【更新】台風や豪雨がもたらす風水害に対する事業者の対応(前編)

2022.02.25風水害

ここでは事業所において風水害にどのように備えるべきかを考えてみましょう。

1. 風水害/土砂災害対応に関する基本的な考え方

台風や豪雨による水害・土砂災害は、天気予報や進路予想、降雨量等の情報をもとに、事前に早期帰宅や被害軽減措置を行い、被害を最小化することが可能な災害である点が、事前の予兆がなく突然発生する地震災害とは異なります。また、気象庁・国土交通省や市町村等からの勧告等に応じた対応も求められます。このため、水害・土砂災害への対応は。図のように状況の進展に応じて、段階的に対応することが基本となります。

図1 水害・土砂災害対応に関する概念図

■ 1.1.行動原則

水害・土砂災害発生時の行動として以下のような留意点があります。

  • (1) 常に安全を優先した行動をとる
    判断に迷う場合は安全を優先した判断をする
    結果的に「何も起きなかった」「空振り」の事態を許容する
  • (2) まずは自分自身の安全を確保する
    自分自身の安全が確保できなければ、他者(他の従業員や家族)の安全を確保できない。
  • (3) 早めの行動
    災害は予測不能な結果をもたらします。
    早めの行動によって準備時間・猶予を確保することが重要になります。

2. 台風や豪雨による風水害/土砂災害の概要

■ 2.1.事業所周辺での風水害、土砂災害のリスク環境の把握

国土交通省で公開している、①重ねるハザードマップや、②わがまちハザードマップを活用して、自拠点の「浸水リスク」、「土砂災リスク」、「津波浸水リスク」を確認できます。

それにより自社事業所の周辺でのリスクをあらかじめつかんでおくことが、災害時の避難行動や事業継続に有効な情報となります。(図2、図3参照)

図2 ハザードマップポータルサイト

図3 ハザードマップから判る災害リスク情報

出典)国土交通省ハザードマップポータルサイト「ハザードマップポータルサイトの紹介」P1,P6より抜粋

自拠点の周辺でどのような災害の危険があるのか、1枚の地図上で知ることができます。

それにより総合的な災害危険性の確認などに役立てることができます。

■ 2.2.水害/土砂災害発生前後で考えられる状況

水害・土砂災害は、降雨量等の気象状況に応じて想定される状況が移り変わります。状況の進展に応じて、起こりうる状況を想定しておくことが災害時の行動に有効です。

ステ
ージ
状況の進展 時間目安 起こりうる状況
1 台風の接近、梅雨前線の停滞、線状降水帯の発生など 5日~24時間前 ・地方気象台が台風直撃や前線の停滞を発表、数日内に大雨の可能性
2 「大雨・洪水注意報」
「大雨・洪水警報」の発表
24~12時間前 ・地方気象台が大雨・洪水注意報、大雨
・洪水警報を発表、数時間以内に大雨の可能性
「避難準備・高齢者等避難開始」の発表 12~6時間前 ・河川の水位が「氾濫注意水位」を超える
・土砂災害危険度情報が「レベル2:警戒」
3 「避難指示」
「土砂災害警戒情報」の発表
6~1時間前 ・道路浸水始まる
・河川が「避難判断水位」を超える
・土砂災害危険度情報「レベル3:厳重注意」
4 「避難指示」の発表 6時間~浸水発生 ・市内浸水開始、車通行困難
・公共交通機関運休
・河川「氾濫危険水位」
・土砂災害危険度情報「レベル4:土砂災害は発生の恐れ」
浸水発生、土砂災害発生 災害発生 ・敷地、社屋が浸水
・敷地に土石流侵入
  各種発令等の解除   ・避難勧告や避難指示、大雨・洪水注意報などの解除。

表1 ステージの進展と起こりうる状況
出典)気象庁HP「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」を参考に筆者作成

河川の氾濫は降雨後にも発生しうるため、雨が止んだ後も河川氾濫情報を確認する必要があります。土砂災害について、雨が止んだあとも発生しうるため、土砂災害警戒警報に注意することが重要です。

3. 風水害/土砂災害発生時の対応例(本社対策本部や一般従業員の行動)

次に水害・土砂災害により、企業活動に支障をきたす被害が発生した場合、またはその恐れがある場合の事業所における対応例を見てみましょう。本社組織、一般社員の役割の中でどのように対応するかをまとめていますが、あくまで一般例ですので、実際の水害・土砂災害では、その時々の状況に応じた臨機応変な判断と行動が必要になります。

ステージと目安 災害対策本部メンバー 一般従業員
ステージ1 ・情報収集
・操業方針の検討開始
・従業員の出社/自宅待機方針検討
・通常業務
・社内巡回、事前点検
・土嚢等の確認・準備
・必要に応じて土嚢設置
ステージ2
氾濫注意水位超過
土砂災害危険度情報
レベル2:警戒
・対策本部会議の開催
・操業方針の決定
・早期帰宅/社内待機判断
・出社/自宅待機方針の提示
・早期帰宅/社内待機の準備
・状況により帰宅
・必要に応じ、追加措置
ステージ3
避難判断水位超過
土砂災害危険度情報
レベル3:厳重注意
・早期帰宅/社内待機指示
・被害軽減措置
・臨時宿泊場所の確保
・食糧等の配布
・避難実施の徹底
・(帰宅できる場合)帰宅
・(帰宅不可の場合)宿泊もしくは避難
・安否報告
ステージ4
氾濫危険水位超過
レベル4:土砂災害発生の恐れ
・安否確認のとりまとめ
(安全な場所で)
・避難完了

表2 災害対策本部メンバーと一般従業員の行動
出典)気象庁HP「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」を参考に筆者作成

【プロフィール】

山﨑 肇  独立行政法人中小企業基盤整備機構 災害復興支援部中小企業アドバイザー
中小企業診断士、1級販売士、防災士

カメラ・フィルムメーカーに35年勤務し、子会社統廃合、海外子会社経営、品質・環境・安全マネジメントなど歴任。その後、厚生労働省、大手損保系リスクコンサルティング会社を経て現職。

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