今なぜ、災害対策について考える必要があるのか?
地球規模の温暖化を加速させる温室効果ガスが年々急激に増えており、これによって世界各地で異常気象や大型台風が次々に発生している。これまでにも洪水や河川氾濫などのニュースで、その悲惨な状況を目にしたこともあるだろう。
国内に目を向けると、2018年、2019年はともに台風が5個(※1)上陸し、特に2019年の台風19号(別名:令和元年東日本台風)は激甚災害にも指定されるほど大きな被害をもたらし、被害額は統計を開始した昭和36年以来最大となる約1兆8600億円(※2)になった。
内閣府が発表した「過去5年の激甚災害の指定状況一覧」を見ると、近年大規模な自然災害が各地で多数発生しているのが分かる。こうした状況を考えると、事業を継続するうえで、これからは防災・減災対策が欠かせないものになることは間違いないだろう。
※1:気象庁発表「台風の上陸数」
※2:国土交通省発表「令和2年8月21日の報道資料より」
2019年の台風19号は、大型で強い勢力を保ちながら東日本に上陸した。
近年、地球温暖化による海水温の上昇の影響もあり、発生する台風の勢力が強くなる傾向にある
企業がBCP(事業継続計画)に注目する理由
企業が自然災害によってひとたびダメージを受けると、自社の事業継続のみならず、関連するサプライチェーン、さらに国内の産業全体にまで影響が及ぶことが考えられる。
よく「災害が来たら、その時は閉業するだけ」と、避けられない災害に対して潔く諦める姿勢を貫いている経営者がいるが、そうした考えでは今後市場から退場宣告を言い渡される可能性は十分にあるだろう。
そういった事態を回避するため、大手をはじめ主要な企業は、ここ数年BCP(事業継続計画)の策定に積極的に取り組んでいる。
BCPとは、自然災害や感染症、またテロリズムなどの緊急事態に遭遇した際、従業員やその家族の安全確保、また取引先企業や地域社会に対して、企業は何をするべきかを平時に決めておく計画のことです。計画に沿って机上訓練や避難訓練を実施したり、災害時のルールをあらかじめ決めておいたりすることで、緊急時の混乱を可能な限り抑え、最終的には事業を継続させることを狙いとしている。
BCPの策定をした企業は社会的な信用度が高くなるため、取引先企業から高い評価を受ける傾向にある。
自社のBCP対策は何が必要か、まずはこちらのBCP取組状況チェックするサイトで確認してみるのがいいだろう。
自社の拠点は安全を確保できるか?
「ハザードマップポータルサイト」(国土交通省)の「重ねるハザードマップ」では、
洪水、土砂災害、高潮、津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴、成り立ちなどを地図や写真に重ねて表示できる
防災・減災対策の第一歩となる「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」
BCPの策定には、ある程度の時間がかかるほか、場合によっては担当する人員を確保する必要があるため、小規模事業者や中小企業にとってなかなか手が回らないというのが現状だろう。
「そこで経済産業省は、「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律」(中小企業強靱化法)を2019年7月に施行し、それに伴い中小企業庁は「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」の認定制度をスタートした。
この「事業継続力強化計画」は、企業の防災・減災対策の項目に特化することで、BCPより手軽に始められるのが特長です。
「事業継続力強化計画」について詳しく知りたい場合は、ポータルサイト「事業継続力強化計画をつくろう!」に掲載されている各種情報をチェックしたい。
計画策定時に活用したい、事業継続力強化支援メニュー
中小企業基盤整備機構(中小機構)では、自然災害や感染症に備えたい小規模事業者や中小企業経営者、また企業の連携体や組合等に向けて、事業継続力強化支援事業を実施している。これらの支援はすべて無料で受けることができるので、気になったらまずは相談してみるのがいいだろう。
同支援事業を担当している中小企業基盤整備機構 災害復興支援部 復興支援課の藤田朋幸氏に話を聞いた。
「災害に対して何か準備しないといけないと感じたら、まずは事業継続力強化計画のポータルサイトで情報を入手することをおすすめします。そのうえで、事業継続力強化計画についてもっと知りたい、計画書を作りたいと考えている方は、全国にある中小機構の各地域本部にご連絡(お問い合わせWebフォームでも対応)いただければ、専門スタッフが対応いたします。事前に検討しておく課題等はございませんので、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います」(藤田氏)
日々業務に追われる経営者にとって、事前準備不要で1から相談できるのは魅力だ。これから事業継続力強化計画の策定を検討する経営者は、下記の事業継続力強化支援メニューを積極的に活用したい。
中小機構の「事業継続力強化支援事業」には、事業継続力強化計画についてのさまざまな支援メニューが用意されている