こうして令和2年にジギョケイの認定を受けた同社ですが、髙橋氏はジギョケイ策定にあたって浮かび上がった課題について、さらに対策を続けました。
「まずは非常用自家発電機の導入です。一応は工場全体が稼働可能な出力になっていますが、停電が長期にわたる場合は“残すべき事業”のみに注力することも想定しています。つぎに製品の製造データなどの簡易クラウドへの移管です。本社社屋が水害等に見舞われサーバーのデータが損失するといった可能性は影響は少ないと考えていますが、取引先とのやりとりが徐々にウェブに移行してきていることもあり、その親和性と情報のバックアップという観点から導入しました。将来的には現在オンプレミスで動いている基幹システムや生産管理システムなどもクラウド化し、さらに強靱性を高めたいと考えています」(髙橋氏)
また社外での万一に備えた対策も強化しました。
「ジギョケイでは従業員の安否確認を電話やSNSで行うこととしましたが、より効率的に取り組むため、災害発生時に従業員のスマートフォンに安否報告のメール送信やプッシュ通知が行われる安否確認システムを新たに導入しました。また毎日工場から出荷される製品が安全かつ確実に納品されること、またそのルート上で不測の事態が発生したときに状況をきちんと把握し、適切な対応がとれるよう、通信型ドライブレコーダーを納品車に装着しました」(髙橋氏)
さらに本社社屋そのものの防犯対策にも新たな取り組みを行いました。
「ジギョケイを申請した令和元年には、京都のアニメーション制作会社に不審者が侵入し、ガソリンをまいて放火し、多くの社員が亡くなるという痛ましい事件が発生しました。その動機は思い込みによる不可解なものとされていますが、そうした動機であれば、日本中どこの会社でも起こりうる可能性があるということです。もちろん、守衛を常時配置するといった人的な予防策が最適解ですが、当社のような小さな会社にそうした体力はありません。そこでまずは本社社屋周辺を複数のカメラで監視する『構内状況確認システム』により、24時間、オンラインでどこからでも確認できるようにしようと。これはまず犯罪予防の第一段階で、つぎには入出館管理システムにより、さらに厳格な不審者対策を行う予定です」(髙橋氏)
現在、目指すべきBCPへのこだわりから、自社の世界観にとらわれず、災害時に力を発揮する「堤防の嵩上」や「高規格道路の整備促進」など「国土強靱化」を目指し、国や行政への働きかけもされています。