事業継続力強化計画モデル事例集 (中国経済産業局)
策定してよかった!事例からみる「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」

2022.05.19事業継続力強化計画を知りたい

1.はじめに

「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」の認定数が、令和4年3月末時点において40,421件となっていることをご存じでしょうか。ジギョケイの認定制度が令和元年7月に開始されてから約3年が経過しようとしていますが、引き続き多くの中小企業・小規模事業者が認定の取得を目指しています。これまで認定されたジギョケイの中で今回は、平成30年7月豪雨の被災経験を糧に呉広域商工会と地域の事業者が一体となってジギョケイの策定に取り組んだ事例を紹介します。事例では、自然災害等のリスクや被害想定、ヒト・モノ・カネ・情報を守るための具体的対策、計画の推進体制など、最低限抑えるべき点をコンパクトにまとめています。被災経験から得られた教訓を計画に盛り込み、着実に実践している事例を参考に自社のジギョケイに活用したり、支援機関や市区町村にとっても地域の事業者を支援する際の参考になると思われます。

2.地域の特徴

呉広域商工会がある広島県呉市は、瀬戸内海沿岸のほぼ中央に位置し、「海あり山ありの自然と温暖な気候」「海上交通の要所としての歴史」「広島のものづくりを支える高い工業技術」が魅力です。また、呉広域商工会が管轄する地域では、旧呉市を取り巻く広域の沿岸部、島しょ部からなっており、古くから日本最大の生産量を誇る牡蠣やかんきつ類など、瀬戸内の海を取り巻く1次産業と観光資源、鉱工業品・技術が豊かな地域でもあります。

3.過去の被災経験

  • 事務所、工場内の浸水
  • 道路が寸断し従業員の通勤や完成品の納品が困難になった
  • 従業員の自宅が床上浸水
  • 工場近くの土手が崩壊
  • 保管用倉庫の倒壊
  • 土砂崩れで停電が発生

平成30年7月豪雨により呉広域商工会地域一帯では、多数の土石流が発生し、農林水産・各種商工業への大きな被害がありました。また、2級河川の氾濫により市街地での甚大な浸水被害や沿岸部での浸水被害が見られました。さらに、鉄道や道路、上下水道にも大きな被害があり、その回復に時間を要し、人の移動や物流にも影響がありました。被災した事業所は、197者で幅広い業種にわたり、そのうち複数者が廃業に追い込まれました。

全国における土砂災害警戒区域等の指定状況は、令和3年12月31日時点で約68万区域あります。土砂災害警戒区域が指定されていない都道府県はありません。建物の敷地の近く、よく利用する道路沿い等について、一度は確認しておきたいところです。

4.支援機関の取り組み

呉広域商工会と呉市は、平成30年7月の豪雨災害時に地域内事業者の被害状況把握等の初動対応の連携を行った際、商工会職員のマンパワーの不足等から支援業務に係る情報伝達が円滑に行えなかった面が散見されました。また、緊急時の被害状況の把握方法や連携体制について、明文化されたマニュアルが整備されていなかったこと等の教訓を活かし、現在は、被害情報のルート構築、速やかな初動対応を行うため関係機関との連携体制の構築について平時から取り組んでいます。

小規模事業者に対しては、災害リスクの認識や事前対策の必要性を周知することを繰り返し行っています。巡回・窓口相談時においても「ハザードマップ」や「リスクチェックシート」等を活用しながら自然災害等のリスクに対応した共済・保険制度の加入状況の確認を行い、未加入の共済・保険制度に対する説明や保険会社と連携した保険相談会、専門家による普及啓発セミナー、行政の施策の紹介を定期的に行っています。

