卸団地組合が目指した、連携による防災対策

協同組合 大阪紙文具流通センター

  • 所在地:大阪府東大阪市長田中3-5-22
  • 業種:紙業界・文具業界の卸団地
  • 組合員数:42社(文具関係20社、紙関係22社)、16社(賛助会員)
  • ホームページ:http://www.kamibung.com/
地震風水害卸売・小売業

1971年(昭和46年)4月、大阪市内で操業していた紙業界と文具業界の複数の事業者が集結し、卸団地が開設。事業者は組合員となり相互扶助のもと、50年以上もの長きにわたり大阪の産業や雇用を支えてきた。昨今、国内において自然災害による甚大な被害が増えてきたことで、事務局が災害対策を検討していた矢先、2018年は6月に地震、8月に台風が発生したため、それを機に防災対策が組合の喫緊の課題になり、連携事業継続力強化計画の策定を進めた。

卸団地組合が目指した、連携による防災対策 協同組合 大阪紙文具流通センター

インタビュー(7分11秒)

ジギョケイ認定制度の開始が
防災・減災対策を後押しした

製造業や卸売業を中心に、多くの中小企業が軒を連ねている東大阪市。この地域は近隣の同業者同士が連携することで、横請け・仲間請けと呼ばれる独自のネットワークを形成し、お互いに技術力や生産力、業務効率を高め合うことで発展し続ける、この地域独自のスタイルが今なお根付いている。

その東大阪市に、協同組合 大阪紙文具流通センターがある。紙業界、文具業界の事業者がひとつの拠点に集まる形で、1971年4月に団地が開設されました。

現在は、文具業者20社と紙業者22社の計42社。さらに賛助会員16社を含めた計58社の組合員(企業)からなっており、約1300人の従業員が勤務している。

1995年の阪神淡路大震災以降、関西地域は幸いにも大規模な災害に見舞われることがなかったこともあり、組合員各社は防災・減災対策にそれほど力を入れてこなかった。とはいえ、近年BCP(事業継続計画)の必要性が中小企業にも叫ばれるようになり、事務局としても何らかの対応を検討していた。そうしているうちに、突然天災が起こった。

当時の状況を、協同組合 大阪紙文具流通センターの事務局である専務理事の名和秀記氏に話を聞いた。
「やはり衝撃的だったのは、3年前の2018年に関西を襲った台風21号でした。その2か月前には大阪北部地震で震度6程度の大きな揺れがあり、そういった災害が相次いだこともあって、これはいつ何が起こるか分からないという危機感を覚えました」(名和氏)

台風21号の接近時、強風によって看板が飛ばされた被害が出たが、地震を含めて幸いにも人的被害はなく、その後の事業にもほぼ影響はなかった。この経験を機に、今後の災害に備えて何らかの策を講じる必要性を考えたという。
「ハザードマップを確認すると、この辺りは周囲の河川が氾濫、あるいは堤防が決壊したら、浸水の可能性があることが分かりました。それに地盤が弱く、揺れが大きい地域であることも把握できました。そうした災害の可能性がありBCPには関心を寄せていたのですが、BCPを一から作るスキルがなければ、そこに時間をかけるマンパワーもありません。そんな時、偶然にも事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定制度が開始されたことを知り、これなら私たちだけで作成できるのではないかと思ったことがきっかけです」(名和氏)

紙業界、文具業界の事業者が集結する大阪紙文具流通センター。2022年で団地開設51年目を迎えた

役員企業を主体に連携計画を策定
災害時に必要となるモノとカネに注力

中小機構のメールマガジンで事業継続力強化計画のシンポジウムが近々開催されるのを知り、それに参加して、計画の概要をある程度把握した。また、複数企業が集結する卸団地組合は、連携型の計画策定に向いていることも分かった。

では、組合員との連携はどういう形で進めたのか。
「組合員全員を連携企業にするとなると、かなり時間がかかってしまいます。そこで、役員会で計画策定の旨を説明し、同会で賛同を得られたことで、まずは役員企業を連携先企業にすることを考えました。11社の役員企業が主体となって防災・減災に取り組めば、他の組合員もそれに追随してくれる。要は計画の策定を早急に進めたかった、という想いがありました」(名和氏)

