対策方法を検討しましょう~連携の取組におけるヒト・モノ・カネ・情報~
事業継続に役立つ対策と取組の考え方
災害発生後も事業を継続するには、個々の連携事業者が事業の停止期間を最小限に抑え、事業を部分的にでも継続または速やかに再開するための対策を事前に検討し、準備しておくことが重要です。そのうえで、連携事業者間でどんな取組を行うことが有効なのかを検討しましょう。
大切なのは、連携の取組にとって重要な業務を特定し、その業務がどのような災害等によって停止してしまうかを考えることです。また、ヒト・カネ・モノ・情報のすべてに対策を立てる必要はなく、重大な影響を与える可能性が高く、対策が不十分な部分に焦点を当てて検討するといいでしょう。その際、平時でも有効な対策から始めるのも一案です。
事業継続に役立つ対策と取組:人員体制(ヒト)
ここがポイント!『ヒト』
- 災害発生時に必要となる人員を確認し、連携事業者間での人員の派遣と受け入れについてルール化します。その際、人数だけでなく、どのような能力を有した人材が必要なのか、自社の業務に支障が出ない範囲で派遣できる人員は何人かなども考えておきます。
- 業種や地理的な距離などを考慮し、お互いに支援を行う連携事業者のペアをあらかじめ決めておくのも一つの方法です。ただし、ペア企業がともに被災する可能性もあるので、その場合に備えた対策も考えておきましょう。
- 人員派遣の際の交通手段や費用負担についても決めておきましょう。支援をスムーズに行えるよう、日ごろから連携事業者間で従業員の交流の機会を持つことも有効です。
|
対策方針 |
具体的な対策事例 |
1 |
有事における連携事業者間の人員の融通・派遣についてルール化する |
相互応援に向けて、○○社と△△社が相互に支援する等、企業のペアをあらかじめ設定する(または、災害対策本部にて決定することを連携団体内で合意する) |
2 |
同時被災のリスクが低い〇〇地区の△△組合を災害時の支援依頼先として選定し、△△組合と協議の場を設ける |
3 |
連携事業者間で、不足すると見込まれる人員規模や職種等の情報をあらかじめ共有する |
4 |
応援人員を派遣する際の、派遣人員の宿舎や派遣手段を事前にルール化する |
5 |
応援人員を受け入れる際の、希望人員の伝達方法等を事前にルール化する |
6 |
応援人員を受け入れる際の、食料や毛布等の受入態勢をあらかじめ検討しておく |
7 |
平時から担当者間で交流を実施し、有事の際に有効に人材派遣・応援が機能するようにする |
親会社・子会社間のグループ会社内で、経理業務等を代替できるよう、相互に訓練を行う |
8 |
技術者や管理部門担当者、営業担当者等の担当者同士で定期的な交流の場を設け、有事の際の人的支援がスムーズに行えるよう情報交換等を進める |
事業継続に役立つ対策と取組:設備、機器、装置(モノ)
ここがポイント!『モノ』
- 事業継続に必要な設備・機器、原材料等を確認・把握しましょう。
- 他社の設備等を利用して代替生産を行う場合、連携企業にその設備等があるかどうかの確認と、利用できる場合、費用を含めて事前に取り決めを行います。
- 自家発電設備などを共同で購入することも検討できます。その場合、費用負担と、通常時の管理を誰が、どこで行うかの検討も必要です。
- 連携事業継続力の強化に向けて設備を導入する場合、税制優遇を受けられます。有事に備え、代替生産や各種連携を可能にするため、物品の統一化を図るのも一つの方法です。
- 輸送ルート・物流の連携についても検討しましょう。
|
対策方針 |
具体的な対策事例 |
1 |
被害想定を基に、必要・有効と思われる設備・機器等を連携事業者で共同購入する |
災害時に電気の供給が止まった場合に備え、共有の非常用発電機等による電源を確保する |
2 |
団地敷地外周にコンクリート塀等を設置し、敷地内に水が流入しないようにする |
3 |
災害時に燃料の供給が止まった場合に備え、共有の燃料備蓄基地等を設置する |
4 |
設備・機器等に対して連携して実施すべき事前対策を施す |
工場集積地におけるがれきの処理の仕方をあらかじめ決めておく |
5 |
工場集積地における廃棄物の処理の仕方をあらかじめ決めておく |
