そしてこのジギョケイをまとめていく段階で、銘苅氏はホテルのスタッフの即応力を実感することになります。
「打ち合わせでうかがっていたとき、たまたまですが地震があったんです。すると誰が号令をかけることもなく、ホテルのスタッフがキビキビと動いて、施設の安全確認、必要な電話連絡などをこなしていました」(銘苅氏)
「ホテルは24時間お客さまを受け入れている一方、スタッフは交代制で、そうした天災のときにいつも同じスタッフが顔を揃えているわけではありません。そのため防災訓練においても『そのときにいるメンバーで初動対応がとれること』を目指しています。そのためには、半年に一度の訓練でも、スタートまで『何が起きたか』というシナリオを伝えずに行っています。もちろん毎回パニックにはなりますが、そのなかでスタッフ個人個人に『何をすべきか、自分の頭で考える』という意識が醸成されていると考えています」(白附氏)
過去の訓練では、震度6の地震が起きた想定で、施設内のいくつかの箇所でガラスにヒビが入るところからスタート、次にホテル施設内のいくつかの場所で火災が発生といったシナリオを用意し、よりリアルに行うために、消防署や防災事業者さんにも協力いただき、火災が発生した時の煙を実際に発生させ、視界が悪い中での避難誘導などを訓練されています。実際、参加したスタッフで泣いているスタッフもいらっしゃったほどとの事。
「宿泊されているお客様にも事前にお伝えし、そういう姿を見て頂くということが私はお客様にとってもいいことかなと思っております。それだけ真剣に安心安全を担保するということが伝わることは逆にいいことかな、というふうに思います」(白附氏)
そして最終的に策定したジギョケイは、有事の際、両事業者が互いに補完しあう内容となりました。
「これまでに想定していた有事の際のスタッフや顧客の受け入れに加え、情報の共有、被災していない事業者が被災した事業者に人員を派遣し復旧に協力するといった内容が明文化されました。さらに事業継続に備え、クラウド型の情報管理サーバーの導入、重要情報のバックアップ方法とノウハウの共有なども定めています」(白附氏)
「南城市の防災協定の中では、ホテルの屋外プールには豊富に水があり、大規模災害に生活用水としての利用が見込める事なども話をしています。また、敷地内に広いグラウンドでがあり、こちらも避難場所として考えていまして、防災訓練の時に、職員がバギーに乗ってキャンプ泊されているお客様のテントの方にお声がけしていくという実演をしたのですが、一緒に防災訓練をしていた消防署職員から、こういった対応にかなりいい評価をいただきました」(宮里氏)