ヒト・モノ・カネ・情報として計画を立てる~会社の4大経営資源を考える~

経営資源とは

企業経営をするうえで役立つ要素や能力を経営資源と呼びます。なかでもヒト、モノ、カネ、情報は「4大経営資源」といわれています。

4つの経営資源のうち、モノとカネと情報については、ヒトが活用することによってはじめて資源となることから、最も重要な経営資源は「ヒト」だと考えられます。どんなに機械化が進もうと、どんな最先端の設備や機器が揃えられようとも、少なくともスタートボタンを押すなど、操作するヒトがいないことにはモノは意味をなしません。優秀な人材を確保できるかどうかは企業経営を大きく左右する重大事です。それだけに企業の成長はもちろん、事業継続においてもヒトを大切にすることは非常に重要になってきます。

「モノ」には製品もあれば、製品づくりに活用される機器類もあります。また、自然災害などに備えるという点では、自家発電装置、排水ポンプ、火災報知器、スプリンクラー、止水板、制震・免震装置なども大切な経営資源です。

「カネ」は経営資金。資金に事欠く状態だと、優秀な人材の確保も、施設・設備の整備も思うにまかせません。必要な資金を調達し、目的達成に必要なところに適切に投資を行うことが重要です。

「情報」は、ITが発達したことで経営資源としての重要性が注目されるようになりました。企業が持つノウハウ、顧客データのほか、地域やコミュニティとのつながりなど、無形の資産も多分に含まれます。ビッグデータを分析・活用し、一見無関係に見える情報を関連付け、経営に資する情報とするなど、扱い方次第で情報の価値はどんどん増します。契約書には多くの場合、情報の取り扱いに関する一項が入っているように、情報は非常に重要な経営資源です。

4大経営資源のリスクと対応

事業継続力強化計画を策定する上でも、4大経営資源は重要であり、それぞれについて災害発生時の影響と対応策を考える必要があります。以下に4大経営資源それぞれについて、災害時の対策を行っていたA社と対策を行っていなかったB社を比較しながら見てみましょう。

ヒト

従業員の安否確認

A社
従業員のメールリストを作成し、指揮命令体制を整えていた。
↓
地震発生時に安否確認メールを一斉送信し、従業員からの返信で安否を確認できた。災害時の役割が決めてあったので、すみやかに混乱なく対策本部を立ち上げ、その後の指示を出すことができた。
B社
従業員の緊急連絡先リストが作成されていなかった
↓
災害時、各自の判断で避難することになった。無事避難したのか、建物内に取り残されているのかが不明で、安否確認に手間取った。役割分担、指揮命令系統も確立されていなかったので、被害状況の把握もできず、顧客の問い合わせにも答えられず、信用を損なってしまった。

多能工化の推進

A社
特定の従業員への作業の偏りが生じるのを防ぎ、
さまざまな業務をこなせるよう多能工化を進めていた
↓
災害が発生し、出勤できない従業員が出たが、他の従業員がフォローできたことで業務の滞りや納品の遅延を防止できた。
B社
従業員ごとに業務を固定化し、多能工化を進めていなかった
↓
災害発生時、欠勤する従業員が出た。欠勤者が担当していた業務の内容を把握し、業務をフォローできる従業員が他にいなかったため、業務が停止してしまった。

モノ

電源設備の高所配置

A社
電源設備を高所に配置していた
↓
事務所や店舗が浸水しても冷蔵庫用の電源が確保されていたので、早期に営業再開ができた。
B社
電源設備の災害対策を行っていなかった
↓
豪雨によって店舗が水没。冷蔵庫用電源が使えなくなり、保管されていた商品はすべて廃棄処分になってしまった。冷蔵施設等を交換・修理し、営業再開にこぎつけるまでに相当な時間と資金を要した。

事務機器等と固定

A社
棚、什器、机、パソコンなどを固定していた
↓
大きな地震でも事務所内で棚や机類が倒れたり、散乱することもなく、被害は軽微にとどまり、ケガ人も出なかった。
B社
棚、什器、机、パソコンなどを固定していなかった
↓
地震で棚が倒れ、書類保管庫の扉が開いて書類が散乱した。パソコンやモニターが机から落ちて壊れてしまい、壊れた什器やパソコン類の補充資金が必要になった。また、パソコン内のデータ復旧にも時間とお金がかかった。

カネ

災害保険等に加入

A社
水災保険や地震保険に加入していた
↓
津波で被害を受けたものの、復旧費用を保険で確保することができた。従業員を解雇することなく済んだほか、防災・減災意識の高い企業として新入社員の採用活動でプラスに働いた。
B社
地震保険等に加入していなかった
↓
津波で大きな被害を受け、復旧費用の確保に奔走しなければならなかった。銀行の融資を得られたものの、借入金の大きな負担がのしかかることになった。

情報

データのバックアップ

A社
重要データを遠方のグループ会社に常時バックアップする体制を取っていた
↓
地震によってサーバが停止したものの、遠方のグループ会社に重要な設計図面等のデータが保管されていたので、迅速に復旧することができた。
B社
データをバックアップしていなかった
↓
サーバが停止し、事務所内のパソコンやハードディスクも落下等で壊れ、重要なデータを失ってしまい、事業継続に大きな影響が出た。

新たな脅威 新型コロナウイルス

どんなに対策を立てようとも、自然災害等の被害を完全に免れることはできません。とはいえ、事前対策・計画ができているかどうかで、実際に災害に遭った時の被害が大きく違ってくることも確かです。

平時から災害に備えていれば、迅速に復旧し、事業を続けることができます。しかし、事前対策をしていないと、被害額は何倍、何十倍も大きくなり、事業の再開に時間や資金を要するのはもちろん、顧客の信頼を失うことにもなりかねません。最悪の場合には、事業継続をあきらめざるを得ない事態も考えられます。

災害に遭ってから後悔することのないよう、平時の今からしっかりとした事前対策・計画を策定しておきたいものです。