連携事業継続力強化計画の認定を取得し、社会に貢献する企業へ

草津電機 株式会社

  • 所在地:滋賀県草津市東草津2-3-38
  • 業種:小型モータ・ポンプの製造販売
  • 従業員数:700名(グループ計)
  • ホームページ:https://www.kusatsu.jp/
風水害地震製造業

2022年に創業74年目を迎える草津電機 株式会社。産業用や民生用の機器に搭載している小型モータやポンプの開発や製造によって、あらゆる面から人々の暮らしをサポートしている。設備から製品の完成まで一貫生産体制を確立しており、それによって細かなニーズにも対応できる高性能かつ独創的な製品開発を可能にしている。グループ企業を含む全10社と連携事業継続力強化計画の認定事業者になったほか、災害対応型コミットメントラインで商工中金と10億円の融資契約を結び、被災した際の緊急時の資金調達を可能にした。

連携事業継続力強化計画の認定を取得し、社会に貢献する企業へ 草津電機 株式会社

インタビュー(6分20秒)

小型モータの開発・製造で成長
事業継続力強化計画の認定を目指して

私たちの生活のあらゆる分野に使われているモータ。現在、産業用から民生用までさまざまな種類のモデルが出回っており、今や社会全体の基盤を支えているといっていいだろう。滋賀県草津市に本社を構える草津電機 株式会社は、産業用機器をはじめ、民生用の空調機器や住宅設備機器、家電製品などに搭載している小型モータやポンプなどを製造している。さらに近年は、これまでに培った技術を応用してマイクロモータを開発し、医療や健康分野にも積極的に力を入れている。

1948年(昭和23年)に創業した同社は、その高い技術力を生かし、顧客のあらゆるニーズに対応するとともに、高性能かつ独自な製品を開発することで、産業界から高い信頼を獲得している。戦後の国内産業の発展とともに成長を遂げ、現在は本社工場と常盤工場(ともに滋賀県)、栃木工場の3つの生産拠点を持つ。さらにグループ企業は、国内は秋田、島根、京都、群馬に7つ、海外はシンガポール、中国、タイに3つの計10社ある。

2019年、草津電機 株式会社の代表取締役社長に就任し、同グループ企業のトップを務める髙田豊郎氏は、来たるべき創業100周年に向け「草津電機グループのESG経営(※)」を掲げ、新設したESG推進課とともに、地球環境に優しいものづくり、従業員が安心して働ける職場環境の向上といった新たな経営戦略を進めている。
(※ESG経営とは、環境(Environment)、社会(Social)、管理体制(Governance)の3つの言葉を意味し、地球環境や社会貢献、人権尊重に配慮した経営のこと。現代の企業経営には欠かせない考え方のひとつになっている)

髙田氏は「弊社をはじめグループ企業全体で目指すべきESG活動を各企業の従業員の共通認識としてもらうため、3つの取り組みをビジュアル化しました(下写真)。ESG経営は、SDGs(持続可能な開発目標)やBCP(事業継続計画)、さらに生産性向上のための施策など多岐に渡りますが、BCPは弊社のグループが掲げている取り組みのひとつである重要な課題だと考えています」(髙田氏)

髙田氏は2011年の東日本震災が起こった際、自社のBCP策定の必要性を感じていたが、当時は従業員やグループ企業、あるいは取引関係先に向けてメッセージを発信することはなかったという。しかし近年、企業のBCP対策が叫ばれるようになり、自社においても具体的な対策をどうするべきか思案していると、代表取締役社長に就任したばかりの髙田氏のもとに、株式会社 商工組合中央金庫(以下、商工中金)大津支店長である和久大輔氏が訪れた。和久氏は髙田氏にBCP対策の重要性を提言した。

草津電機が製造しているモータ、ファン、制御機器。顧客のニーズに対応するため、さまざまな種類の製品を製造している

髙田氏が掲げている「草津電機グループのESG経営」ポスター(一部抜粋)。生産性向上の取り組み、BCP、SDGsの3つの項目をビジュアル化して、それぞれの関係性を分かりやすくした

地震、台風、感染症等から守る
BCP対策は企業としての責任

BCP対策は急務とはいえ、実際に何から取りかかればいいのか。多くの経営者の悩みと同じように、髙田氏も具体的な対策については検討しあぐねいていた。そんな髙田氏だったが、商工中金 和久氏からの働きかけで一歩前に進むことができたという。

「和久支店長の話を聞いて、供給責任、それに従業員の雇用や生活を確保するために、BCP対策は企業として今すぐに果たさなければいけない責任だと感じました。それは草津電機単体ではなく、グループ全体で対策することが必要ですし、そのための投資もしなければいけません。そこでサポートをお願いしたところ、中小機構が開催しているセミナーのお話をいただき、そこに参加することにしました」(髙田氏)

商工中金は、企業のBCP対策をどのように取り組んでいるのか。和久氏に伺うと、「近年、企業のBCP対策が注目されていることもあり、本業支援の一環として、BCP対策も支援することが増えてきました。弊社が対応するのはファイナンシャルに関してですが、具体的な取り組みは、中小機構や中央会(全国中小企業団体中央会)といった支援団体に参画してもらい、共に協力しながら支援しています。やはり私たちの業務は、顧客である企業の事業継続があってこそ成り立つものです。草津電機様は大津支店で最大の取引先であり、同社の事業継続は私たちにとっても非常に重要ですので、髙田社長を全力でサポートすると決めました」(和久氏)

