新生自動車工業株式会社
- 代表取締役 大津晃一
- 自動車車体製造、修理全般
- 宮城県多賀城市明月1-7-19
- 1975年2月7日創業
宮城県の中心地、仙台港エリアは屈指の製造物流拠点。新生自動車工業はここでトラック荷台製造などを手がける創業45年の自動車車体製造会社。2011年の東日本大震災で6メートルの津波が工場を襲い、多大な被害を受けてしまった。いつ降りかかるかわからない自然災害に遭ったことで、事業を続けるための事業継続計画の重要性や、地域で協力しあうことの大切さを、身を持って経験。震災時のグループ補助金を受けるために集まり、異業種7社で作った「仙台港自動車関連産業復興グループ」で、連携型の事業継続力強化計画を申請。災害に対してより強靱な、地域のための企業連携を目指している。
重点対策 | 主な対策や変化 | 防災や減災効果・経済効果 |
---|---|---|
グループ内の連携体制の強化 | 各社でBCPを策定するにとどまらず、復旧を早めるためのグループ構成のあり方を検討していた。 | 事業継続力強化計画の認定は、復旧を早めるために本当に必要な連携のあり方の証となり、「見える化」につながった。 |
事業継続力強化計画の申請をきっかけに、やや活動が停滞していたグループの活性化を図った。 | 各社が作成したBCPや、連携型事業継続力強化計画を提示したことにより、対銀行への信用が増した。 | |
地域経済の復旧・復興に果たす役割の再認識を行った。 | ||
災害に備え、定期的な情報交換会・勉強会の開催 | 異業種の方やアドバイザーを招き、会費制の定期的な勉強会を行うようになった。 | 異業種の情報や、これまで関心のなかった分野にも意識が向くようになり、グループ内の知識の底上げがなされている。 |
保険、資金調達などのファイナンス情報を共有。保険は各社、地震保険・火災保険を見直すに至った。 | ||
緊急時に備える、安否確認の手順の周知徹底を実施している。 | 被災した場合の初動の取り方について、「携帯カード」を配る予定。グループ内の従業員一人ひとりの意識向上を期待している。 |
グループ内の連携体制の強化
きっかけは震災時のグループ補助金
東日本大震災時に多賀城地区の自動車関連企業7社が集まり、「仙台港自動車関連産業復興グループ」を結成し、復興に必要なグループ補助金を申請することにしたのがきっかけだった。実際に被災した状況では、事業を再開するための冷静な、大きな判断をするのが難しいと実感し、各社でBCPを策定。しかし、震災から時がたち、メンバー企業の人の入れ替わりもあり、グループとしての結びつきが薄れてきたのが課題となっていた。

BCPでは足りない「連携」というファクター
BCPの策定は、各社ともに非常に時間がかかる作業であったため、策定がまとまった時には、震災から数年の年月が経ち、グループ結成の目的を達した感じになってしまっていた。また、BCPは各企業が、自社がいかに災害から復興するかに重点が置かれ、「地域性」や「助け合い」の要素が足りないと感じていた。そんな中で、中小機構の支援アドバイザーから、連携型の事業継続力強化計画の認定制度があることを知り、あらたにグループの目指すべき方向性が見えていった。
連携の証としての「連携型事業継続力強化計画」
グループで連携する証として、「連携型事業継続力強化計画」の認定を受けるに至り、認定が誰の目にも見える形となった。
BCP作成時のキーワードは、一般的には「ヒト、モノ、カネ、情報」と言われているが、さらに「お客様」も重要な鍵と実感している。被災時には、代替生産などをしても取引を止めないことが、事業継続力の大きなポイントであり、実際に復旧後の事業にも大きく影響を及ぼす要因となった。
災害に備え、定期的な情報交換会・勉強会の開催
モチベーション維持に必要な勉強会
事業継続力強化計画は、平時も含む長期間にわたる取組であり、時間経過の中でグループ内の人員の入れ替わりもあるので、定期的に開催する勉強会はモチベーション維持のために大いに役立っている。また会費制にすることで、質の高いさまざまな異業種の方やアドバイザーをお呼びし、勉強会を行っている。

震災時の反省による情報共有
経営者一人が持っている情報がいかに少ないか、ということを震災時に痛感。常に情報共有をすることで保険や資金調達、政府や県からの支援策などのファイナンス情報も共有でき、地震保険の見直しや新規契約の検討なども行い、今では多くの会社が保険に加入している。
また事業継続の事前対策は、平時には、つい後回しになってしまいがち。実際に被災し、復旧を経験する中で、平時の準備がいかに大切であるかを痛感。平時にできること・すべきことを常に考えるようになった。
簡易な災害時の初動マニュアルの作成
実際に被災してみて分かったことだが、災害に遭ってしまうと混乱し、どう振舞ったらよいか判断がつかなくなる。まずは「初動」が大切。そのため、安否確認や安全確保のためのわかりやすい初動マニュアルを作り、グループ内の従業員に配布し、平時からの意識づけを図っている。今後、「携帯カード」も作って配布を考えている。
-
従業員への周知方法
年2回の全体会議や、勉強会や情報交換会を開くことにより、グループ内の主要メンバーの知識を増やし、各事業者の従業員に必要なことを知らせてもらっている。分厚いマニュアルなどがあっても、なかなか読まれることなく、浸透しない。グループ内の従業員には、被災時に必要な「初動マニュアル」を作成し、配布する予定である。現在は、必要最低限知っておいてほしい情報をまとめた「携帯カード」を企画制作中。今後、配布を考えている。
-
他社との連携
地域における面的な連携。
「仙台港自動車関連産業復興グループ」は、宮城県が進める県内自動車産業に携わる7社が連携。ただし、同業者ではなく、異業種のグループである(7社の業種は、輸送用機械機器製造業、塗料製造業、機械器具卸売業、道路貨物輸送業、職別工事業等)。実際に被災すると、まず、がれきの片付けといったところから始めなければならない。「地域性」と、自動車産業をキーワードに、本当に復旧するために必要な企業が集まる「業種性」を重視して、グループを構成し、連携を深めている。 -
苦労した点・工夫した点
一口に自動車産業の企業といっても、車体製造、塗料、運送など事業形態がさまざまであり、事業継続の重視すべきポイントなどが異なる。震災時の被害程度も各社それぞれだったため、共通のテーマを見つけることに苦労した。それでも、事業継続計画を立てること、連携することの重要性は、グループ企業全員が身にしみてわかっていたため、計画を進めることに異論を唱える企業はなかった。
-
今後の展望
震災で顧客情報や図面、仕様書などのデータを消失、復旧に多大な苦労をし、資産としての重要性を痛感した。物理的にハードディスクのバックアップをとるよりも、今後はクラウド化が早急な課題であると思っている。セキュリティのレベルを考慮し、クラウドを積極的に利用していきたい。また、非常用電源をグループで確保することも、今後の課題と考えている。
また今回の事業継続力強化計画を機に、グループとしての結束が再び高まり、地域への社会貢献も考えるようになった。スピンオフとしてNPO法人の設立に至り、各社のノウハウを持ち寄り、発泡スチロールを使った軽い立方体の玩具(テーブル、椅子など)の新商品を開発した。地域をはじめ、全国各地の被災地の幼稚園に寄贈する動きもスタートし、グループで社会貢献にも取り組んでいきたいと思っている。