感染症対策に特化し、連携事業継続力強化計画の早期認定を実現

株式会社 豊田モータース

  • 代表取締役 豊田 典義
  • 自動車整備業
  • 岐阜県大垣市千鳥町1-8
  • 昭和31年5月創業
  • 従業員数:24名
  • ホームページ:http://toyoda-m.co.jp/
感染症対策製造業

昭和31年に岐阜県大垣市で創業した株式会社 豊田モータース。新車/中古車販売、車検整備ほか、カーライフ全般をサポートする企業として、これまで60年以上もの間、地元の多くの人々から愛されてきた。同社は2020年3月、新型コロナウイルス感染症の危機に直面した。事態は大事に至らなかったが、代表取締役社長・豊田典義氏は、緊急時における危機管理の甘さを痛感した。これを機に、地元の同業者らが所属する西濃地区ロータスクラブの7社に、連携事業継続力強化計画の話を持ちかけた。従来から信頼関係のある企業同士が連携することで、災害時における事業継続をより強固なものにすることができた。

連携事業継続力強化計画 ~感染症対策に特化し、連携事業継続力強化計画の早期認定を実現~ 株式会社 豊田モータース

インタビュー(6分18秒)

今こそBCP対策を取らなければ
同業者への説得から始まった

自動車販売、車検業務、修理などカーライフサポートの全般を手がけ、地元・岐阜県大垣市の人々から60年以上愛され続けている株式会社 豊田モータース。先代である父親がこの地で創業し、現在代表取締役社長の豊田典義氏は二代目にあたる。

大垣市内には24の湧き水の名所があり、豊富な地下水の恵みで水の都として親しまれている一方、この地は周囲を堤防で築いた輪中地帯であるため、ここに生きる人々は古くから水害と戦ってきた。住民同士が助け合い、被災して困った人には手を差し伸べる、そんな防災意識が自然と身についている。

そんな土地で生まれ育った豊田氏だけに、苦難のときは仲間と支え合って生きていくという意識が強くなった。事業継続力強化計画を策定するきっかけとなったのは、2020年初頭に発生した新型コロナウイルス感染症の猛威だった。

同年3月、板金修理で車両を預かっているときに、所有者の家族に感染者が出たという知らせを受け、その対応に迫られた。当時を振り返って豊田氏は、
「最初はどうしていいのか分からない状況でした。緊急時の対策をあらかじめ考えておかないと、いつかはこうなることは分かっていました。幸いにして従業員から感染者は出ませんでしたが、もし感染者がいたらどう対応すればいいのか、そんなことをずっと悩んでいました。これではいけない、早急に何とかしないと……」

緊急事態に直面し、豊田氏は防災対策が急務であることを改めて痛感した。

そんな経験から、豊田氏は防災対策につながるひとつの行動を起こした。それが、豊田モータースを含む大垣市内の自動車整備業7社が加盟している西濃地区ロータスクラブ(自動車整備業ネットワーク)の業務連絡会の際に、豊田氏は委員長として「自社のBCP(事業継続計画)を早急に取り組むべき」と進言したことだった。その意見が通り、専門家である中小機構アドバイザーの協力を依頼した。

「いつかBCPの勉強会を開催したいと思っていた」という株式会社 豊田モータース代表取締役社長の豊田典義氏。
新型コロナウイルス感染症の対応を迫られ、自社の災害対策への思いが一段と強くなった

小規模事業者のネットワークには
“連携”事業継続力強化計画が効果的

豊田氏の依頼を受けた中小機構の中小企業アドバイザー・藤井健太郎氏は、さっそく西濃地区ロータスクラブ同友会に顔を出し、BCPに関するセミナーを開いた。そこで藤井氏が提案したのは、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業省が認定する事業継続力強化計画だった。

「私たち零細企業は、大企業向けBCPの話は正直あまり参考になりません。一社が被災したら誰が助けてくれるの?という話になってしまいます。ですが、藤井さんは、私たちのようなネットワークがすでに構築されている事業者には、連携による事業継続力強化計画が相応しいと的確なアドバイスをしていただきました。それを聞いた私は“これなら使える!”と直感しました」(豊田氏)

当初、連携企業は岐阜県全域のロータスクラブ加盟店にすべきか悩んだそうだが、それでは規模が大きくなりすぎるため、まずは西濃地区の7社で連携する話を詰めていくことになった。

アドバイスをした藤井氏は、
「豊田社長の事業継続力強化計画に取り組む姿勢が、誰よりも強かったのが印象的でした。中小企業は、ヒト・モノ・カネ・情報の経営資源にどうしても限りがあるので、自社で完結するのは難しく、やはり企業間の連携によって経営資源を補うことが必要です。ロータスクラブのような同業者間の集まりでは、そうした連携をすることの大切さが、より色濃く出たのではないかと思っています」

とはいえ、当初、豊田氏や西濃地区ロータスクラブの経営者らは、事業継続力強化計画の存在さえまったく知らなかった。そこで藤井氏が1回約2時間、2回の勉強会を開いた。

「勉強会ではハザードマップを使って、自社の被災リスクを確認しました。ですが、昔から水害で何度も苦しんでいる地域なので、それを見てもさほど驚きませんでした。もちろん水害のリスクはありますが、まずはできることから始めてみようと思い、感染症対策に特化した計画を立てることにしました」(豊田氏)

