四者連携で島の事業者を守る、天草発の伴走型防災支援体制「天草市商工会」
天草市商工会
- 業種
- 経済団体(商工団体)
- 所在地
- 熊本県天草市本渡町本渡2547-2
- 職員数
- 25人
- 拠点
- 本所(天草市本渡町)、有明支所(天草市有明町)、御所浦支所(天草市御所浦町)、 倉岳栖本支所(天草市倉岳町)、新和支所(天草市新和町)、五和支所(天草市五和町)、 天草支所(天草市天草町)、河浦支所(天草市河浦町)
- ホームページ
- https://amasho.net/
海に囲まれた島々からなる熊本県天草市に所在し、会員は約900名を擁します。2009年に8つの商工会が合併して誕生し、2021年3月、本渡商工会議所、牛深商工会議所と事業継続力強化支援計画の認定を取得しました。天草市(自治体)、本渡商工会議所、牛深商工会議所とともに「天草市災害等対応経済連携委員会」を構成し、地域の事業者の防災・事業継続支援に取り組んでいます。
海に囲まれた天草は、台風、高潮、土砂崩れなど、自然災害のリスクと常に隣り合わせの地域です。また九州本土と橋でつながっているという土地柄、災害時には孤立しやすく、備えが必要という特徴もあります。こうした背景もあり、天草市商工会は、自治体や地域の商工会議所と四者連携の委員会を立ち上げ、事業継続力強化計画(ジギョケイ)の普及・策定支援に取り組んできました。セミナー形式から伴走型のワークショップへと支援方法を進化させてきたその歩みには、これからジギョケイに取り組む支援機関にとっても多くのヒントがあります。
一つの自治体に複数機関 だからこそ生まれた「横連携」
天草市は、2006年3月に旧天草郡の8つの町と2つの市が合併して誕生した自治体です。そのため、1つの市内に商工会と商工会議所が複数存在しています。天草市商工会では、この特性を活かし、天草市(自治体)、本渡商工会議所、牛深商工会議所、天草市商工会の四者で「天草市災害等対応経済連携委員会」を組織しました。
「1つの自治体の中に複数の支援機関があると、それぞれバラバラに動いてしまい、支援がぶつ切りになってしまいます。横断的に連携することで、災害時にも助けを求めやすくなりますし、セミナーやワークショップも市全体で取り組んだ方が効果的です」(天草市商工会経営支援課 山田課長補佐)
この委員会は2021年3月に事業継続力強化支援計画を申請し、以来、ジギョケイの普及・推進と災害発生時の情報共有・連携を担ってきました。2025年度には5年の計画期間を経て2回目の更新申請を行い、取り組みの継続を図っています。自治体の商工業担当課が有事の際の情報取りまとめを担うなど、行政との連携による強みも発揮されています。
「1つの自治体の中に複数の支援機関があると、それぞれバラバラに動いてしまい、支援がぶつ切りになってしまいます。横断的に連携することで、災害時にも助けを求めやすくなりますし、セミナーやワークショップも市全体で取り組んだ方が効果的です」(天草市商工会経営支援課 山田課長補佐)
この委員会は2021年3月に事業継続力強化支援計画を申請し、以来、ジギョケイの普及・推進と災害発生時の情報共有・連携を担ってきました。2025年度には5年の計画期間を経て2回目の更新申請を行い、取り組みの継続を図っています。自治体の商工業担当課が有事の際の情報取りまとめを担うなど、行政との連携による強みも発揮されています。
セミナーから伴走型ワークショップへ 「一緒に作る」支援の転換点
委員会発足後の最初の2年間は、外部講師を招いたセミナー形式でジギョケイの普及を図りました。しかし、セミナーに参加しても実際の申請まで至らない事業者が多いという課題に直面します。そこで3年目からは、経営指導員自身が講師となり、事業者と一対一に近い形で計画を作成するワークショップ形式へと切り替えました。
「最初の2年間で指導員側がジギョケイの作り方への理解を深められたことが大きかったです。その後、指導員が人事異動で交代しても引き継ぎができる基盤ができました」(山田氏)
「最初の2年間で指導員側がジギョケイの作り方への理解を深められたことが大きかったです。その後、指導員が人事異動で交代しても引き継ぎができる基盤ができました」(山田氏)
ワークショップでは複数の事業者が集まり、それぞれの計画を個人ワークで進めますが、1事業者あたり1名の指導員がつく手厚い体制を取っています。電子申請の段階で離脱してしまう事業者も少なくないため、最後まで一緒に伴走しながらサポートできる点もこの形式の利点です。現在は外部講師への謝金も不要で、自走化を実現した支援体制といえます。
災害対策で深まる商工会への信頼
ジギョケイの策定支援は、事業者にとっての防災対策にとどまらず、商工会にとっても新たな価値を生み出しています。
「災害対策という、今まであまりなかった切り口で話をする中で、事業者との信頼関係が築きやすいと感じます。そこから他の経営支援の話にも自然と広がっていく。商工会としての支援ツールが一つ増えたという実感があります」(山田氏)
策定を働きかける際の切り口も工夫しています。補助金の加点を目的とする事業者にはそのメリットを伝え、防災意識の高い事業者には「最近災害が増えているので考えてみませんか」と声をかけます。熊本地震、令和2年7月豪雨(球磨川豪雨)、そして令和7年8月豪雨(天草地方)と、この10年間で災害が相次いでいることもあり、事業者も前向きに受け止めるようになっているといいます。
