共栄資源管理センター小郡
- 所在地:福岡県小郡市上岩田766
- 業種:一般廃棄物収集業
- 組合員数(従業員数):41名
- ホームページ:https://www.kyoeisigen.co.jp/
1990年(平成2年)2月、福岡県小郡市に家庭ごみの収集運搬やリサイクル業務を行う会社として設立。系列会社としてハウスクリーニングといった生活支援サービスも行うなど、地域に密着した複数のサービスを提供している。地域のインフラにも関わる事業の性質から、災害時や緊急時の対策として事業継続力強化計画(ジギョケイ)を策定。社員のため地域のために、毎年計画を見直しブラッシュアップを図っている。
災害時にサービスを停止させない
地域のインフラとしての同社の役割
小郡市の家庭系のごみの収集運搬やリサイクル業務などを行う共栄資源管理センター小郡にとって、車両などの運搬具は日々の操業に欠かすことのできないもの。災害時に、車両などの運搬具を失えばサービスに直接影響するからだ。
設立から30年、会社がある福岡県小郡市では約13年おきに大きな台風や豪雨災害に見舞われてきた。1991年(平成3年)の大型台風では60名以上の死亡者が出る事態となり、その時、小郡市内だけでも約500台の災害廃棄物を収集したと野﨑氏は語る。
「さらに、2004年(平成16年)には新潟中越地震、翌2005年(平成17年)には福岡西方沖地震と大規模な災害が立て続けに起こり、会社としても何らかの対策をしておかなければと思っていたところに、中小企業基盤整備機構の中小企業に向けたセミナーがあることを知りました」(野﨑氏)
中小企業基盤整備機構の事業継続力強化計画策定セミナーには野﨑氏を含む6名が参加。セミナーの内容を元に事業継続力強化計画について考え、2006年(平成18年)の初回版では、「台風」、「地震」、「火災」などの災害に加え「新型インフルエンザ感染症」も含む4つを対象に策定。しかし、2011年(平成23年)に東日本大震災という未曽有の大災害が起こり、その際に自社で策定している内容では不十分であることを痛感し、2012年(平成24年)に全面的に見直しすることになった。
「災害が発生した場合、当社でも業務が停止したり休止したり、お客様へのサービスが遅延したりということが起こりますが、これは一般の事業者(サプライチェーン)でも当然あり得ること。当社の事業では地域のインフラを担っているため、災害時には自社事業を100%回復させると同時に、災害ごみの廃棄物を収集するという役割があります。事業継続力強化計画に強い関心を持ったのは、こうした社会的な役割によるところが大きいですね」(野﨑氏)

新型インフルエンザ対応の経験で
新型コロナ感染症の初動に対応
2006年(平成18年)に策定した初回版では、台風、地震、火災などの災害時や新型インフルエンザ感染症といった4つのインシデントについて、対応策は作っていたものの手順書までは作っておらず、決して十分なものではなかったと当時を振り返る野﨑氏。 そこで、2012年(平成24年)、福岡県中小企業団体中央会(組合等向けの支援機関)のコンサルタントの指導のもと、4つのインシデントについてそれぞれマニュアルから手順書に至るまで全面的に改定することになったが、この経験がコロナ禍の感染症対策においても活かされることになる。
「文書としても膨大なもので、全ページ100ページぐらいになりました。大変な作業でしたが、それが基本としてあるので、担当者が毎年改定を行っていますが、大きく変わっているものはありません。特に、2020年から新型コロナ感染症がパンデミックになりましたが、新型インフルエンザのマニュアルや手順書があったので初動では十分対応できました」(野﨑氏)
共栄資源管理センター小郡では、このように新型コロナ感染症に対しても、非常に早い段階から策定・運用していたため、事業継続力強化計画(単独型)の認定制度では県内企業の中でも相当早い段階で九州産業局の認定を受けている。
今でも月に1度、産業医に専門的なアドバイスをいただいているが、感染症対策に限らず4つのインシデントのすべてにおいて、全面改定した策定をベースに、必要に応じて改定していると言う。
「かつて筑後小郡地区は大水害があったところ。1953年(昭和28年)のことですから、市が策定したハザードマップがあるのでそれを参考にしています。ここ数年の見直しの時には、西日本豪雨災害などを受けて県や市で防災計画が細かに作られていますから、そちらとの整合性も取りながら改定してきているところです」(野﨑氏)