セミナーを受けた髙田氏は、グループ企業を含む連携事業継続力強化計画を検討した。また、グループ各社には、それぞれの企業で計画を策定するように進めた。

「どんなにいい計画やマニュアルでも、いざという時に使えなかったら意味がありません。そこで、こういった計画を作成するときは、周りをいかに巻き込むかだと思っています。今回もできるだけいろいろな人に集まってもらい、一緒に話を進めていこうと考えました。グループ企業を含む12事業所すべてに事業継続力強化計画の事務局を設置し、専門家からのアドバイスを受けながら計画書を作成する旨を申し渡しました」(髙田氏)

以前、本サイトの事例でも紹介した株式会社 山海も草津電機グループの会社の一社として、事業継続力強化計画を策定した。

代表取締役社長の髙田氏は「やはり、いざという時はグループ企業同士の助け合いが必要になります。
そのために不足している設備、資材については、今のうちにしっかり投資しないといけません。
平時である今こそ、BCPとしてどんな投資ができるのかを考える機会だと思いました」と語った

災害対応型コミットメントラインで
大規模災害時でも迅速に資金を調達

作成した計画書には、地震や感染症で影響が出た場合の緊急時の体制、初動対応、復旧に向けた手順等の項目を盛り込んだ。こうして2021年3月、草津電機は連携事業継続力強化計画の認定事業者となった。

この連携計画の認定を受けて、草津電機と商工中金は、同年5月に災害対応型コミットメントラインの契約を交わした。災害対応型コミットメントラインとは、震災等の異常事態が発生した場合でも、すみやかに資金調達を可能にする契約である。この災害対応型コミットメントラインの特長を、和久氏に聞いた。

「一般的なコミットメントラインは、大規模災害時には金融機関の貸付不能事由となるため、融資を継続できなくなる場合があります。しかしそれでは、被災直後資金が急に必要になる場合には対応できず、資金確保が困難になる可能性があります。それに対し、災害対応型コミットメントラインは有事の際にも対応できるため、大規模災害が発生した場合でも、柔軟かつ迅速に資金を調達することできます」(和久氏)

災害対応型コミットメントラインによる契約は、草津電機が全国で4例目になる。近年の防災意識の高まりとともに、同契約を望む企業からの問い合わせが増えているという。では、契約の決め手になったのは何か。契約締結の経緯を和久氏に聞いた。

「全国にある工場、グループ会社における災害リスクを洗い出し、地震や台風などでそれぞれどういう対応をしていくかを話し合いました。今回の連携事業継続力強化計画の認定によって、グループ会社のすべてが連携によってカバーできたことが、契約の決め手になりました。具体的な内容としては、震度6弱以上、またある一定以上の豪雨によって全国にある拠点のどこか一箇所でも被災した場合、自動的に発動します。被災によって一旦は業績が落ち込むことがあっても、連携計画によって早期に回復できる見込みがあることで、今回の契約に至りました」(和久氏)

「災害対応型コミットメントラインは、大規模災害が起きた場合でも柔軟かつ迅速に対応できるため、
企業の事業継続性が高まる取り組みだと思っています」と和久氏

社会貢献から事業継続を考える
近江商人“三方よし”の基本理念

数年前からBCP対策の一環として、図面のデジタル化、同データのバックアップなどを進め、どの工場でも同じ製品を生産、供給できる体制づくりに取り組んできたという髙田氏。バックアップの体制を確立、強化していることを顧客にもアピールできるようになったという。今回の災害対応型コミットメントラインについて髙田氏は、

「いざという時に手続き不要で引き出せる資金の準備は、事業継続のうえで欠かせないものだと考えています。資金はあくまで草津電機として準備しましたが、弊社や取引先企業が入っている滋賀県電化工業協同組合でも同資金を受け取れるように枠を設けています。これによって、資金面でもサプライチェーン維持の取り組みが可能になったと思います」(髙田氏)

草津電機がある滋賀県はかつて近江国と呼ばれ、江戸時代には、近江を拠点に全国各地で商いを展開、繁盛した商才ある近江商人たちがいた。彼らの基本理念に、三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)という言葉がある。これは自社の社会的責任を果たしつつ、顧客の満足度を高めながら、企業の社会的責任(CSR)に取り組むという、現代企業の経営理念にも通ずるものがすでに存在していた。前述した「草津電機グループのESG経営」は、そうした近江商人の精神を今なお継承し、生まれるべくして生まれた言葉といえるだろう。

企業の強靱化は、自社の経営や従業員の雇用安定のみならず、顧客やサプライチェーンにとっても、あるいは社会全体が継続していくためにも必要な対策である。今こそ事業継続力強化計画の策定で、社会に貢献できる企業を目指すべきではないだろうか。

  • <事業継続力強化計画の策定に生かせる、3つのヒント>

    1)自社の事業継続を社会貢献として捉える
    2)災害対応型コミットメントラインの検討
    3)事業継続力強化計画は社会的信用の第一歩

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