【更新】(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)
認定後に利用できる公的支援施策

2022.02.25事業継続力強化計画を知りたい

(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)は策定することにより、災害発生時(有事)において被害を最小化できるという直接的なメリットに加え、平時においても重要業務の見直しやレイアウト・動線の見直しなどにより生産性が改善されたり、取引先からの信頼性が向上するなど多くのメリットがあります。

それら策定のメリットに加えて、(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)が認定された事業者には、各種の公的な支援策が用意されているので、使わない手はありません。ここでは認定事業者への公的支援策を整理しますので、ぜひご活用ください。
※なお、ここに記載する情報は,2021年8月2日現在の情報ですので、ご利用の際は最新の情報をご確認ください。
※(連携)は単独型、連携型共通の意味です。

メリット1.金融支援
日本政策金融公庫の低利融資、信用保証の別枠など、計画の取組に関する資金調達支援
メリット2.税制優遇
認定計画に従って、取得等をした対象設備について、取得価額の20%の特別償却
メリット3.優先採択
計画認定を受けた事業者は、ものづくり補助金等の審査の際に加点
メリット4.損害保険会社等の支援
連携をいただける企業や地方自治体等からの支援措置
メリット5.社会的信用
中小企業庁HPでの認定を受けた企業の公表
メリット6.ブランド力向上
認定企業に活用いただけるロゴマーク
なかなか盛沢山ですが、実際どうなのでしょうか?

1. 低利融資、信用保証枠の拡大等の金融支援

金融支援として、①日本政策金融公庫による低利融資、②中小企業信用保険法の特例、③中小企業投資育成株式会社法の特例、④日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジットを受けることができます。

以下に詳しく見てみましょう。

①日本政策金融公庫による低利融資

(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金について、基準利率から0.9%引下げの低利融資を受けることができます。

融資のご利用にあたっては、別途日本政策金融公庫の審査が必要となりますが、内容によっては、事業継続力強化計画に書かれた設備以外の設備資金についても対象になる場合があるようなので、ぜひご相談ください。

  • 日本政策金融公庫事業資金相談ダイヤル
    0120‐154‐505
貸与金利 設備資金について基準金利から0.9%引下げ
※運転資金は基準金利
※審査により、所定の金利が適用されます。
貸与限度額 中小企業事業:7億2,000万円
(うち運転資金2億5,000万円)
国民生活事業:7,200万円
(うち運転資金 4,800万円)
※設備資金で0.9%引下げ適用は、2億7千万円まで
貸与期間 設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内)

②中小企業信用保険法の特例

中小企業者は、(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等(通常枠)とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。

事業継続力強化計画に書かれている内容に限定されますが、書かれていれば、設備投資に限らず、事業資金でもその対象になる可能性もあるので、事業継続力強化計画の書き方にも留意されるといいかもしれません。

  • (一社)全国信用保証協会連合会
    03-6823-1200
    各都道府県の信用保証協会
通常枠 別枠
普通保険 2億円(組合4億円) 2億円(組合4億円)
無担保保険 8,000万円 8,000万円
特別小口保険 2,000万円 2,000万円
新事業開拓保険 2億円→3億円(組合4億円→6億円) 保険枠の拡大
海外投資関係保険 2億円→4億円(組合4億円→6億円)

③中小企業投資育成株式会社法の特例

(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定を受けた場合、通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加えて、資本金額が3億円を超える株式会社(中小企業者)も事業継続力強化計画の実行にあたり、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能になります。

中小企業投資育成株式会社法では通常の投資対象は資本金3億円以下の縛りしかありませんが、事業継続力強化計画の認定を受けた企業については、資本金の縛りはなくなり、中小企業としての人数縛り(製造業なら300人以下、など)になるというものです。返済義務のない資金調達として有利な制度といえます。

  • 東京中小企業投資育成株式会社
    03-5469-1811(代)
  • 名古屋中小企業投資育成株式会社
    052-581-9541(代)
  • 大阪中小企業投資育成株式会社
    06-6459-1700(代)(九州支社:092-724-0651)
資本金 従業員数
通常 3億円以下 不問
事業継続力強化計画認定企業 不問(3億円超可) 製造他 300人以下
100人以下
小売 50人以下
サービス 100人以下
旅館 200人以下

※表では中小企業の定義を簡略化しています。詳しくは以下の手引きに記載されている中小企業の定義をご確認ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/download/keizokuryoku/kyoka_tebiki.pdf

④日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット

日本政策金融公庫が「スタンドバイ・クレジット」(信用状)の発行を通じて、事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業者(国内親会社)の海外支店または海外現地法人による現地流通通貨での資金調達の債務の弁済を保証する制度があります。

