株式会社エフエーエス
- 所在地:香川県仲多度郡まんのう町宮田724-32
- 業種:運送業
- 組合員数(従業員数):54名
- ホームページ:https://fas-logistic.com/
平成8年1月、穴吹住宅建材株式会社の出荷積込会社として設立。平成9年7月、組織変更により、株式会社エフエーエスとして登記。平成18年3月、本社を現在の所在地へ移転。現在、運送業(物流業)、建設業、倉庫業の3本柱を軸に事業を展開。同社では、運送業として建築資材などを運ぶだけでなく、“運んで、建てる”までを請け負うワンストップのサービスによって、コスト削減や連携の強みを活かし、お客様にさまざまな付加価値を提案している。
災害時における運送業のリスクは
お客様の荷物を運べなくなること
物流業、建設業、倉庫業の3本柱を軸に事業を展開している同社。事業継続力強化計画(以下、ジギョケイ)を策定するに至った経緯を聞いてみると、ある製造業のお客様からBCP対策用の商品(原料)を倉庫で保管してほしいと頼まれたことがきっかけだったと代表取締役社長の内浪達也氏は語る。
「お預かりする原料が相当な量だったので、最初はなぜこんなにも原料を保管されるのだろうとちょっと不思議に思いましたが、今後起こり得る自然災害に備えて保管されたいという理由を知り、当社も自然災害などのリスクに備えなければと思いました」(内浪氏)
さっそく、お付き合いのある商工中金から中小機構をご紹介いただき、ジギョケイについて説明を聞いたところ、災害時における同社のリスクが浮き彫りに。さらに、昨今叫ばれている南海トラフ地震による被害想定地域に香川県も含まれていることから、いつ社員やその家族に災難が及ぶかわからない。そこで、ジギョケイに取り組み、災害リスクへの備えをしておきたかったと言う内浪氏に、ジギョケイの策定にあたり心がけたことについて聞いてみた。
「災害時における運送業のリスクを考えたとき、一番のリスクは、お客様からお預かりした荷物を運べなくなることではないかと考えました。ですから、自社の設備や車両の設備を整えて、いざというときにも荷物をお届けできるようにしておくこと、また、災害でお困りの地域の方々のために活躍できるようにしておくことが、当社にとってすべきことではないかと考えました」(内浪氏)
もちろん、災害が起こった際、真っ先に確認すべきは社員やその家族の安否確認であるが、運送業としてはお届け先となる方々の安否確認にも貢献できると考えたそうだ。

3拠点を連携させることで、
災害時における対応の幅が広がった
ジギョケイの策定に向けて、まずは地方自治体のハザードマップを中心に、同社のグループ全体における災害リスクを明確化したことで、策定への道筋が見えてきたと内浪氏は言う。
「文言などの難しい問題はありましたが、中小機構さんからの明確なアドバイスをもとに作成していったので、思っていたほど難しくはなく、完成させることができました」(内浪氏)
同社が策定したのは、グループ企業間における連携ジギョケイの策定。子会社である岡山県の南部に位置する瀬戸内市と北部にある津山、そして香川県のまんのう町にある本社の3拠点を軸に、有事の際にはそれぞれが連携して素早い復旧、復興を行うことを目指して策定されている。もし香川県で災害があった際には、岡山の拠点から車両や人、情報などをサポートしてもらい、逆に岡山県の北部と南部が災害・被災した場合には、香川の本社から緊急物資の応援や、さまざまなサポートができる体制を整えている。
「グループ企業を含め弊社には3つの拠点がありますが、以前は3拠点を意識してハザードマップを見ることはありませんでした。しかし、連携型のジギョケイを策定したことで、実際に災害が起きた時を想定して、3拠点で連携を図り、より良いかたちで対応できるようになりました」(内浪氏)
環境設備における具体的な災害対策としては、水害時の浸水に備え、倉庫内でお客様からお預かりした荷物に水が及ばないような対策をとっていると言う。また、こうした防災面におけるリスクを知ることができたことで、災害に備えた倉庫の活用法としてお客様に提案できるようになったと、経営面でも一役買っていることが伺える。

