タイで水害を経験するなど自然災害への危機感を知りその対策も行っていた同社だが、この東日本台風は想像のさらに上をいくものだったと言う。実際、水害で想定していた浸水はせいぜい50cm~1m。1mを超えると機械設備などの被害も一気に大きくなるとのことだが、この時は2mまで浸かったと、春日氏は被害の大きさを語る。
「川が氾濫・決壊して津波に近いような水が押し寄せるということは全く想定していなかったものですから、タイで経験した洪水とは規模感が違いました。国内でも2011年に津波で壊滅的な被害をもたらす東日本大震災がありましたが、当社の財産保険は火災保険にオプションで地震保険をつけたもので、水災オプションをつけていませんでした。今ではつけていますが、その時点では認識が甘かったと思います」(春日氏)
さらに、今後ますます降水量や地震、気温の上昇など世界各地で観測史上最高と言われる自然環境の変化が予想される。そのため災害の規模を自分たちで簡単に決めずに、本当に考えつかないような大災害が起こることを想定していかないと、本当の意味で機能する計画にはならないと続ける。
また、本社のある北部工業団地には自治会があるが、他の会社の方たちと当時の苦労話など情報を共有する中で、業種によって復旧までの対応の違いに気づいたと言う。災害が発生した場合、例えばモノを仕入れて販売する業種であれば在庫の被害以外は新たに仕入れればすぐに商売ができる。ところが、製造業ではモノを作るための設備が一切使えなくなるため、いかに早く設備を復旧するか、対策としては設備の被害をどれだけ最小限に抑えられるかが重要となる。
「そうした中で今我々がやろうとしているのは、工業団地全体として共通で必要なことは、一つのまとまりとしてやっていこうと。災害前の情報から復旧に向けた情報も共有できるものは共有していこうという取り組みです。業種の違いがあっても、運命共同体として、工業団地としてのBCP、さらにはその工業団地としての事業継続力強化計画というのを一緒に考えていこうと、ちょうど今年委員会を立ち上げたところです」(春日氏)
実際、工業団地内でもBCPを策定される企業は増えてきていて、そうした企業は事業継続力強化計画も策定しているようだ。BCP策定でとどまらず事業継続力強化計画の策定までやって初めて経営としての備えになると思うのでぜひお勧めしたいと春日氏は語る。