強化の目的を決める!~連携企業としてどう行動していくか~
ここでは連携型の事業継続力強化計画の申請手続きの進め方をご紹介していきます。災害等が発生してから「困った!」「あの時、協力体制を築いておけば」と思わずに済むよう、今から準備を始めましょう。
複数の企業が連携した強化計画
ひとたび災害等が起きれば、その影響は甚大なものになりうることから対策が急務となっています。もしもの場合に備え、事業継続力の強化を図るのに早すぎることはありません。今からしっかり準備を行っておきましょう。
事業継続力強化に当たっては、各企業が個別にリスクを洗い出し、対策を立てることも重要です。しかし、中には中小企業が単独で対応するのは難しかったり、思うように効果を上げられなかったりすることもあります。その場合は複数の企業が連携し、助け合って難局を乗り越えることを考えてみましょう。それが「連携事業継続力強化計画」で、災害時の相互協力体制を構築することに焦点が当てられています。
<連携型が効果的なケース>
- 連携企業の協力を得ることで、被災した事業所や工場の早期復旧が可能になる。
- 被災しなかった連携企業の工場で代替生産を行ったり、人員の応援を受けたりできる。
- 集団で取り組むことで、外部業者や自治体・行政などへの発信力・交渉力が強化される。
- 連携企業それぞれの類似対策を集約することで、物資等の確保が効率化する。
「事業継続力強化計画」認定制度には第5話から第9話にかけて説明した「単独型」のほか、「連携型」があります。「連携型」では、グループ会社や組合等をはじめ、複数の企業で計画を策定、申請することができます。第11話から第16話にかけては、「連携型」計画の策定方法を解説していきます。
連携事業継続力強化の目的を検討
連携事業継続力強化計画の策定は、5つのSTEPに沿って進めていきます。
STEP 1は「目的の検討」です。連携事業継続力強化計画を真に実効性のあるものとするには、連携して強化を行う企業が方針や理念を共有し、明確な方向性をもって計画の策定を行うことがポイントになります。
事業活動の概要
事業活動の概要では、連携を構成する事業者それぞれの事業活動を記載します。その際、注意したいのは、業種等を記すだけでなく、連携事業者の事業活動が担う役割を明らかにすること。これについての記載がないと計画書が不備とされます。
<例>
- 自動車製造に関わる、△△市に集まっている事業者の連携である。市の税収の△割を占める親事業者の操業再開に関わる事業者の集まりでもあり、地域の雇用を支える観点からも重要な役割を担っている。
- 電子部品製造に関わる、△△地域に集積している事業者の組合である。電子部品製造に不可欠な△△の全国シェアの△割を占めており、連携事業者が事業を停止すると、国内における電子部品製造の供給に支障が出る。
- 地域の商店街が集まった連携である。地域住民の生活必需品等を販売し、近隣に商店街等がないことから、住民の生活に不可欠な役割を担っている。
- 連携事業者は地域の雇用の多くを担う中小企業や大企業の連携である。早期復旧がなされず、事業所閉鎖等となった場合、雇用が失われ、地域の人口減につながる可能性が想定される。
連携事業継続力強化に取り組む目的
被災した場合のサプライチェーンや地域経済に対する影響や、従業員やその家族への責務などを具体的に検討します。その上で、何を目的に企業が連携しながら事業継続力の強化を図っていくかを明確化しましょう。そうして連携事業者間での事業継続力強化に向け、意思統一を図ることが計画策定の第一歩です。
<考えたいこと>
- 果たすべき供給責任
- 地域社会の安全確保
- 災害協定の締結による災害ダメージの軽減
- 顧客・取引先や地域経済に対する影響
- 従業員やその家族に対する責務
- 事業継続力強化に当たっての理念や基本的方針
- 自社の企業理念や経営方針
<目的の具体例>
- 医療品や燃料等、社会的な供給責任のある物を供給し続ける
- 地域の顧客に生鮮食品や日用品を安定的に供給できるようにする
- 観光業・小売業等では、来客者や顧客の安全を確保し、早期に安全な場所まで避難させる
- サプライチェーンを途絶させないよう、製品・サービスを供給する
- 早期に事業を再開することで地域の雇用を守り、地域経済への影響を最小限に抑える
感染症対策も強化計画の対象に
新型コロナウイルス感染症は、業種・業態を問わず、多くの企業にさまざまな影響を及ぼしています。
連携事業継続力強化計画には、感染症対策など、喫緊の課題への対策も含めることができます。 感染症対策について記載する場合も、災害時と同様にどのような影響があるかを洗い出し、必要に応じて目的を明確化していきましょう。