株式会社エヌ・シー・ピー
- 所在地:岡山県岡山市北区下伊福本町1-33
- 業種:サービス業
- 組合員数(従業員数):18名
- ホームページ:https://www.ncp.co.jp/
スポーツ施設の運営会社として1980年9月に創業。現在は、総合フィットネスクラブ「エイブルスポーツクラブ」を岡山と広島で1店舗ずつ、24時間営業のフィットネスジム「W-FIT24」を中国地方で7店舗運営。さらに、岡山市の指定管理事業として「御津スポーツパーク」、総社市の指定管理事業として「総社市スポーツセンター等体育施設」を担当。「Next quality of life」をモットーに、人々がよりよく生きていくために、暮らしの「品質」を健康面から高めていくことのサポートをしていくとともに、人々の暮らしに、「健康」をKey wordとしていろいろなカタチで、新しい品質の創造をめざしている。
新型コロナウイルスの流行は、
同社にとって大きな災害だった
2020年に起こった新型コロナウイルスの流行。日ごとに感染拡大する脅威に、事業継続の危機に立たされた会社は少なくない。岡山と広島を中心にフィットネスクラブ事業を展開する株式会社エヌ・シー・ピーが事業継続力強化計画の策定に乗り出したのも、コロナ禍でどうやって事業を継続させていくかと思案したことがきっかけだったと前村氏は語る。
「接触感染、飛沫感染するということで、接客業などを中心にさまざまなお店や会社が深刻なダメージを受けましたが、“フィットネスクラブから感染が広まった”などという報道もあり、弊社も大きな打撃を受けました。これも大きな災害だと考え、とにかく事業を継続させるための方策を考えていたところに、中小機構さんから事業継続力強化計画のことを教えてもらいました」(前村氏)
お客様が安心・安全にクラブを利用していただけるように、早速さまざまなコロナ対策をとってきた同社。計画策定への取り組みは、自分たちのコロナ対策がしっかりできているか、それを見直すためだったそうだが、お客様の安全を考えたとき、2018年7月に岡山や広島を襲った「西日本豪雨」を思い出し、前村氏は自然災害への備えも強化しようと考えたそうだ。
「きっかけはコロナでしたが、数年前には西日本豪雨がありましたし、こうした自然災害も無縁ではないと思いました。特に広島のクラブは山の斜面の中腹にあるので、土砂災害などには改めて気をつけなくてはいけないということに気づきました」(前村氏)

一番はお客様に安心して
通ってもらえる環境づくり
早くからコロナ対策に取り組んできた同社だが、明確な基準が整備されるまでは手探りの状態で、まずは「消毒をする」「距離をおく(密を避ける)」ということで、誰かが使用したあとはこまめに消毒したり、器具と器具の間にパーティションを置いたりして対策をとっていた同社。その後、日本フィットネス協会が基準を打ち出したあとは、それに基づいて対策していったと前村氏は言う。
「とにかく換気が大事ということだったので、最初は窓を全開にしてエアコンをかけていましたが、それもどうかなと思っていて、その後、ジムやスタジオ内に“換気システム”を導入しました。もともと30人入れたスタジオがコロナ禍の利用制限で半分の15人まで減らしていましたが、システム導入後は、様子を見ながらですが、少しずつ参加いただける人数を増やしていっています」(前村氏)
前村氏に、策定にあたり心がけたことを尋ねると、やはり計画はコロナへの対策がメインで、“お客様に安心して通っていただける環境づくり”を一番に心がけたそうだ。また、クラブが対策の一環として行った「検温」や「アルコール消毒」などコロナ禍におけるクラブのルールやあり方が定まっていったそうだが、そこにはお客様の理解と協力が大きかったと言う。
「お客様の協力があり、対策の土台が整ってきたので、クラブをお休みされているお客様にも安心して戻ってきていただけるように、しっかりとコロナ対策している様子をSNSなどで発信しました。それが口コミで広がり、少しずつ回復に向かっていきました」(前村氏)
利用者の減少は経営を直撃すると危機感を覚えた前村氏は、従業員スタッフへの対策の徹底はもちろん、レッスンにあたるインストラクターは特にお客様と距離が近いため、やむをえず県外に出かけたインストラクターは一定期間自宅待機とするなど、かなり気を遣いながら運営していたと当時を振り返る。

