改めて経営について整理をすることで、会社の現在地を知ることができるのも計画策定のメリットに挙げる。そして、事業を継続させて行く上では、このように自分たちが許容できる範囲のリスクと、自然災害も含めて許容できないリスクを明確に区分けする必要があると菊地氏は考える。
旭フーズのお客様の多くは飲食店舗様。つまり、これまでBtoBのビジネスを中心に行ってきたが、このコロナ禍において、今後は災害ではない事業継続のリスクに対しても、会社を継続させて行くための備えが必要になる。そこで、同社ではBtoC向けの新しい取り組みを始めている。
「我々の事業では、地域のご理解をいただきながら、地域の方々を応援したいという思いから、毎月最終日曜日に弊社の敷地内で即売会を実施したり、一般の顧客様に向けて『トン・カシュール』というインターネットショッピングサイトも立ち上げました。ほかにも、我々がチョイスした居酒屋メニューを手に取っていただける自動販売機を設置するなど、一般のお客様と直接やり取りできるツールでお近づきになりたいと思っています」(菊地氏)
食品などの流通の中間を担う卸売業では、よく「供給責任」という言葉を耳にするが、お客様があっての我々なので、卸売業ではその言葉を抜きには語れないと菊地氏もその言葉を口にする。そして、事業を継続させていくための努力や取り組みは、すでに毎日おこなっているのだと言う。
「お客様にお届けする商品を欠品させないようにとか、指定の商品がない場合には代替えの物を用意して持って行くなど、そうした対応の全てが事業を継続させていくための力になっていると思います。我々に限らず、各社さんもそうした取り組みはすでに当たり前のように行っていて、それを明文化・体系化していないだけの話。事業継続力強化計画というと難しく感じてしまいますが、普段取り組んでいることとあまり差異はないと思いますので、一回立ち止まって計画を策定してみるもの妙案だと思います」(菊地氏)
社員のおよそ半分は東北出身者だという同社。災害に対する意識は、実際に災害を経験した者としていない者とでは、どうしても違いがあるそうだ。そうした社員一人ひとりに災害のリスクや対策について説明したり、実際に雪道を運転して走行時のリスクを経験させることで理解を浸透させてきたと言う。こうした経験に基づく地道な取り組みも、同社の事業継続の大きな強みになっていると言えるだろう。