保証限度額 1法人あたり最大4億5,000万円
融資期間 1〜5年

※これら1.金融支援を活用する場合には、(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定を受ける前に関係機関に相談する必要があります。また、該当する資産であっても、必ず融資等が受けられるということではありません。

2. 防災・減災設備に対する税制措置

次に税制における優遇措置を受けることができます。

中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却)では、認定事業継続力強化計画に記載された対象設備を、取得等をして事業の用に供した場合に、特別償却20%(令和5年4月1日以後に取得等をする対象設備は特別償却18%)が適用できます。

特別償却20%を活用するとどのようなメリットがあるでしょうか。例えば法定耐用年数15年の非常用発電機を1,000万円で購入した場合、単純に定額法で減価償却を計算すると初年度の減価償却費は約67万円(1,000万円÷15年)が費用計上されるので法人税の対象となる利益を67万円少なくすることになります。一方で1,000万円のキャッシュは出ていくので、初年度のキャッシュフロー(手元資金)は苦しくなります。20%の特別償却を実施すると1,000万円×20%=200万円が上乗せ費用となり、利益を少なく計上することができます。その分、納税額が節約できるので、キャッシュフローにゆとりが出るという効果が生まれます。

ただし、特別償却は将来発生する減価償却費を前倒しで当期の経費とするもので、今の決算期での節税効果は高いですが、長い目で見た場合には経費として落とせる総額は適用を受けなかった場合と同じになります。

減価償却資産の種類 対象となるものの用途又は細目
機械及び装置(※)
(100万円以上)
自家発電設備、浄水装置、排水ポンプ、制震・免震装置など
器具及び備品(※)
(30万円以上)
自然災害:制震・免震ラック、衛星電話等
感染症:サーモグラフィ装置
建物附属設備
(60万円以上)
止水板、防火シャッター、排煙設備等

令和3年度から対象設備に感染症対策が加わり、サーモグラフィー装置が追加されました。ただし、30万円以上のものとなっているので、注意が必要ですが、サーモグラフィー装置は性能と用途で価格の幅が非常に広く、数万円のものから数百万円のものまであるので、導入に際してはよく、検討されることをお勧めします。

3. 補助金(ものづくり補助金等)の優先採択

計画認定を受けた事業者は、ものづくり補助金等の一部の補助金において審査の際に、加点を受けられます。

ものづくり補助金とは、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助事業として実施する『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』の略称です。中小企業による新商品や新サービスの開発、あるいは新たな生産方式や提供方式の導入といった、経営革新のための設備投資などに交付される補助金で、中小企業にとって使い易く、補助額も大きいので人気の高い補助金です。

ものづくり補助金には3つの事業類型があり、事業類型によって補助金の額が異なります。交付される補助金の額は、一般型は100万円~1,000万円、グローバル展開型は1,000万円~3,000万円、ビジネスモデル構築型は100万円~1億円となっています。詳しくはものづくり補助金総合サイトをご覧ください。

※中小企業庁の初期の制度概要では事業継続力強化計画が小規模事業者持続化補助金も加点対象になっていましたが、令和3年5月現在採択の加点対象になっている補助金は「ものづくり補助金」のみです。

※従来(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)が認定申請中であっても加点対象になっていましたが、令和2年補正7次締切(令和3年5月13日公募開始)から、加点対象は「認定済」(連携)事業継続力強化計画に限定されることになりましたので、注意が必要です。常日頃から事業継続力強化計画の認定をとっておくことが重要です。

4. 連携をいただける企業や地方自治体等からの支援措置

損害保険会社、共済団体は、中小企業庁と連携しつつ、防災・減災対策に取り組む事業者の皆様方を応援するため、さまざまな取組を行っています。

ご契約のある保険会社やお近くの商工会議所・商工会にぜひ問い合わせいただき、ご活用されることをお勧めします。

5. 中小企業庁HPでの認定を受けた企業の公表

事業継続力強化計画の認定を受けると、事業継続力強化計画認定事業者・連携事業継続力強化計画認定事業者として、中小企業庁のホームページに企業名とホームページURLが公表されます。

これにより社会的信用力の向上が期待できます。

なお、令和3年12月末時点で認定件数は全国で36,541件(内、連携339件)となっています。

6. 認定企業に活用いただけるロゴマーク

(連携)事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定を受けた企業は、認定ロゴマークを使用することができるようになります。認定ロゴマークは、ホームページなどインターネット上での情報発信に用いることで、信頼性を訴求することができるといえます。また、名刺や企業パンフレットなど営業ツールにも使用することができます。

信用力とブランド力の向上が期待できます。ロゴマークが優秀人材の確保・獲得に寄与する効果も聞こえてきています。

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