みんなで協力し、助け合う。それが事業の継続にも繋がる

赤帽福井県軽自動車運送協同組合

  • 所在地:福井県福井市上北野1-25-58
  • 業種:協同組合
  • 組合員数(従業員数):34名
  • ホームページ:https://fukui.akabou.jp/
風水害協同組合

1979年10月、赤帽福井県として福井市内に事務所を開設し、1979年11月、赤帽福井軽自動車運送協同組合として開設。現在、全国貸切直送便(チャーター)・定期便・引越便・宅配便・特定信書便事業・ハンドキャリー(JR・飛行機を利用しての配送)・商品保管配送システム・その他軽貨物運送事業全般・共同受注・配車事業・共同購買事業・広告宣伝事業・福利厚生事業などの事業を展開。「荷主さんの心を運ぶ赤帽車」というスローガンをモットーに組合員全員が一丸となって24時間365日体制でお客様のビジネスを強力にサポート。お客様の様々なニーズにフレキシブルに対応する体制づくりで、お客様第一主義を貫く。

みんなで協力し、助け合う。それが事業の継続にも繋がる

インタビュー(4分48秒)

組合を預かる以上、組合員の命、
その家族も守らなければならない

もともと国鉄の職員が赤い帽子をかぶりお客様の荷物を運搬していたことからその名が付いたという「赤帽」は、全国に拠点を持ち、今では全国に約8000名弱の組合員がいると言う。中でも、今回取材に応じてくださった赤帽福井県軽自動車運送協同組合は1979年に開設。現在、赤帽本部は福井市に、嶺南のほうに敦賀支部があり2拠点で、日々運送や配送を中心に業務を行っている。事業の特色について理事長の佐々木氏に聞いてみた。

「組合員の方(ドライバー)は現在31名で、配送車は39台を保有しています。その他、事務職として職員が1名、パートが1名、私を含めた組織で運営しております。私たちのお客様には、定期的にご契約をいただいているお客様から、緊急で荷物を届けて欲しいというお客様までおられますが、そうした急なご依頼にも対応できるのが、私たちの強みの1つになっています」(佐々木氏)

こう語る佐々木氏は、もともと35年ほどサラリーマンをされていて、定年を機に60歳から赤帽の世界に入った人である。前職ではBCPなど災害に対する備えへの取り組みも行っていたそうで、赤帽でもそうした取り組みに必要を感じていたと佐々木氏は語る。

「3年前から、赤帽福井県本部の代表理事として事務所のほうで経営的なところを担うようになったのですが、そこでまず感じたのが、災害などに対する意識や備えが物凄く弱いということ。また、お客様の情報の管理についても甘いと感じる部分があったので、何とかしたいと思っていました」(佐々木氏)

その頃、福井県の中央会の方からアドバイスをもらう機会があり、その中で、事業継続力強化計画について勧められた佐々木氏。従業員はもちろん、組合を預かる以上、組合員の命、そしてその人たちの家族も守らなければならないとの思いから、中小機構の紹介を受け計画の策定に着手したと言う。

少しでも地元福井の人たちの
役にたちたいという思い

今回、「連携型」の事業継続力強化計画の策定に取り組まれた同社。どのようなところと連携をとり策定に漕ぎつけたのか、佐々木氏に聞いてみた。

「策定については、近畿経産局から認定をいただき、その段階でまずは全組合員を対象として行い、次のステップとして地元福井県とタイアップして、福井県の友好姉妹都市などで災害が起きた時に備えて、緊急物資の運搬など災害協定について締結しました。その他、県外から福井県へ引っ越して来られる方のお手伝いなど、少しでも福井県のお役に立ちたいという思いで取り組んできました」(佐々木氏)

赤帽自体は日本全国ブロックに分かれていて、福井は中部ブロックに入っている。10月に行われた中部地区のブロック会議では、中部ブロックが一塊となりお互いに助け合い、協力し合いながら連携強化に取り組んでいこうということで合意を得たと言う佐々木氏に、策定の内容についても聞いてみた。

「実際に雪害や災害が起きた時には、まず組合員を守る。災害が発生した時には、10分以内に到着できる者に会社に行ってもらい、現場の状況を確認してもらいます。その情報を受け取り、私が指揮をとるようにしています。また、策定にあたり最初に取り組んだのは情報システムについて。それまでは全て社内で情報を管理していましたが、災害などに備えて外部サーバーを持ち、そちらでも管理するようにしました」(佐々木氏)

