こうしたコトモビの活動は、地域のニュースで紹介されて話題となりました。そしてその話が中小機構中国本部のエリアマネージャーにも届き、このコトモビが災害時でも堅牢に機能する体制作りにつながる連携型ジギョケイをご案内することになったのです。
「中国本部から話があるまで、ジギョケイについての知識はまったくありませんでした。ただ話を聞いてみると、まさに我々がコトモビでやろうとしていることが形になると感じたんです。そもそもコトモビはゆるやかなグループで、会費など、お金にかかわる取り決めはなく、みなお客さま第一を考えて動いています。ただその流れのため、文書化した規約もなく、災害時にどうするかといったものはぼんやりと考えているだけでした。ただそのなかで、災害時でもクルマ社会のインフラが止まることがないよう、力を合わせなければならないと思っていたんです」(上田氏)
上田氏は連携型ジギョケイについて、まずコトモビの仲間にその内容を伝え、賛同を得ることにしました。
「各社ともやはり自分と同じように『災害対応など非常時に役立つ、なにか形になったものがあったほうがいい』という意見でした。そして今回のジギョケイが国の支援で作ってもらえること、費用等は一切発生しないことを伝えると、『だったらやるべき』という声が返ってきました」(上田氏)
上田氏が連携型ジギョケイの策定に前向きになったことから、中国本部は具体的な支援に入ります。
「琴浦町は海に面していますが、日本海側ということもあり、これまで津波の被害を考えたことはありませんでした。しかし、連携型ジギョケイでは、それぞれの事業者の事業所が海抜何mにあるのかなども調べ、対応策を検討しました。結果的に5社とも『津波想定なし』となりましたが、あまり想定していなかったリスクについても考えることになり、危機管理の大切さを学びました。このように、細かい指導を受けられて良かったと感じています」(上田氏)
連携型ジギョケイは複数の事業者にまたがっての策定であることから、内容の周知から同意といった手続きに比較的時間がかかることが多いのですが、本件についてはコトモビという組織がすでにあったこと、そして上田氏がリーダーシップを発揮された事により短期間にまとまりました。
想定される リスク |
リスク発生による影響 |
対応策と効果 |
地震・水害 |
- 地震ハザードカルテによる30年経過震度発生確率は、震度6弱以上2.5〜4.1%、震度6強以上0.3〜0.6%。直接的な被害により、生命の危機、身体へのけが等の可能性が想定される。
- また避難時の落下物や転倒などによりけがの発生が想定される。
- 就業時間外に発災した場合、従業員は事業所への通勤が困難になり、事業の復旧、継続に支障を来すことになる。
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- 連携各社は同じ琴浦町内に本社があるため、同時被災の可能性がある。
- そのため、連携各社の被害状況を迅速に把握することが重要で、被害を受けていない、もしくは最小限の影響に抑えられた会社があれば、積極的に連携各社へバックアップを行うことを基本方針とする。
- 各社とも緊急時を想定した訓練やシミュレーションを通じて連絡体制の有効性を確認するとともに、LINE WORKSの活用により各社間で安否情報を取りまとめる体制を取っている。
- 毎月1回「防災連携会議」を開催し、発災時には「災害対策本部」に格上げし、迅速に被災状況を把握してホームページやSNSで情報発信を行うとともに、従業員安否、取引先や顧客情報を共有する。
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水害 |
- 5社ともハザードマップ上では浸水による本社機能への直接の想定は想定されていない。
- しかし現在の琴浦町の洪水ハザードマップは時間雨量64.9mm(50年確率)が降った場合を想定したものであり、昨今の全国的な洪水を考慮すると、想定以上の洪水が発生することが予想される。
- 2007年の洪水発生時には、琴浦町西部で103mmの時間雨量を記録している。
- また一部事業者の米子支店に水害のリスクが想定される。道路の浸水、損壊、渋滞に巻き込まれることで、業務の遂行、帰社、移動も困難になり、健康の維持にも影響を受けることが想定される。
- 就業時間外に発災した場合、従業員は事業所への通勤が困難になり、事業の復旧、継続に支障を来すことになる。
- 人員不足に陥った場合、顧客への十分な対応ができない可能性があり、地域経済へも影響をおよぼす可能性が想定される。
- 一部事業者では社内のPC等に顧客情報を保管しているため、浸水被害が発生した場合、顧客情報の喪失が想定される。
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雪害 |
- 2010年12月に国道9号にてタンクローリーの事故を起因とした1000台の立ち往生が発生し、渋滞は一時約25kmにおよんだ。
- 2023年1月には高速道路が雪で通行止めになり、並行する国道9号も一部区間で通行止めとなった。
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感染症 |
- 流行拡大時にはとくに、若干小康状態にある時期においても、いつどこで感染するかわからない状況が継続する。
- 自粛要請等により各社の事業活動が制限を受ければ、売り上げ収入の減少が予想される。
- 顧客の事業活動が縮小すれば、整備工場の稼働率低下等の影響を受けることになる。
- 自動車産業を中心に生産活動が縮小すると、販売する自動車の納期遅れが発生し、売上高が減少する。
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- 感染症発生時には、消毒や換気等の対策を徹底し、感染拡大を防ぐ対応を行う。
- 必要に応じて優先度の低い業務の実施方法の変更や縮小、一時中断等を検討する。
- また「防災連携会議」において情報収集を行う。
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