一方、ジギョケイの策定で事業継続力を強化することは、事業のもうひとつの柱に成長したB2B分野の拡大にも大きく貢献すると本田氏は考えています。
「私たちの工場では、自分たちで原料から加工して販売する商品のほか、全国各地のお取引先さまから農産物を原料とする商品の試作やOEM製造を引き受けています。商品の試作は50本という小ロットから対応できること、OEMは自分たちの商品と同じく丁寧に手作りしていること、さらにHACCPの考え方を採り入れた工程管理が高い評価をいただき、口コミでお客さまも広がっています。もし天災などで事業継続が難しくなった場合、製造直売だけならお店をしばらく休み、再起の準備を進める対応で十分ですが、試作やOEM製造は、お取引先さまにご迷惑をおかけすることになります。事業継続への取り組みをきちんと整備することが、お取引先さまのさらなる信頼獲得に役立つはずです」(本田氏)
さらに本田氏は、もう一歩進んだBCP対策も視野に入れています。
「天草地方には、私たちと同じく手作りにこだわって農産物加工品を製造、販売している業者さまが複数いらっしゃいます。今後はそうした業者さまと横の連携を深め、万一こちらの工場が被災するなどした場合でも、場所をお借りして生産を続けられる体制づくりを進めていければと考えているところです」(本田氏)
そして本田氏が考える未来は、特産品の物販をテコにした、天草の地域おこしと振興です。
「私たちの商品を手に取り、味わっていただき、『この美味しさを生み出したのは、どんな土地なんだろう』と思った方々が天草を訪ねてくれることを心から願っています。そして先にお話しした同じものづくりの仲間たちとの連携も、そうした天草を盛り上げる活動の一環にできれば、とても幸せだろうと思います」(本田氏)
家庭の台所の延長ではじめたものづくりから、本格的な事業に結びついた本田氏の情熱は、ジギョケイをきっかけに地域活性化の取り組みへと発展することになりそうです。