連携型の事業継続力強化計画の推進については、ハザードマップなどを活用しながら勉強会なども行っているという同社だが、個人事業主の人たちにとっては、「なぜそれが必要なのか?」という声もあり、組合員全員に浸透させていくことの難しさも感じていると言う。

連携型の事業継続力強化計画策定で
我々の信頼度が深まってきた

2022年8月の豪雨では、南越前町全域において道路が寸断されるなど、ライフラインが大きな被害を受ける事態となった。その時、福井県の防災課から「南越前町の住民に水を配達してほしい」と連絡を受け、住民の方たちに水を届けた同社。計画を策定してよかったと思える出来事の1つだったと佐々木氏は振り返る。

「計画を策定し認定を受けたことで、福井県の職員さんの、我々に対する見方や考え方がちょっと変わってきたと思いましたし、防災課からの要請に我々の信頼度が深まってきたことを感じました。この時は組合員に連絡して6台を集め、南越前町全域に水をお届けしましたが、その時も住民の皆さんに喜んでいただき、嬉しいお言葉もいただきました。これも、連携型の事業継続力強化計画に認定されたおかげだと思っています」(佐々木氏)

実際、この豪雨の時は道路が冠水し、走行できるのは歩道しかなかったほど。そこで、同社の配送車が軽自動車という小さい車の強みを活かし、歩道を走行して地域の公民館など目的地にたどり着くことができた。防災課からの要請に対し、同社はしっかりとその役割を果たしたが、「もっと身近なところで、いろいろと住民の方たちのお役に立てたのでは」と、連携型の事業継続力強化計画に手応えを感じるいっぽうで、佐々木氏は業界内へのさらなる普及を呼びかける。

「連携型の事業継続力強化計画を策定しているのは、福井県内でまだ数社と聞いています。今回、我々が認定された中で思うことは、同じ業種で連携を図っていくことの大切さ。災害など何か非常な事態が起こった時に、途中で中継していろいろと助け合うことで、できることが広がっていくので、同じ運送業界の中でもっと前向きに取り組んでいくべきだと思います」(佐々木氏)

連携型の事業継続力強化計画の認定を受けることで、仕事の幅が広がり、お客様の信頼も変わることを実感された佐々木氏。従業員ありきの会社においても、従業員を守る、従業員の家族を守る意味でも大切なことと、計画策定への取り組みを呼びかけている。

我々の配送業務ではまさに
連携が必要となる場面がある

福井県で県を挙げて行われる防災訓練がある。自衛隊、消防、警察をはじめ、ガス、電気、水道などのあらゆる関係機関が集まり行われるが、令和4年度の訓練では同社に声がかかり、福井県の備蓄基地から避難所まで物資を運ぶという訓練に携わった。さらに、2022年11月に行われた中小企業中央会の全国大会では、約2000人が集まり、全国の組合員の中から優良組合として選ばれる40の組合の中に入り表彰された。これらのことについても、連携型の強化計画の認定を受けたからこそであり、決して自分1人の力ではなく、組合員が全員加盟し一致団結した結果であると、佐々木氏は取り組みに対する姿勢を崩さない。

「我々がお届けする荷物の中には、病院のお薬など何時までに届けなくてはいけない物があります。豪雨の時も活躍してくれたように、当社の4輪駆動の軽自動車たちは、雪道であろうとスタックしやすい田んぼの中の多少ぬかるんだ道でも走ってくれるので、今後もこうした機動力を生かしていきたいですね。それから、災害など何かあった時には、中継拠点を設けて相手の業者さんと2社で連携するなど、組合員全員がお互いを助け合い、守る。そこは最重点に考えていきたいと思っています」(佐々木氏)

全国組織として事業を展開する同社では、実際に県をまたいで連携し合うことが多い。例えば最近でも、富山県の赤帽から車が回らなくなってしまったと応援要請を受け、福井から富山のお客様まで出向いて荷物をピックアップし、九州のお客様まで届けるということがあったそうだ。

「こうした経験を通じて、みんなで一緒に頑張っていこうと、気持ちがひとつになっていっているなと感じています。みんなで協力し合う、助け合う。それが事業の継続にも繋がると思うし、お客さんの信頼、信用を得ることにも繋がっていくと考えています」(佐々木氏)

個人事業主として働いている組合員にとって、もし、あなたに何かあったら大切なお客さんが困ってしまう。そういった時に組合があなたを守る。連携型の計画にはそういった意味合いも大きいと語る佐々木氏。その重要性を知る同社の呼びかけや気づきに、連携の輪が広がる日もそう遠くないはずだ。

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