豊田氏は西濃地区ロータスクラブ同友会において、BCPについて理解を深める勉強会を企画。
中小機構に専門家派遣を依頼した

株式会社 松車

株式会社 光モータース

SKY.J.ワールド 株式会社

フジワ・カーサービス
(富士和商事 株式会社)

株式会社 桑原モータース

共栄自動車興業 株式会社

以上の西濃地区ロータスクラブ同友会の企業と株式会社 豊田モータースの計7社が、
今回連携事業継続力強化計画の認定を受けた

ここは自然災害と違ってコロナが特有だった特徴としては

感染症対策に特化した計画書の策定を薦めたことに対して藤井氏は「自然災害は同じ地域で連携するのは難しいが、感染症に関していえば集団被害は起きにくいので、むしろ近い方が連携しやすいことが考えられます。ロータスクラブという信頼関係のある企業同士で連携することによって、より強いより連携が図れたのではないかと思います」と語った

緊急時対応を自分事として捉えたことで
全社が連携する方向で意見がまとまった

当たり前だが、自動車整備業はほとんどの作業を手で行っている。そのため、もしスタッフに何かが起きても、リモートワークに切り替えるのは不可能である。

「ひとりでも欠けると仕事は確実に回らなくなります。例えば車検を1日3台やっているシフトで『ひとり欠けたから今日は6台作業してください』というわけにはいきません。従業員が欠ければ、こなせる仕事量も減ってしまいます。それに、通常約2週間先まで予約を入れているため、もし従業員が休んだら、その間に受注している仕事はどう処理すればいいんだ、ということになります。このあたりの問題を連携企業に提起したら、皆さん自分事として捉えて納得してもらえました。書類を作成するのが目的だけではなく、もし自社から感染者が出たらどうすればいいのか。その際はお互いが連携して助け合うという方向で全員の意見がまとまりました」(豊田氏)

このときを振り返って藤井氏は、
「事業継続力強化計画の策定を連携企業全社で決めても、やはりその中にはどこか他人事として捉えている経営者がいるケースがあります。実際、今回の勉強会でもディスカッションした際、それぞれの経営者にかなり温度差がありました。しかし、豊田社長の説得の甲斐あって、勉強会を重ねていくと、皆さんの表情がとても真剣に変わっていくのを感じました」

今回の事業継続力強化計画では、連携しているどこかの企業が操業停止に追い込まれる事態になっても、他の連携企業が速やかに代替作業を引き受ける仕組みを計画書に盛り込んだ。しかし、そこまで話をまとめるには、それなりに時間がかかった。

「最初は最低料金を決めて、どこが受けてもその料金でやりましょうという方向で話を進めたのですが、そうなると車検整備のやり方や作業内容が違うのに同じ料金にするのは難しい、という意見が出ました。最終的には価格を統一するのは断念し、個々の会社が依頼しやすい相手先を選択するということに決めました」

テレワークはちょっとできませんので

従業員が休業する事態になれば作業が滞り、その時点で抱えている仕事を回せる先を探さなければならない。
今回の事業継続力強化計画は7社が連携し、自社でカバーできない業務を連携企業が円滑に代替作業をする仕組みを作り上げた

将来は岐阜県全地区の連携が目標
同業者の関係をさらに深めていきたい

連携事業継続力強化計画の認定を受け、この計画書の内容とは別に、平時にメリットを感じた部分があったと豊田氏は語る。

「連携先企業から『人手不足で仕事が回らないのでなんとかしてほしい』という連絡があったので、もちろん快く引き受けました。災害とは関係ない平時において、こうしたやりとりができるようになったのは、大きなプラスだと感じています」

今後は月一回の西濃地区ロータスクラブの会合において、BCPについて継続して検討する予定にしているという。さらに豊田氏は、
「今回は西濃地区だけでしたが、岐阜県下のロータスクラブは、岐阜地区、飛騨地区、東濃地区などもあります。西濃地区が連携した例を岐阜県全体に発表させてもらい、他の地区も同じような連携型の計画を策定できればと考えています。将来的に離れた地域との関係性がより深まれば、自然災害のリスクにも対応できるより強靱な事業継続力強化計画ができるのではないかと考えています」

大がかりな連携になると、各企業の意見を交換する時間や手間がかかってしまう。だが、今回のような距離的に近い企業同士で、尚かつ感染症対策に特化することで、事業継続力強化計画の認定を早急に受けることができたといえる。

計画書の作成は、防災・減災対策の第一歩にすぎない。従って計画書には、当初できることを盛り込み、認定を受けてからでも、よりブラッシュアップした計画に変えていくのもいいだろう。まずは自社に何ができるか、それを考えるだけも災害対策に取り組むきっかけになる。

  • <中小機構・中小企業アドバイザー・藤井健太郎氏より>

    経営者にとって、日頃の経営から見れば、災害対策は優先順位がどうしても下がります。しかし、事業継続力強化計画の策定をした企業の中には、業務の見直しや効率化を図り、経営改善につながったという話をよく聞きます。また、社外的に災害対策をしているアピールをしたことで、新規受注が舞い込んだという事例もあります。そういった意味で、事業継続力強化計画は災害対策だけではもったいないでしょう。経営改善の一環として、取り組んでいただければと思います。

  • <事業継続力強化計画の策定に生かせる、3つのヒント>

    1)中小機構の専門家派遣&個別支援を活用する
    2)同業種の組織では、連携型計画策定により緊急時だけでなく平時でも効果がある
    3)対応可能な内容から計画書に盛り込んでいく

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