策定は社内のコミュニケーションや
お客様の評価につながっている
運送業として災害時に大切な荷物をお客様のもとに運べなくなってしまう、そんな思いからジギョケイの策定に取り組んだ同社。策定の効果について内浪氏に聞いてみた。
「弊社の取り組みについて、嬉しいことにお客様から“そういった観点を持つ協力会社がいるということは私たちとしても誇りです”などとお褒めの言葉をいただくこともあります。また、リスクへの備えについて会社側がきちんと考えているということで、社員たちにもいい影響が出ていますし、実際に社員たちにも防災の意識が高まっているように思います」(内浪氏)
実際、こうした取り組みに対して、社員から「どうしてこういった活動をしているのか?」など質問されることもあり、今まではほとんど実務だけの会話だったのが、ジギョケイ策定を機に社内での会話が広がっていると言う。
また、これまで特に意識していなかった災害リスクについて、災害時に被害を受ける危険な箇所などを社内で明確化したことで、社員との共有が図ることができ、お客様からの信頼も増したように思うと、内浪氏は策定の手ごたえを語る。
「計画の実効性を高めるために、金利優遇についても当然視野に入っているのですが、まずは有事の際のさまざまなリスクに対する備えを優先すべきだと考えました。それに伴って金利の優遇が受けられるというのも、会社にとってはメリットが大きいこと。金利の優遇があるということは当然、設備投資を拡大していけるので、災害対策をさらに発展させていくことができます」(内浪氏)

同社の取り組みを通じて、
人々が夢や希望を持てるように
ジギョケイ策定により社員たちの防災に対する意識の共有と、それを行動に移すための設備や体制を強化した今、同社の取り組みを通じて、人々が夢や希望を持てる会社にしていきたいと、内浪氏は地域貢献や社会貢献への想いや、実際の取り組みについて語る。
「例えば、災害時の避難場所として弊社の倉庫を施設利用していただいたり、弊社の車両を活用していただいたり、また、軽油で動く自家発電機を導入しているので、停電の際には地域の皆さんで使っていただけるように、倉庫を開放しています」(内浪氏)
国土交通省が推奨する「物流総合効率化法」の認定を受けた同社の倉庫において、実際、香川県の三豊市と防災協定を結び、こうした取り組みを実践している。
「これは2022年の2月に三豊市三野町に倉庫を新設したことがきっかけでした。大きな施設ができたことで、近隣の方たちに不安を与えるのではなく、地域の方たちが寄り添える施設にするという思いを、三豊市さんと連携を図ることによって明確化することができました」(内浪氏)
運送業(物流業)、建設業、倉庫業の主軸の事業に加え、リサイクル材を利用し空間をプロデュースする事業や、アパレル事業、ロボット技術を活用した事業など、実に幅広い事業に取り組む同社だが、そこにもリスク分散の意味が込められていると言う。
「2020年にコロナ禍になり、経済の影響を多大に受けるようになりました。さらに今後起こり得る災害のリスクを考えたときに、本当に1つの事業だけでは立ち行かなくなると思い、さまざまなリスクに備えるために、事業のポートフォリオでは裾野を広げるということを意識して、幅広い多様性のある事業の拡大を図っています」(内浪氏)
こうした社長の取り組みについて、代表取締役会長の内浪博文氏はこう語る。
「災害事情として、これまで南海トラフ地震についても香川県という地域柄それほどの危機感を持っていませんでした。ところが、今の社長はそういったところに目をつけて、それを実行していく様子を見て、やはり非常に大事なことだと感じました。2年前に私が社長を退き、現社長がこういった取り組みをしてくれているということは会社にとって非常にありがたいことだし、今後弊社のお客様方、またエンドユーザー様にご迷惑をおかけしないような事業になっていくのではないかと感じております」(内浪博文氏)
今後の展望として、香川県の三木町に本拠地を構える有限会社南商事運輸さんと企業の連携を図り、香川県内で東は南商事運輸さん、西はエフエーエスというかたちで、香川県の東西を結べるようにしたいと、会長からバトンを受け継いだ社長(内浪達也氏)の構想は尽きない。
