【激甚化する自然災害の実態】
気候変動による影響なのか、平成30年(2018年)7月豪雨、令和元年(2019年)台風19号、令和2年(2020年)7月豪雨、今年7・8月の大雨による被害と、ここ数年は日本各地で豪雨災害が発生し、各報道機関が「観測史上最大」と報道することも珍しくなくなりました。特徴的なのは、災害の規模や範囲が以前よりも大きく激しい点です。そうした状況を「激甚化」と表現します。
中でも、平成30年(2018年)9月に発生した台風21号は、非常に強い勢力を維持したまま四国に上陸し、大阪で走行中のクルマが吹き飛ばされるなど、衝撃的な映像を目の当たりにされた方も多いのではないかと思います。
こうした状況は、損害保険業界全体に影響を与えており、風水害における保険金支払総額は2018年から2年連続で1兆円を超えました。それまで風水害における保険金のお支払いで年間1兆円を超えることは無く、近年では多くても4000億円ほどでした。これこそが激甚化を物語る統計的な数字かと考えます。
今後も気候変動等の影響により、激甚化された自然災害が頻繁に発生することを想定して、十分な対策を講じる必要があります。
過去の災害シミュレーション機能
令和元年台風21号のシミュレーション結果
【被害予測をリアルタイムに地図上に表示 世界初のサービス】
激甚化する自然災害を前に、様々な支援をしているのが、私たちあいおいニッセイ同和損害保険株式会社です。「お客さま第一」「誠実」「チームワーク」「革新」「プロフェッショナリズム」「地域密着」「情熱」という7つの行動指針を掲げて、特色ある個性豊かな会社を目指しています。
その代表例の1つが世界初のリアルタイム被害予測「cmap(シーマップ)」(弊社、エーオングループジャパン株式会社、横浜国立大学の産学共同研究で開発)です。台風・豪雨・地震による被災建物棟数を予測し、無償で公開しています。台風は上陸前から(最大7日先まで)、豪雨・地震による被害が発生した際は被災直後から、被災建物棟数、被災件数率を市区町村ごとに予測して地図上に表示しています。
このcmapを活用することにより、被災規模を速やかに把握することで、社内の災害対応態勢を構築することができ、「迅速で丁寧なお客さま対応」ができるようになりました。
台風発生時、上陸前から最大7日先の被害を予測。
予測結果は1時間ごとに表示
被災直後に予測、被害予測結果は
1時間ごとに表示
深度3以上で発生の約10分後に震度情報表示。
震度5弱以上で被害予測結果を表示
【充実した機能により、地域の安全に貢献するcmap】
cmapは当初、社内利用を目的として開発しましたが、弊社は「地域密着」を行動指針に掲げており、地域の安全を担う自治体の方々や、地域の住民の皆さまにもご活用頂きたいと考え、無償で一般公開しています。また、cmapはアプリ版も公開しています。弊社からの情報発信という点において、特にプッシュ通知が有効であると考え、アプリ版も開発しました。WEBサイトは、いざという時に見られない可能性が高く、災害発生中にワンストップで情報を収集できる点がcmapアプリの特徴です。現在地と予め登録した地点、複数地点登録できます。例えば、自分は東京に住んでいるけど、実家が離れた場所にある場合など、自分の知らないところで発生している「家族に関するリスク」を知ることができます。
<その他、主な機能紹介>
1.JX通信社のFASTALERTと連携して、SNSの映像・画像等を解析し気象・災害・ライフラインと判別した情報をcmap上に表示する機能を追加。大雨や河川増水などの情報も表示されるため、被災前後のスムーズな情報収集が可能となりました。
2.全国の避難所・避難場所の位置情報をマッピングします。さらに一部の地方公共団体が管理する避難所混雑状況を表示します。
(避難所・避難場所の件数は、更新の上で表示されます。)
【事後のアフターケアだけでなく、地域の防災・減災に貢献する。】
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」では「すべての国々で、気候関連の災害や自然災害に対するレジリエンスと適応力を強化する」と掲げています。「レジリエンス」が注目を集める昨今、あいおいニッセイ同和損害保険では事後のアフターケアだけでなく、事前の損害軽減に取り組んでいます。
自然災害の激甚化により、お客様や地域社会が抱えるリスクがより増加しています。損害が発生する前にリスクを見つけてお伝えする、場合によっては事故の発生を未然に防ぎ、仮に防ぐことができなかったとしても迅速にリスクをお伝えすることで影響を小さくして、迅速に対応する。
これらをシームレスにサポートするというコンセプトで、あらゆるリスクに対して、今までよりも広い時間軸でお客様にお役に立てる商品・サービス開発に今まさに力を入れております。その一環としてリアルタイム被害予測cmapを開発しました。
弊社のビジネスモデルとして、リスクを見つけ伝える、リスクの発現を防ぐ、経済的な負担を小さくする、この3つを掲げています。被害を未然に防いで低減するのは保険会社の社会的な使命です。cmapを無償公開しているのも、防災・減災のソリューションとして日常的に使って欲しいからです。
自治体の方々には、インフラ対策(主に護岸・堤防、水門等の整備)、地域住民の皆さまや企業等には、自主的な情報収集・避難行動等の参考情報としてcmapをご利用いただければと思います。
現在も避難先情報の充実や混雑状況の可視化など更なる機能拡充を進めています。また、本社所在地である東京・渋谷区との共創を行っており、より細かな情報提供と帰宅困難者対策など都市特有の課題解決を目指していく考えです。
cmapを自治体の方々や企業、地域住民の皆さま等多くの方々に、防災・減災ソリューションとして、日頃からご活用いただきたいと切に願っています。
【執筆者】
橋津 正隆 |
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 損害サービス業務部 企画グループ
cmapプロジェクトメンバー |