6 |
共有施設の耐震性能を診断する。耐震性能が不足している建物は耐震補強工事を実施する |
7 |
地震に備え、共有施設に対し、浸水防止、設備の固定化などの対策に取り組む |
8 |
有事の際の代替生産・各種連携を企図し、あらかじめ手順や方法をルール化する |
工場、オフィス、設備、機器、材料、部品等が被災時に利用できない状況になった場合に、連携企業間で遊休施設、工具等を貸出・共有できないかを検討する |
9 |
災害時の代替生産方法、設備等の融通や設備の受入等について、平常時に連携協定を結ぶ |
10 |
近隣企業間において、被災時の共同配送の可能性を検討する |
11 |
災害時に通常の輸送ルートが不通となった場合、別の方法で輸送できるよう、あらかじめ物流業者との間で非常時の輸送ルートや輸送燃料の調達方法について具体的に検討する |
12 |
自社に加え、サプライチェーン上の各社の通常在庫量を品目別に把握し、罹災時の生産可能量・供給可能量を明確化する |
13 |
発送拠点の共同利用等、有事の際もサプライチェーンを維持するために連携企業間で協定等を締結しておく |
14 |
有事の際の同時被災を避けるため、生産体制や供給体制(サプライチェーン)の地域分散が可能かを検討する |
15 |
被災時に代替供給先からの調達・生産再開を容易とするために、原材料、部品を含めた物品の規格の統一化・標準化が可能か検討する |
16 |
連携団体として優先的に復旧すべき製品・サービス等が存在する場合、事業の代替が容易となるよう規格の共通化・プロセスの汎用化等を実施する |
事業継続に役立つ対策と取組:資金調達手段(カネ)
ここがポイント!『カネ』
- 被害想定や復旧に要する期間、損害額を見積り、資金調達手段の確保は十分かを確認します。確保する必要がある場合、どのような対策が必要かを検討しましょう。
- 平時から連携事業者間で資金調達手段に関する情報の共有・交換を行っておくとよいでしょう。
- 国や自治体等の支援策への申請を速やかに行えるよう、各者が平時から経営に関する書類等を整備しておくことも必要です。
- 連携事業者で団体保険や共済等の加入も検討しましょう。
|
対策方針 |
具体的な対策事例 |
1 |
必要資金の調達手段について、リスクファイナンスを講ずる |
災害時に向けた資金の準備状況(運転資金の保有状況、保険の種類)を共有し、必要に応じて個者が対策を講じる |
2 |
連携事業者間で資金調達・リスクファイナンスに関する啓発活動を実施する |
平時から資金調達手段に関わる情報の共有や、関係機関とのこれらの知識を得るための場を設定する |
3 |
必要運転資金額やその手当体制について、連携事業者間でチェック体制を整える |
4 |
災害発生時において、国や自治体等の支援策等について連携事業者間で共有し、各者は経営に関する書類等を平時から整備しておく |
5 |
親事業者等がファイナンスするルールを設けるほか、連携事業者において団体保険や団体共済等の加入を検討する |
他企業との連携BCPを策定することによって、BCP特別保証制度等、災害時に復興・運転資金が受けられる体制をとる |
6 |
有事の際に、サプライチェーンの頂点企業や連携企業の幹事企業が一時的に資金を支援する仕組みを設ける |
7 |
連携企業団体で加入できる団体保険や共済への加入を検討する |
利用可能な金融支援
計画認定後、下記の金融支援措置を活用することができます。
日本政策金融公庫による低利融資
設備投資に必要な資金について低利融資を受けることができます。
(融資の利用にあたっては、別途日本政策金融公庫の審査が必要となります。)
貸付金利
設備資金について、基準利率から0.9%引き下げ(運転資金については、基準利率)
貸付限度額
中小企業事業:中小企業事業:7億2,000万円
貸付金利の0.9%引き下げが適用となるのは貸付限度額のうち、4億円まで。
貸付期間
設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内)
中小企業信用保険法の特例
連携事業継続力強化計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大を受けることができます。
