組合の「助け合い」を強みに福岡県中央会が進める事業継続の取り組み

福岡県中小企業団体中央会

会長
山田 登三雄
業種
中小企業支援機関(組合支援)
所在地
福岡県福岡市博多区吉塚本町9番15号 福岡県中小企業振興センター9階
従業員数
29人
拠点
本所・福岡支所(福岡市)、北九州支所(北九州市)、筑後支所(久留米市)、筑豊支所(飯塚市)
ホームページ
https://www.chuokai-fukuoka.or.jp/
中小企業等協同組合法に基づき設立された、中小企業の組合組織を支援する総合支援機関です。組合の設立・運営支援や経営改善支援、各種施策の推進を通じて、組合の相互扶助機能を最大限に活かし、福岡県内の中小企業の振興と連携強化、持続的な経営基盤の確立に取り組んでいます。
福岡県中小企業団体中央会では、2023年度から、組合を対象とした連携型の事業継続力強化計画の策定支援を進めています。3年間の事業として実施しており、これまでに計画に参加している連携事業者も含めて累計1,814者の計画作成を支援してきました。この取組の背景には、組合の持つ「相互扶助」の機能があります。組合員同士が助け合うという性質が、連携型の事業継続力強化計画と相性が良いと考えられたことから、福岡県と協議を重ねて事業化されました。中央会では、専門家と連携しながら組合単位での計画策定を支援し、地域の中小企業の災害対応力向上を目指しています。

セミナーから始まったBCP普及の取り組み

同中央会では、本事業が始まる以前から、毎年、組合および組合員向けにBCPセミナーを開催し、啓発活動を行っていました。しかし、セミナーのみでは十分な効果が得られているのか疑問があり、より実践的な支援の必要性を感じていたといいます。
「BCPの普及は以前から必要だと感じていましたが、セミナーだけでは実際の取組につながりにくいという課題がありました」(福岡県中小企業団体中央会 秋月氏)
そのため、福岡県に対して支援の必要性を訴えてきましたが、当時は県内におけるBCPへの関心が必ずしも高くなく、なかなか予算化には至りませんでした。そのような中、事業継続力強化計画の認定制度が広がり始めたことを契機に、3年前、ようやく県の予算事業として支援事業がスタートしました。

専門家の育成からはじめた策定支援

 支援を開始するにあたっては、まず専門家の育成から取り組みました。リスク管理に関心を持つ地元の中小企業診断士を6名募り、中小機構九州本部において連携型の事業継続力強化計画の策定支援を担当していたアドバイザーに講師を依頼しました。初年度は、半日ずつ2回の座学研修を実施し、「支援の仕組みと進め方」について学んだ後、6か所の組合支援においてアドバイザーに同行する形で、実際の支援方法を見て学ぶことでノウハウを身に付けてもらいました。
一度支援の進め方を実地で学ぶことで、その後はそれぞれが単独で支援を行えるようになったそうです。
また、支援の際には、組合および組合に参加する事業者の状況に詳しい同中央会の職員も同行し、現場ニーズの把握や支援内容の充実に役立てています。

組合の会合を活用した計画づくり


 同中央会の策定支援の特徴は、支援対象が組合である点にあります。
支援の進め方としては、まず、事業継続力強化計画の認定制度や策定方法について理解していただくため、組合の総会や理事会など、組合員が集まる機会を活用して制度説明などを行います。その後、認定取得を目指すこととなった組合に対して、最大4回の訪問支援を実施します。
最初の訪問では制度の概要や全体のスケジュールを説明し、次の訪問では課題の整理や計画作成を進めるなど、段階的に計画を作り上げていきます
「いきなり計画作成に入るのではなく、最初に制度の目的やメリットをしっかりと説明する『ゼロ回目』を設けたことが効果的でした」(秋月氏)
支援のために組合を訪問する際の組合側の参加者は、さまざまなケースがあるといいます。
「一般的には組合役員の方々が出席されることが多いですが、理事会メンバーと若手組合員で構成する二世代のメンバーを中心に進めたケースもあります。青年部など、実際に復旧作業の前線に立つ若い方々も加わることで、意思決定がしやすくなるという効果もあります。また、事務局主導で作成したケースもありますが、プロジェクトチームや委員会のような形で人を集め、会議に臨んだケースの方が多いです。久留米市の土木関係の組合では、毎回10人ほどが集まり、議論が活発で時間が足りないほどでした」(秋月氏)
事業継続力強化計画策定を決定した総会の様子(久留米市土木協同組合)

周知活動と組合の結束を高める効果

同中央会では、3年間の事業の中で、組合への計画策定支援に加え、1年目および2年目には外部講師を招いたセミナーを開催しました。災害対応を身近な課題として考えるきっかけづくりにつなげてもらうことを目的としており、有名企業を事例講師として招くなどの工夫も行っています。
3年目となる今年度(2025年度)は動画を制作しており、3月下旬にホームページへ掲載できるよう、現在、収録作業を進めているところです。ここでも、事業継続力強化計画に詳しく、中小企業庁の委員も務める大学教授に出演いただくなどの工夫をしています。
事業継続力強化計画の策定による効果としては、計画策定の過程において、組合員同士の議論が活発に行われるようになる点が挙げられます。
「事業継続計画をきっかけに、組合員同士の結束が強まったという声もあります」(秋月氏)。
さらに、訓練などを通じて、組合員が以前より集まりやすくなったという声も聞かれており、計画作成そのものにとどまらない効果が見られています。

普及と実効性の両立が今後の課題

3年間の事業は、当初目標であった1,500件を上回る件数に到達したことから、翌年度以降の継続方針が決定しています。4年目を迎えるにあたり、これまでの普及フェーズから、計画の実効性をより高めるフェーズへと移行し、今後は支援能力の向上を図りながら、質の高い計画づくりに取り組んでいきたいと考えています。
「補助金の加点などをきっかけに計画を作成するケースもありますが、そこから実行力のある計画へと高めていくことが重要です」(秋月氏)。
また、計画策定後のフォローアップが十分に体系化できていない点も課題として挙げられています。今後は、更新のタイミングを活用しながら、BCPへの発展や計画の見直しにつなげていくことが方向性として考えられています。
本事例のポイント
福岡県中小企業団体中央会の事例のポイントは、組合の相互扶助という特徴を生かし、連携型の事業継続力強化計画を普及させている点にあります。専門家と中央会職員が連携し、組合の会合などを活用しながら段階的に支援を進めることで、多くの組合における計画策定につなげてきました。また、計画作成の過程を通じて組合員同士の議論が活発化し、組合の結束が強まるという効果も生まれています。専門家の育成、セミナーによる啓発、個別組合への支援、動画の作成など、段階的に支援内容を充実させてきた点も特徴です。
今後は、策定した計画の実効性を高めるための支援や、BCPへの発展が課題とされています。これらの取組は先行事例として、今後同様の支援を目指す機関にとって多くの示唆を含んでいます。