1.はじめに
経済産業省中国経済産業局から事業継続力強化計画(ジギョケイ)モデル事例が公開されました。第3弾となる今回は、2回目の認定を取得した3事業者と法人成りの前後で認定を取得した1事業者の取り組みについて紹介しています。
(注)ジギョケイの実施期間は、3年を超えないものとしています。既に認定を受けた計画の実施期間満了後については、計画の実施状況(報告書)とともに新たに計画を策定し、認定を受けることが必要となります。
2.事例企業の概要
- ①株式会社インフィニマム(業種:インターネット付随サービス業 従業員数:1人)
企業概要:ホームページの制作を軸に企画から制作、分析、運営までの一貫対応。これらに付随するデザインや動画制作のサービスも提供している。
- ②山県精巧株式会社(業種:生産用機械器具製造業 従業員数:13人)
企業概要:自動機器・省力機械、産業機械設備を製作。大手産業機械メーカーの機械装置部品の加工、製作を担っている。
- ③株式会社CFP(業種:その他の卸売業 従業員数:50人)
企業概要:カーボンニュートラルな社会をつくるため、ポストインダストリアルリサイクル中心の事業からポストコンシューマーリサイクルへの研究開発領域の拡大。マテリアルとケミカルのハイブリッドリサイクルによるサーキュラーエコノミーを実現・実践している。
- ④中国紙工業株式会社(業種:パルプ・紙・紙加工品製造業 従業員数:140人)
企業概要:産業用包装資材向けのラミネート加工紙製造。製袋業者を中心にサプライチェーンにおいて重要な資材を供給。ラミネート加工以外に印刷、スリット、小巻等の後加工の設備を保有し一貫生産している。
3.事業継続力強化計画に取り組むきっかけ
- 被災経験から取り組むことにした
- 取引先主催のBCPセミナーに出席し何かしらの計画策定が必要と考えた
- 知人から「平時にもメリットがある」と聞いた
ほとんどの企業経営者が過去の被災経験や被災する寸前のヒヤリとした体験により、災害等に対する備えの必要性を実感していたというものでした。また、今回の事例企業では「低利融資の金融支援」「中小企業庁ホームページでの認定企業公表」等、平時における幅広いメリットも合わせて積極的に活用しています。
4.事前対策の内容
以下に4事業者による対策の主なものを挙げています。
【ヒト】
- 避難訓練や防災訓練および訓練後の振り返り
- 情報共有ツールを災害時だけでなく平時も活用
- 平時から他社との協業体制
【モノ】
- 浸水経験のある1階事務所をかさ上げ
- 工場内のスピーカーを増設し災害時の情報を流す仕組みに改良
- バックアップサーバー、ポータブル充電器等の整備
【カネ】
- 保険の見直し契約内容を変更
- 金融機関と緊急融資の契約締結
【情報】
- 社内データの電子化、クラウド化を推進
- データのバックアップやセキュリティの強化
4事業者ともに定期的な訓練と教育を行い計画の中身を見直しています。また、取り組みを継続し深化させることで社内のコミュニケーションだけでなく、取引先との関係強化に上手くつなげていました。これらは、平時の事業運営の効率化に関する効果を示していると思われます。
さらに過去の調査では、ジギョケイ認定企業の過半数が火災保険には加入しているものの地震や水災等に備える保険や特約への加入数が低い状況でしたが、4事業者においては、火災保険のほかに水災、地震、落雷、風害等による被害への備えも各社の事象リスクに合わせて強化しています。
5.実施状況報告書について
2回目以降の場合に直近の事業継続力強化計画で記載した項目について、申請時に「実施状況報告書」にて現在までの取り組み状況を記載します。評価は、申請事業者がご自身で記号(「◎計画通り取り組んでいる」「〇ほぼ計画通り取り組んでいる」「△取り組んでいるが不十分」「×ほとんど取り組んでいない」「-(未着手)」)をそれぞれ選択します。評価を「△」または「×」とした場合は、当該評価に至った理由および今後の改善方針を記載、また「-(未着手)」の場合には、着手予定時期を記載します。
<記載例>
出典:中小企業庁事業継続力強化計画 策定補助ツール 電子申請下書用 実施状況報告書より抜粋(記入例は一部のみ)
【プロフィール】
小沼 耕一
独立行政法人中小企業基盤整備機構アドバイザー
中小企業診断士
特殊用途の検査装置や加工装置の開発、品質管理、不動産の企画や営業を経験。現在は、新規事業展開、BCPや連携事業継続力強化計画策定、各種補助金申請等の支援を行う。