何かあった時にどうするか?
を考え直すきっかけになった
事業継続力強化計画策定のメリットについて、コロナ対策の他にも、「何かあった時にどうするか?」ということを考え直すいい機会になったと言う前村氏。実際、西日本豪雨の際は、直接大きな被害はなかったそうだが、集中的な雨風によって浸水や、雨が吹き込んでパソコンが濡れてしまったと言う。
「倉敷中庄にある24時間のジムでは入口のドアのぎりぎりまで水がきましたし、スタッフのなかには自宅の1階が浸水してしまった者もいました。また、設備も古く、毎年雷が発生すると電話が不通になってしまうため、ネット回線の電話に切り替えました」(前村氏)
実際に何かあった時、現場で働くスタッフがお客様を安全に誘導できるように、同社では以前から避難訓練や消火訓練は行っている。もともと岡山は大規模災害とは縁がない地域で、西日本豪雨を経験するまで災害への意識は低かったのだとか。
「計画を策定したものの、正直まだ社員たちにはそれほど浸透していません。ですが、定期的に行っている経営会議などの場で各店長に呼びかけていくことで、防災に対する啓発活動の一環になっていると感じています。今後予想されている大地震やミサイルの脅威など、本当に何が起こるかわからない時代ですから、防災への備えについて定期的にチェックすることはもちろん、ニュースや各団体様からの情報を入手しながら、さらに対策していこうと思っています」(前村氏)
少しずつではあるものの策定の手ごたえを感じていると言う前村氏。事業継続力強化計画を策定するには人手不足などでハードルが高いと感じている人も多いため、補助金や支援制度があることをもっと知ってもらう必要があると言う。

お客様を楽しますには
まず自分たちが楽しむ
コロナ禍となったこの2、3年、本当にいろんなことに悩まされてきた前村氏だが、計画を策定したことで、次にまたコロナのような状況が発生した時には落ち着いて対処できると前向きだ。また、利用者の減少で経営の危機も感じたことから、会社を継続させていくためにも新しいことへのチャレンジの意欲をのぞかせる。
「コロナ禍での経験から、会社を継続させていくためには何か新しい事業に参入し、経営面でのリスクヘッジを考えなければいけないと思いました。あくまでもフィットネスを軸に、フィットネスと親和性の高いものとしてゴルフや飲食などの事業をはじめ、アウトドアやサウナなど今流行っているものに着目しながら、いろんな可能性を探っていきたいと考えています」(前村氏)
同社の社名であるエヌ・シー・ピーはNetwork Confidence Progressの頭文字をとったもので、そこには“人とヒトとの繋がりを大切にして、お客様に「信頼される」サービスを提供するために、時代にあったニーズに向け「絶え間なく進歩」していく”という意味が込められている。そこで、前村氏に、事業を継続していく上で大事にされていることを聞いてみた。
「岡山県内には歴史のあるフィットネス企業がたくさんある中で、弊社はちょっと特殊な存在のようで、よく周りの方々から、とんがったこと・面白いことをしているね、と言っていただくことがあります。若いスタッフが多く楽しむことに積極的ですが、お客様に楽しんでいただくためにはまず自分たちが楽しむということを大事にしています」(前村氏)
実際、コロナ前から「暗闇フィットネス」というスタジオの照明を落とし、クラブハウスのような雰囲気でフィットネスを行っているが、非日常的な空間がお客様に人気だそうだ。非日常の雰囲気の中で踊る楽しさはもちろん、暗いから隣の人を気にせずに済む、自分が踊れていなくても周りに見えないから自信を無くさずに楽しめるといったメリットがあるのだと言う。
首都圏で流行ったものをいち早くキャッチして自分たちも取り入れていく、こうした姿勢も同社の“絶え間ない進歩”につながっているのだろう。