一方で、策定後のフォローアップが課題となっているそうです。計画を作成した時点では意識が高くても、時間とともに関心が薄れてしまうケースは少なくありません。また、令和7年8月豪雨を経験し、もっとジギョケイを普及させられていれば、被害を軽減させることができたのではないかという反省もあり、ジギョケイをまだ策定していない事業者に必要性を訴えることの重要性を改めて感じたといいます。
「災害対策という、今まであまりなかった切り口で話をする中で、事業者との信頼関係が築きやすいと感じます。そこから他の経営支援の話にも自然と広がっていく。商工会としての支援ツールが一つ増えたという実感があります」(山田氏)
策定を働きかける際の切り口も工夫しています。補助金の加点を目的とする事業者にはそのメリットを伝え、防災意識の高い事業者には「最近災害が増えているので考えてみませんか」と声をかけます。熊本地震、令和2年7月豪雨(球磨川豪雨)、そして令和7年8月豪雨(天草地方)と、この10年間で災害が相次いでいることもあり、事業者も前向きに受け止めるようになっているといいます。
一方で、策定後のフォローアップが課題となっているそうです。計画を作成した時点では意識が高くても、時間とともに関心が薄れてしまうケースは少なくありません。また、令和7年8月豪雨を経験し、もっとジギョケイを普及させられていれば、被害を軽減させることができたのではないかという反省もあり、ジギョケイをまだ策定していない事業者に必要性を訴えることの重要性を改めて感じたといいます。
「予測できない水災」への危機感と、平時の経営活動への認定の意義
天草地域の災害リスクは、台風に伴う高潮や土砂崩れだけではありません。近年はゲリラ豪雨のように、一瞬で水がたまり甚大な被害をもたらす突発的な水災が増えています。
「前の日まで市内でお祭りが開かれていたのに、翌々日には大雨で災害が起きる。誰も予想していなかった状況でした。水災は台風のようにある程度予測できるものというイメージがまだ強いですが、地震のように突発的に来るものになりつつあります」(山田氏)
こうした厳しい環境の中でも、ジギョケイを前向きに活用する事業者の姿があります。ある養豚業者は、事務所に「事業継続力強化計画認定」の看板を掲示し、企業の信用力や安心感のアピールに活用しています。認定を単なる手続きではなく、自社の強みとして捉える事業者が少しずつ増えていることは、取り組みの確かな成果といえるでしょう。
「前の日まで市内でお祭りが開かれていたのに、翌々日には大雨で災害が起きる。誰も予想していなかった状況でした。水災は台風のようにある程度予測できるものというイメージがまだ強いですが、地震のように突発的に来るものになりつつあります」(山田氏)
こうした厳しい環境の中でも、ジギョケイを前向きに活用する事業者の姿があります。ある養豚業者は、事務所に「事業継続力強化計画認定」の看板を掲示し、企業の信用力や安心感のアピールに活用しています。認定を単なる手続きではなく、自社の強みとして捉える事業者が少しずつ増えていることは、取り組みの確かな成果といえるでしょう。
まず一回、事業者と一緒に作ってみてほしい
天草市商工会の取り組みは、四者連携による効率的な体制づくり、セミナーから伴走型への進化、そして指導員の自走化と、段階的に支援の質を高めてきた好例です。最後に、これからジギョケイの策定支援に取り組む支援機関へのメッセージを伺いました。
「セミナーだけで終わらせず、ぜひ年に1回でも事業者と一緒に計画を作ってみてほしいです。事業者は計画づくりに慣れていないのでしんどく感じがちですが、商工会の指導員なら十分に支援できる内容です。大事なのは全部作ってあげることではなく、事業者の情報を引き出すこと。災害という重いテーマですが、『この被害が起きたらやばいですね』なんて笑いながら話せる場面も意外と多い。前向きに楽しく話しながら作ることで、事業者にとっても自分にとっても価値のあるものができていきます」(山田氏)
「セミナーだけで終わらせず、ぜひ年に1回でも事業者と一緒に計画を作ってみてほしいです。事業者は計画づくりに慣れていないのでしんどく感じがちですが、商工会の指導員なら十分に支援できる内容です。大事なのは全部作ってあげることではなく、事業者の情報を引き出すこと。災害という重いテーマですが、『この被害が起きたらやばいですね』なんて笑いながら話せる場面も意外と多い。前向きに楽しく話しながら作ることで、事業者にとっても自分にとっても価値のあるものができていきます」(山田氏)
- 本事例のポイント
- 本事例のポイントは、大きく3つと考えます。第一に、島という地理的制約のもと、かつ1つの自治体内に複数の支援機関が存在するという特性があるなかで、四者連携の委員会組織を設けることによって、発災時に自治体と商工団体で協力して対応する体制が構築でき、平時には地域の事業者の防災意識を高める取り組みを行えていること。第二に、セミナー形式から経営指導員自身が講師を務める伴走型ワークショップへと支援方法を進化させ、外部講師に頼らない自走型の体制を実現したこと。第三に、ジギョケイの策定支援を単なる防災対策としてだけでなく、事業者との信頼関係構築や経営支援全般への入口として活用している点です。指導する側の人材育成も行いながら、段階的により成果の出せる支援へと質を高めてきたプロセスは、これからジギョケイの普及に取り組む支援機関にとって参考になる取り組みといえます。