気づきから実行へつなぐ支援 — 埼玉県産業振興公社が進めるジギョケイ普及

公益財団法人埼玉県産業振興公社

理事長
秋友 一広
業種
経済団体(公益法人)
所在地
埼玉県さいたま市大宮区桜木町1丁目7番地5 ソニックシティビル10階
職員数
50人
拠点
大宮事務所(さいたま市大宮区)   北与野事務所(さいたま市中央区)
ホームページ
https://www.saitama-j.or.jp/
1973年に埼玉県が設立した公的産業振興支援機関。現在は県内中小企業や創業者に対し、経営相談、専門家派遣、人材育成、販路開拓、DX支援など幅広い支援を行っています。企業の成長段階に応じた総合的な支援を展開しています。
埼玉県産業振興公社では、事業継続力強化計画の普及および策定支援を通じて、中小企業の災害対応力向上に取り組んでいます。セミナーやワークショップを入口として、関心を持った企業に対して個別支援(オンラインZoom又は対面支援)を行い、計画の作成から認定取得までを一貫して支援する仕組みを整えています。事業者のニーズに応じて、単独型・連携型の両方の支援を行っています。
埼玉県は比較的災害が少ない地域であると認識されていることから、BCPに対する意識が必ずしも高いとは言えない状況があります。そこで公社では、金融機関や商工団体とのネットワークを活用した普及活動を行い、企業に対して事業継続力強化計画の必要性を伝える取り組みを進めています。

セミナーから個社支援へつなぐ仕組み

支援の流れは、セミナーやワークショップから始まります。
埼玉県内の金融機関、商工団体、業界団体などと連携しセミナー・ワークショップ(以下セミナー等)を開催しています。参加者は連携機関を通じてセミナー等を受講し、関心を示した企業に対して、個別支援へとつなげています。なお、セミナー等は年間で約15回開催しています。
個別支援は、主に策定支援の経験が豊富な3名の「BCPアドバイザー」が担当しています。
「まずは事業継続力強化計画を知ってもらうことが入口です。その後、関心を持った企業をフォローし、個社支援につなげていきます。セミナー等で関心を持ってもらっても、企業は日常業務に戻ると対応が後回しになりがちです。そのため、公社では電話やメールによるフォローを行い、計画作成や申請までつなげるよう支援しています。」(埼玉県産業振興公社 藤井氏)

計画作成から電子申請まで伴走支援

個別支援では、計画作成だけでなく、電子申請までサポートすることを重視しています。
アドバイザーは事前に企業情報を確認し、ハザードマップなどを用いて災害リスクを把握したうえで支援に入ります。計画作成にあたっては、1〜1.5時間程度の打ち合わせを2回~3回行い、その後、電子申請の入力をサポートする流れが基本です。
電子申請は中小企業にとって難しい場合も多く、申請段階で手が止まってしまうケースも見られます。そのため、申請画面への入力や修正対応までフォローし、認定取得まで伴走することを重視しています。
支援対象となる企業については、業種を問わず多くの企業に策定支援を行っています。
「製造業や建設業など、幅広い業種の企業に支援を受けていただいており、結果として業種が多岐にわたっている印象です。」(埼玉県産業振興公社 藤井氏)
一方で、埼玉県では災害リスクに対する危機感が比較的低い企業も見受けられることから、これまで様々な取り組みを行ってきました。
こうした取組の結果、2025年度の延べ支援者数は、約220者に上るとのことです。
支援風景

普及活動の課題と工夫

埼玉県では、県内事業者のBCP普及率を高めるために、2025年に「彩の国BCPサポーター」制度を立ち上げ、県全体でBCP策定を支援する取組を進めています。こうした取組が功を奏し、2025年度には多くの支援件数を計上することができました。一方で、セミナー参加者の確保が年々難しくなっているという課題も生じています。
セミナーの参加者を増やしていくために、BCPへの関心を高めていくことも併せて行う必要があります。
そこで、公社では普及促進のため、20223月以降20263月まで4回にわたり『事業継続力強化計画策定支援事例集』を発行しました。これを公社の本事業を紹介するページに掲載し、企業への営業活動に活用したりするなど、普及方法についても工夫を重ねています。

今後の課題は実行段階への展開

 公社では、中小企業のBCP支援として、事業継続力強化計画の普及・策定支援に加え、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」に基づくBCPの策定支援や、「国土強靱化貢献団体認証(レジリエンス認証)」の認証支援についても実施しています。
事業継続力強化計画については県の予算により実施しており、無料で支援を行っていますが、BCP策定支援やレジリエンス認証支援については、公社の独自事業として有料で実施しています。事業継続力強化計画からこれらの支援につなげられるよう、公社全体としては幅広い支援メニューを備え、企業のニーズに応じた支援を行える体制を整えています。
また、事業継続力強化計画の内容を充実させるための工夫も行っています。策定時の参考として活用してもらうため、「業種別の計画の記載例」を作成し、支援の際に企業へ配布しています。これらの記載例は、公社のWebサイト(https://www.saitama-j.or.jp/pages/157/)にも掲載しており、誰でも参照することができます。

事業継続力強化計画の普及や策定支援が軌道に乗る一方で、今後の課題も見えてきたといいます。
「ジギョケイの内容を理解する企業は増えてきましたが、実際の訓練や実行までつなげていくことは、これからの課題だと思っています。」(埼玉県産業振興公社 藤井氏)
今後は、BCPサポーター制度や金融機関などとの連携を更に強化しながら、継続的な支援体制を整えていく方針です。
本事例のポイント
埼玉県産業振興公社の事例の特徴は、セミナーやワークショップを入口として、個社支援へとつなげる体系的な支援モデルである点です。県内の金融機関や商工団体、業界団体などと連携しながら企業への普及活動を行い、計画作成から電子申請までを伴走型で支援しています。
また、電子申請のサポートや業種別の取組事例の提供など、計画内容の充実や確実な認定取得に向けた丁寧な支援を行っている点も参考になります。
県の支援機関が中心となり、県内の支援機関と連携した充実した支援体制や、支援内容における工夫など、他の支援機関にとても多くの示唆を含む事例となっています。