今年も梅雨に入る早々九州や中部、東北でも強い雨が降り続き大きな被害が起きてしまいました。ここ数年、毎年の様に水害が繰り返されます。「これまでに経験した事のないような・・」「命を守る行動を・・・」という言葉がテレビから何度も流れてきます。氾濫した河川や浸水家屋の映像を見ると胸が痛みます。
自然の力の前に人間は無力ですが、警報・注意報、早期注意情報(警報の可能性)などの気象情報を使った早めの避難、備えについて紹介します。
1. 風水害関連の警報・注意報
気象台からは激しい現象に関する情報が数日前から段階的に出されます。また、内閣府「避難勧告等に関するガイドライン」が31年3月に改定され、「住民は自らの命は自らが守る意識を持ち、自らの判断で避難行動をとる」との方針が示されました。この方針に沿って、図1のように警戒レベルを5段階に分け住民がとるべき避難行動(避難勧告、避難準備)と警報、注意報などの気象情報の警戒レベルを対応させました。しかし、例えば同じ警戒レベル4でも警報と避難指示が同時に出されるとは限りません。警報が出されても非難が必要かどうかは地域の状況によって変わります。また、夜中など急に警報や避難指示が出されて、気づかず逃げ遅れた、慌てていて携帯を水の中に落とし、家族や会社に連絡が取れず心配をかけたというような話をよく聞きます。警報・注意報が出る可能性を事前に知り、落ち着いた行動ができないかと思います。
2. 早期注意情報(警報級の可能性)
警報級の現象が予想されるとき、気象庁HPの警報・注意報の頁に「早期注意情報(警報級の可能性)」が発表されます。図2は早期注意情報の説明図です。早期注意情報は毎日5時、11時、17時に「高」「中」の2段階で可能性が示され、時系列に見ることができます。また、警報・注意報が出ていないときでも、5日後までにその可能性があれば発表されます。
図3は、7月10日5時に発表された大牟田市の気象警報・注意報、図4は同時に出された同市の早期注意情報です。この時はすでに警報が発令されている状態ですが、いったん落ち着いても12日と14日に「中」レベルの大雨警報の可能性が予想されています。当時の緊迫感が伝わります。
このように、早期注意情報を毎日確認しておけば、いざという時慌てずに済みます。
図3-1:7月10日5時発表の警報・注意報
図3-2:7月10日5時発表の早期注意情報
出典:気象庁HP:「気象警報・注意報」から7月10日発表、大牟田市の例
3. 命を守り、被災を小さくする行動
気象警報が発表されてからではできることは限られます。災害が目前に迫った段階では、会社では従業員の安全を守る対応で精いっぱいです。しかし、数日の猶予があれば、近隣の企業や住民との協力も可能になりできることが広がります。 平時の防災活動に早期注意情報を取り入れ災害のリスクを減らすことは考えられないでしょうか。警報が出る回数は少なく無駄に感じることも多いかもしれませんが、毎日の担当を決めルーチンとして行えばそれほど難しくないと思います。災害は忘れたころにやってきます。また、このような活動を会社全体で行うことは、防災意識を高めるだけでなくコミュニケーション力を高め事業運営をより効率的にします。ぜひ試してみてください。
次は、ある経営者からお聞きしたお話です。日頃の教育、訓練などの活動がいかに大切か分かります。
「朝、急に警報が出たので大急ぎで従業員を帰宅させた。無事自宅に帰ったという連絡を受け、ほっとしていたが、従業員の一人が帰宅後、冠水した道路を歩いて保育園に子供を迎えに行ったという話を聞いて驚いた。」
「安否確認システムを導入していたが、集まった情報は会社のパソコンからしか見られず、夜中の災害だったため、自宅で一晩中従業員の安否を心配していた。」
【プロフィール】
中峰 博史 |
独立行政法人中小企業基盤整備機構チーフアドバイザー |
中小企業診断士 気象予報士 防災士 |
総合電機メーカーに35年勤務し、販売管理、生産管理、品質管理、技術開発における情報システム企画、開発に従事。独立後、経営改善、ものつくり現場の効率化、販路開拓、事業継続計画策定などの支援を中心に活動を行っている。