保障限度額
|
通常枠 |
別枠 |
普通保険 |
2億円(組合4億円) |
2億円(組合4億円) |
無担保保険 |
8,000万円 |
8,000万円 |
特別小口保険 |
2,000万円 |
2,000万円 |
新事業開拓保険 |
2億円→3億円(組合4億円→6億円)(保証枠の拡大) |
海外投資関係保険 |
2億円→3億円(組合4億円→6億円)(保証枠の拡大) |
中小企業投資育成株式会社法の特例
通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加えて、資本金額が3億円を超える株式会社(中小企業者)も事業継続力強化計画の実行にあたり、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることができます。
日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
認定を受けた中小企業者(国内親会社)の海外支店または海外子会社が、日本政策金融公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、日本政策金融公庫による債務の保証を受けることができます。(保証限度額:1法人あたり最大4億5,000万円/融資期間:1~5年)
事業継続に役立つ対策と取組:情報の保護(情報)
ここがポイント!『情報』
- 事業継続のために必要になる情報と、各事業者が行っている情報の保護方法を確認しましょう。
- 重要情報を保護する対策を連携事業者が共同で行うのも有効です。
- 製品の設計データや生産ノウハウなど、情報の相互利用に向けた連携事業者間の体制を整備するのも一つの方法です。ただし、こうした情報については、営業秘密の漏洩防止対策を講じる必要があります。
|
対策方針 |
具体的な対策事例 |
1 |
共同でバックアップサーバ等を他の地域に設ける等、重要情報の保護について対策を設ける |
災害時にも情報資産にアクセスできるよう、クラウド環境にデータを保管したり、データを複数拠点で保管したりする |
2 |
重要電子データのバックアップを目的に、連携企業が連帯してオンラインストレージサービスを活用する。なお、連帯して情報ベンダーと調整することによって、導入作業の効率化やディスカウントを図る |
3 |
あらかじめルール化した上で、連携事業者間で重要情報の相互保管を実施する |
代替生産に必要な情報の開示準備を行う(または、代替生産に必要な情報を開示して代替生産が可能かをテストする) |
4 |
災害時に限り、地域内の連携した複数の企業間・事業者間でデータベースの共有を行う契約をあらかじめ締結する |
5 |
連携事業者間で重要情報保護に関する啓発活動を実施する |
重要情報について各社でどのようにバックアップを取っているのかを共有し、ノウハウを共有するとともに有事の際の代替生産の際に活用できるようにする |
事業継続に役立つ対策と取組:その他
ここがポイント!『その他』
- 初動対応や事業継続に直結するもの以外でも、行っておくと有益な事前対策を検討しましょう。以下に挙げた事例を参考にしてください。
|
具体的な対策事例 |
1 |
被災時の各種インフラ、機能について、脆弱性評価を平常時に行う |
2 |
連携団体として共同で確保すべき外部委託先があるかどうかを検討する |
3 |
連携団体として優先的に復旧すべき製品・サービス等がないか検討する |
4 |
一時避難所を定め、避難ルートも決めておく |
5 |
連携団体として、共同で帰宅困難者向けの物資を備蓄する |
6 |
軽症者の応急処置手順や設備のほか、重篤な負傷者の搬送手段や搬送先等について、事前に整備しておく |
7 |
被災した企業や地域を訪問し、備えておくべき事前準備等を共有してもらう |
8 |
連携団体として各企業に求めたい防災対策を検討し、ガイドラインとして配布する |
9 |
災害時の工業油、工業水、資機材等の優先配給先や各社の使用量制約等を決めておく |
10 |
連携事業者間で、有事の際に優先して復旧すべき施設・エリアをあらかじめ特定しておく |