計画の見直し、同業者での連携というステップで実効性を高める

株式会社加藤研削工業

代表取締役
加藤 義竹
業種
製造業(機械刃物製造業)
所在地
新潟県新潟市東区岡山1282
従業員数
16人
拠点
本社(新潟県新潟市)
ホームページ
https://www.kato-kk.net/

 昨年創業60年を迎え、切削工具・機械刃物の再研磨を手がけています。金属、木材、食品等様々な素材を切削、穿孔、切断する際に用いられる刃物全般を対象にしており、取引先は地元を中心に、住宅・建材メーカー、金属加工業、食品加工業など、多岐にわたります。

様々な工場で使用されている工具や刃物のメンテナンスを行うことで製造現場を支える同社は、地域全体の事業継続や早期復旧にも大きな影響を与えることになります。最初は補助金の加点目的に事業継続力強化計画の認定を取得したといいますが、2回目の申請の前にBCPについて研修でじっくり学び、全体像を把握し計画の見直しを行うとともに、業界団体を通じて同業他社へも連携を呼びかけることで、計画の実効性をより高めることにつなげています。

同業者の「共助」をつくりたい

 

加藤社長は全国機械用刃物研磨工業協同組合の理事長を務めています。組合員は現在40社を切るまで減少していますが、各地の組合員はそれぞれ地域に顧客を抱えています。

「ニッチな業界だけに、被災しても隣の鉄工所には頼めない。被災時に組合員同士で仕事を割り振って助け合う仕組みができないかと思ったのがジギョケイを見直すきっかけでした」(加藤氏)
この構想の実現には、まず自らジギョケイを理解する必要がある。「組合でやるには自分がまず分かっていないと」と、1回目の計画期限の終了を前に、計画の見直しに着手しました。
組合の理事長も務める加藤氏

「どっぷり浸かる」時間が壁を越えさせた


 2022年4月にはじめて認定を取得した当初は、ものづくり補助金の加点が魅力に映り、一旦は簡易に取得しました。しかし重要な企業継続に係る内容にもかかわらず、理解できていないことを疑問に感じ、複数のセミナーに参加しました。しかしながら、一方的に講義を聞いているだけでは、なかなか行動につなげることはできませんでした。
「2時間程度のセミナーだと話の理解はできるが、自社に落とし込もうとすると止まってしまう。日々の仕事と頭を切り替えることもできなかった」(加藤氏)
熟練の技と高度な技術力を要し、代替が難しい再研磨技術
 転機は2025年1月に受講した中小企業大学校三条校での2日間のBCP策定研修。丸2日間集中して講義に加えて演習にも取り組んだことで計画の全体構造を理解でき、2025年3月の2回目の計画策定で内容を大幅に充実させることができたと言います。洪水と地震を主要リスクに設定し、LINEWORKSを使った安否確認体制を整備。さらにデータのクラウドバックアップへの移行も決断しました。
「データが飛んだら全部なくなる。少しコストがかかっても備えるべきだと考えが変わりました」(加藤氏)
また同社内では多能工化やOKR(Objective Key Result:組織の「目標(Objective)」とそれを測定する「主要な成果指標(Key Result)」を合わせて設定し、全社員が同じ方向を向いて高い目標達成を目指すフレームワーク)の導入にも取り組み、社員の自発性を引き出すことで、育児休暇の実現など平時の働きやすさと有事の対応力を同時に高めています。

15社が全員認定——組合を動かした行動力

自社で意義を実感した加藤社長は、総会や会合で粘り強く発信。立地リスクの把握や社員の安全確保の重要性を伝え、共感を広げていきました。2025年11月には組合員15社を集めた研修を実施し、「3か月以内に全員認定を」と号令。結果、全社が単独型の認定を取得し、2026年2月26日には、無事に連携型の認定も取得しています。
「連携型で組合として一定の対応ができれば、もし自社が被災しても代わりに仕事を担ってくれるメンバーがいると取引先に伝えられる。それができるかできないかは、非常に大きな違いだと思います。」(加藤氏)
志を同じくする組合メンバーとジギョケイを要に連携

「緊急ではないけれど、重要なこと」に手を伸ばす

 これからジギョケイに取り組む企業へ、加藤社長はこう語ります。
「難しく考えず、どんと飛び込んだらいい。今日中にやらなくていい、来月でなくてもいい。でも大事なことです。小さな会社は事業が止まったら再起が難しい。今いる社員が辞めたら戻ってくれるとは限りません」(加藤氏)
計画を立てるだけでなく、現預金の確保など経営を筋肉質にすることも事業継続力の要素だと加藤社長は強調します。まず自ら飛び込み、仲間を巻き込んでいく。その姿勢は多くの中小企業にとってのヒントになるはずです。
 
本事例のポイント
 加藤研削工業の事例のポイントは、大きく2つあります。第一に、まず単独型で認定を取得し、中小企業大学校の研修を経て計画を充実させ、さらに組合を通じた連携型へと展開するという段階的なステップを踏んでいること。第二に、機械刃物の再研磨という工場の稼働を支えるニッチな業種だからこそ、離れた地域の同業者間で助け合う「共助」の仕組みが不可欠だという点です。まず自らが学んで実践し、仲間を巻き込んでいく姿勢は、業界団体や組合を通じた事業継続の取り組みモデルとして示唆に富んでいます。