モチベーション維持に必要な勉強会
事業継続力強化計画は、平時も含む長期間にわたる取組であり、時間経過の中でグループ内の人員の入れ替わりもあるので、定期的に開催する勉強会はモチベーション維持のために大いに役立っている。また会費制にすることで、質の高いさまざまな異業種の方やアドバイザーをお呼びし、勉強会を行っている。
震災時の反省による情報共有
経営者一人が持っている情報がいかに少ないか、ということを震災時に痛感。常に情報共有をすることで保険や資金調達、政府や県からの支援策などのファイナンス情報も共有でき、地震保険の見直しや新規契約の検討なども行い、今では多くの会社が保険に加入している。
また事業継続の事前対策は、平時には、つい後回しになってしまいがち。実際に被災し、復旧を経験する中で、平時の準備がいかに大切であるかを痛感。平時にできること・すべきことを常に考えるようになった。
簡易な災害時の初動マニュアルの作成
実際に被災してみて分かったことだが、災害に遭ってしまうと混乱し、どう振舞ったらよいか判断がつかなくなる。まずは「初動」が大切。そのため、安否確認や安全確保のためのわかりやすい初動マニュアルを作り、グループ内の従業員に配布し、平時からの意識づけを図っている。今後、「携帯カード」も作って配布を考えている。
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従業員への周知方法
年2回の全体会議や、勉強会や情報交換会を開くことにより、グループ内の主要メンバーの知識を増やし、各事業者の従業員に必要なことを知らせてもらっている。分厚いマニュアルなどがあっても、なかなか読まれることなく、浸透しない。グループ内の従業員には、被災時に必要な「初動マニュアル」を作成し、配布する予定である。現在は、必要最低限知っておいてほしい情報をまとめた「携帯カード」を企画制作中。今後、配布を考えている。
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他社との連携
地域における面的な連携。
「仙台港自動車関連産業復興グループ」は、宮城県が進める県内自動車産業に携わる7社が連携。ただし、同業者ではなく、異業種のグループである(7社の業種は、輸送用機械機器製造業、塗料製造業、機械器具卸売業、道路貨物輸送業、職別工事業等)。実際に被災すると、まず、がれきの片付けといったところから始めなければならない。「地域性」と、自動車産業をキーワードに、本当に復旧するために必要な企業が集まる「業種性」を重視して、グループを構成し、連携を深めている。
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苦労した点・工夫した点
一口に自動車産業の企業といっても、車体製造、塗料、運送など事業形態がさまざまであり、事業継続の重視すべきポイントなどが異なる。震災時の被害程度も各社それぞれだったため、共通のテーマを見つけることに苦労した。それでも、事業継続計画を立てること、連携することの重要性は、グループ企業全員が身にしみてわかっていたため、計画を進めることに異論を唱える企業はなかった。
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今後の展望
震災で顧客情報や図面、仕様書などのデータを消失、復旧に多大な苦労をし、資産としての重要性を痛感した。物理的にハードディスクのバックアップをとるよりも、今後はクラウド化が早急な課題であると思っている。セキュリティのレベルを考慮し、クラウドを積極的に利用していきたい。また、非常用電源をグループで確保することも、今後の課題と考えている。
また今回の事業継続力強化計画を機に、グループとしての結束が再び高まり、地域への社会貢献も考えるようになった。スピンオフとしてNPO法人の設立に至り、各社のノウハウを持ち寄り、発泡スチロールを使った軽い立方体の玩具(テーブル、椅子など)の新商品を開発した。地域をはじめ、全国各地の被災地の幼稚園に寄贈する動きもスタートし、グループで社会貢献にも取り組んでいきたいと思っている。