5.事例企業の概要

事例では、従業員数20名以下の小規模の事業者を紹介しています。業種は、部品製造、金属加工、食品の製造販売、その他の業種について紹介されています。

6.ジギョケイに取り組むきっかけ

  • 過去の被災経験
  • ものづくり補助金の加点措置
  • 商工会からジギョケイの制度紹介

事例企業においてジギョケイに取り組むきっかけは、企業が直接的、間接的に被災経験しており、被災後に「ものづくり補助金」の申請時における加点措置となっていることを商工会のセミナー等で紹介されて取り組んでいます。
ものづくり補助金の優先採択(加点措置)は、ジギョケイの認定を受ける複数あるメリットの1つです。そのほかのメリットには、防災・減災設備に対する税制優遇、低利融資等もあります。

7.計画の特徴・実践内容

【特徴】

  • 全ての従業員が見てわかるように整理
  • 被災時の損害が多額にならない工夫
  • 平時から地域内で支えあう連携体制
  • 防災・減災のとき以外にも活用
  • 自然災害の種類を追加

【実践内容】

  • 計画を掲示板に掲示
  • 従業員の多能工化
  • 製品の保管方法の変更
  • 保険内容の見直し
  • 工場の移転計画に活用

事例企業では、経営者が不在等の際においても従業員のみで実行できる体制や従業員の多能工化を促進、製品の保管場所や保険の補償内容について見直し、商工会や地域の他の事業者とのコミュニケーションを密にすることで連携体制を構築する等、平時の事業運営にも目に見える形で変化が起きています。

会社内外の経営資源の把握、社内レイアウトや動線の見直しは、ジギョケイの平時における経営環境の棚卸と改善効果にあたります。

8.ジギョケイを策定した感想 (事業者の感想)

  • 経営の見直しができた
  • 防災・減災への知識習得につながった
  • 自然災害だけでなく感染症対策ができた

商工会からの専門的なアドバイスを受けることで自然災害や感染症に対する防災・減災の知識の習得の機会となったとの感想が多くありました。また、被災するまでは、自分事として考えることができていなかったが、自らジギョケイを策定することで自社の事業継続への見方や考え方が変化した。そして、多額の資金を使わずにできる点がとても有効だったとの感想があります。

ジギョケイは、防災・減災に焦点を当てているためBCPよりも取り組みやすく、簡単に策定できるのが特徴です。

中小機構の支援メニューの紹介
中小機構では、令和4年度のジギョケイ策定に関する以下のご支援メニューをご用意しています。
知る 関連情報の発信:
特設サイト等を通じて、感染症や自然災害の発生時における事業の継続に関するノウハウや支援施策の情報等をお伝えします。
シンポジウム:
危機を経験した経営者やリスク管理の専門家などを招いて、緊急事態を乗り越えるのに必要な考え方や対策を学ぶためのシンポジウムを開催します。
学ぶ セミナー:
事前の計画策定の重要性、事業継続力強化計画(ジギョケイ)の制度等について学ぶためのセミナーを開催します。
作る 計画策定支援:
計画を策定する事業者に対して、専門家を派遣して計画策定の支援を行います。

9.おわりに

今回は、公開されているジギョケイの策定事例をご紹介しました。最初の動機は、別のところにあったとしてもジギョケイを策定し認定を受けることで「事業を継続する力」の強化につながっていることが判りました。多くの経営者の皆様にもジギョケイの策定に取り組んでいただきたいと思います。また、中小機構の支援メニュー(セミナー、シンポジウム、専門家派遣等)をジギョケイの策定の際に積極的に活用していただければと思います。そして策定後の教育、訓練、見直しの際にも再度、中小機構を活用してください。

本コラムでご紹介した、事業継続力強化計画モデル事例は、経済産業省中国経済産業局の以下のサイトに掲載されていますので、ぜひご覧ください。
https://www.chugoku.meti.go.jp/policy/seisaku/chusho/model.html

【プロフィール】

小沼 耕一 独立行政法人中小企業基盤整備機構アドバイザー
中小企業診断士
特殊用途の検査装置や加工装置の開発、品質管理、不動産の企画や営業を経験。現在は、新規事業展開、BCPや連携事業継続力強化計画策定、各種補助金申請等の支援を行う。

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