事業者として強靱な体質を持っている
という評価や皆様への安心につながる
事業継続力強化計画の策定のメリットについて、野﨑氏は次のように語る。
「まずは何よりもサービスを休止・停止しなくてもいいということですね。それから、やはり社員の安全やお客様の安全を第一に考えることによって、社員のロイヤリティも高まるであろうと思っています。社員たちにも災害を意識するということが根付いてきていて、熊本の大地震の時には私を含め約100名の社員が土・日曜日に災害廃棄物の片付けに行きました。こうした活動も、自ずとそういう風土を醸成しているからだろうと考えています」(野﨑氏)
共栄資源管理センター小郡は消防団に4人所属し、最近では県大会に出場し優勝した社員もいると言う。また、昨年大雨で冠水した地域にも社員が自主的に出かけ、住宅の泥かきを行うなど、社員たちの災害に対する意識の高さが伺える。
実際、共栄資源管理センター小郡では定期的に事業継続力強化計画を見直し、改定したものを毎年小郡市役所に提出している。こうした取り組みを続けることで、安心感や事業者としての強靱な体質を持っているという評価につながっているのでは、と語る野崎氏は災害と向き合うことで臆病になってきたことも明かす。
「私のある面での自慢は、この事業を40年間やっていて1日たりとも休止しないことでした。休止しないように事業継続力強化計画も運用していたのですが、2022年9月に起こった台風14号は、1991年(平成3年)の巨大台風と同じくらいの勢力だったため、休止させてほしいと市当局に申し出て、すぐに合意していただきました。その結果、当社にしても九州地区にしても大きな被害はなく、休止の判断をしてよかったと思いました。本件に関する苦情などもおかげさまで1件もなかったと聞いています」(野﨑氏)
2020年から続く新型コロナ感染症については、福岡県内でもクラスターが発生して事業所が閉鎖になったところがあるが、共栄資源管理センター小郡は被災を免れている。
事業継続力強化計画を全く知らない方に説明する際に、どんな言葉で説明するか尋ねるとこんな答えが返ってきた。
「経営者の方にお伝えしたいのは、やはり社員の安全やお客様の安全、会社の資産を守るということは経営者の責任みたいなものですので、やはり事業継続ということが最も社会的責任としては大きいと思っています。企業は社会の公器。だからそのために社員を守り、社員を育成すると同時に、ハードの面も含めた企業資産というものを守って、力強いものに成長させていかなければなりませんし、それが今度は次世代を担う経営者の糧になるのではないのかなと思っています」(野﨑氏)

実際に災害を想定した備え
中小企業だからこそできること
事業継続力強化計画において計画の実効性を高めていくためにしていることを尋ねると、野﨑氏は格言や自身の好きな言葉を用いてこう答えてくれた。
「卵は一つのカゴに盛るなという格言がありますが、基本的に全て供給するものについては、複数確保するようにしています。例えば電話であれば一般的な電話回線のほかに別のケーブルによる回線を使用したり、データの保存はクラウドと自社のハードディスクを使用したり、車庫も2つに大きく分けて万が一火災が起こった際他の車両に被害が及ばないようにしています」(野﨑氏)
さらに、2020年の新型コロナの感染症が拡大した時には、社員の福利厚生施設の拡充と、社員を分散して社内生活できるようにすること、万が一社員の自宅が被災した時には、公民館代わりに寝起きできるようにと、3つの役割を考えて多目的ホールを作ったと言う。
こうしたリスクを回避する取り組みを徹底する野﨑氏だが、実際に災害などによる緊急時の対策にも抜かりはない。
「災害などの緊急時に、コンビニや自動販売機で買い物する際、一番役立つのは500円玉なんだそうです。1,000円札を入れて、お釣りが来なかったらもったいないじゃないですか。できるだけお釣りを少なく、そして10円や100円などよりかさばらないという点から、災害時には500円玉が一番強いそうです。もしもの時には社員に30枚ずつ渡せればと考え、会社の金庫じゃない場所に用意しています」(野﨑氏)
そんな野﨑氏が朝礼で決まって話す、好きな言葉のひとつが「火事は最初の5分、ケガは最後の5分に起きる」というもの。注意して物事に臨み最後まで気を抜かずに行こうという教訓だが、地球温暖化が進み、これまでには想定できないような規模の災害が起きたり、新型コロナ感染症のように新たなインシデントが起きている昨今、正直将来への不安もあると言う。 こんな時代だからこそ、事業継続力強化計画をつくって終わりではなく、常に計画をブラッシュアップしていくことの大切さを語る。このように徹底した姿勢でより実効性の高い計画にしていくことが、会社を守り、事業を継続させることにつながっていくのではないだろうか。
