の目的から『相互扶助』は息づいていましたが、ジギョケイの策定により、それがはっきりと明文化されたと思っています」(奥村氏)
そしてこうして策定されたジギョケイを、さらに有意義なものとするための取り組みを、組合は続けています。
「私どもの組合は理事会を中心に運営されていますが、その理事会はこうした組織にしては珍しく、毎月開催されているのが特徴です。また理事会の他、年に1回、組合が主導する形で、道後地区での防災訓練も行っています。さらに防災や人命救助には『連絡』『情報伝達』が不可欠ですが、東日本大震災をはじめとする大災害で携帯電話を使っての連絡が困難になったことを鑑み、アマチュア無線を使い連絡することを想定しています。各事業者に少なくとも一人の『アマチュア無線資格技士』の資格保有者を置くことを推奨し、ハードウェア面でも、高台にある『道後山の手ホテル』8Fの標高90mにデジタル方式のアマチュア無線用中継局を設置し、道後地区だけでなく、松山市を広くカバーしています」(奥村氏)
また組合として、BCM(事業継続マネジメント)への取り組みも継続して進めるとのことです。
「昨年11月のジギョケイの認定を受け、今年からは年に2回、『BCM推進会議』を開催し、ジギョケイで策定した内容のさらなる具体化、アップデートを図っていきたいと考えています」(奥村氏)