計画の策定は、中小企業庁ホームページに掲載されている事業継続力強化計画策定の手引きを参考に計画書の作成を進めたという。名和氏曰く、作成自体はそれほど難しくなかったという。

計画の策定を進めるうえで、最も時間をかけたのが「連携事業継続力強化に資する対策と取組」だった。複数企業が組合員になっている事務局にとって、対策ができる部分とそうでない部分が存在するという。
名和氏は、「計画書には、ヒト・モノ・カネ・情報という4つの項目が記載されていますが、事務局が人員[ヒト]を整備して何らかの体制を整えるのは難しく、また連携先企業の状況[情報]を一括で管理するのも無理があると判断しました。とはいえ、事業継続力強化計画は“自分たちができることから始められる”のが魅力だと考えています。そこで、モノとカネに注力して計画を策定することにしました」(名和氏)

食料や飲料水など比較的手に入れやすいものは各組合で備蓄をするという方向で決まり、災害時に必要とされていながら導入が困難と思われる発電機(3台)や投光器(2台)、災害用トイレ(200セット)などを事務局側で用意した。

また、事務局では金融事業を行っていることもあり、資金面の支援を検討した。災害時の資金繰りが厳しくなることを想定し、メインバンクである商工中金 東大阪支店に話を持ちかけ、災害型コミットメントラインの契約を締結した。

希望した組合員企業に対して、外部の安否確認サービスを仲介した名和氏。
「個々の企業ごとで契約するよりも、組合員数社がまとまって契約した方が費用面におけるスケールメリットが出る」と語った

事務局が管理している倉庫に、発電機、投光器、災害用トイレなどを準備している

認定事業者は国からのお墨付きに
防災対策がひとつの形になった

事業継続力強化計画を策定し、その後認定を受けて何が変わったのか。
「“BCPで防災に取り組んでいます”とアピールしても、取引先企業や組合員の従業員までなかなか伝わらないと思いました。その点、事業継続力強化計画の認定事業者になれば、国からのお墨付きがもらえ、しかも認定のロゴマークをホームページや名刺などに使用することができます。理屈を振り回さなくても、ロゴマークひとつで理解してもらえるところに大きなメリットがあると感じました」(名和氏)

ホームページで事業継続力強化計画の認定を対外的に告知したこともあって、先日、石川県の卸団地組合のBCP委員会のメンバーと事務局職員らが視察と研修に訪れた。そこで、計画を策定した経緯や現在の取り組み状況などを説明。防災・減災対策を自らの組合だけに留めるのではなく、他の組合に伝えることで自然災害のリスクを共に考えるといった、新たな活動の場面が広がった。

協同組合や団体が連携事業継続力強化計画を策定することは、とても意義があることだと名和氏はいう。
「現在、複数の企業が集まっている組合では、組合への求心力を高めることが課題のひとつになっていると思います。事業継続力強化計画は、組合と組合員、また組合員同士が連携することで実現する相互扶助の考え方のもとに成り立っているので、連携型による計画の策定が、組合への求心力、組合事業の活性化を高める働きをもたらす、あるいはそのきっかけを作るのではないかと思っております」(名和氏)

一企業の取り組みでは限界があるが、複数企業、あるいは組合全体が一緒になり、連携して防災・減災に取り組めば、それが大きな力に変わり、事業継続力をより高めることができる。

大阪紙文具流通センターのように、近くにいる同業者同士が手を組み、助け合うことでともに災害から身を守ることは、これからの中小企業が目指すべき防災の形のひとつになるだろう。

単独型の事業継続力強化計画の策定を検討している事業者や防災担当者は、連携可能な企業が近くにいないか、改めて検討することをおすすめする。

名和氏の名刺には、事業継続力強化計画の認定事業者を証明するロゴマークが入っている

  • <事業継続力強化計画の策定に生かせる、3つのヒント>

    1)組合全社ではなく、主要企業で早期認定を目指す
    2)防災・減災対策は、できることから始めてみる
    3)災害時の資金繰りを金融機関に相談する

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