「もしも」への備えで取引先、社員、近隣住民との信頼関係を強固に
株式会社ナンゴー
- 代表取締役
- 南郷 真
- 業種
- 製造業(はん用機械器具製造業)
- 所在地
- 京都府宇治市白川川上り谷80番地36
- 従業員数
- 15人
- 拠点
- 本社(京都府宇治市)
株式会社ナンゴーは、京都府宇治市に拠点を置き、金属全般の精密機械加工を行うほか、各種治具や省力化装置の製作も手掛けています。単品・小ロットや追加工など、依頼相手に悩みがちな金属加工の相談に応える専門サイト「中途半端net」を運営しています。
株式会社ナンゴーは、金属精密加工における高い技術力を持ち、社内に製造部門もあります。開発から治具の設計、少量生産までを一貫して対応できる体制を活かし、生産性向上や品質安定を含めた提案力を強みとしています。2008年のリーマンショックをきっかけに、特定のメーカーに依存した受注体質からの脱却を目指し、試作や開発案件の受注を通じて社内の技術者育成に取り組んできました。現在では、自動車、繊維、電力など、さまざまな分野の大手メーカーの開発部門を取引先に抱えています。
その一方で、協力工場とのネットワークを活用した「中途半端net」の運営や、在庫・データ管理システム「NC-Navi」の独自開発にも取り組んできました。同システムでは、希望される発注元に限り、進捗状況をリアルタイムで確認することができます。
同社では、事業継続力強化計画の認定制度が創設される以前からBCPの策定に取り組んでおり、制度発足後間もない2019年10月には、事業継続力強化計画の認定申請を行っています。BCPの策定によって事業の早期復旧を目指す体制を整えるとともに、事業継続力強化計画を通じて、近隣住民も含めた関係先との信頼関係の構築につなげています。
BCPへの取組を、事業継続力強化計画で形に
同社がBCP策定に取り組んだ背景には、阪神・淡路大震災をはじめとする地震災害を経験するなかで、社員の安全を守り、取引先に対して安定した生産を継続することの重要性を痛感してきたことがあります。同社は、2018年に発生した高槻地震(平成30年大阪府北部地震)においても、設備の一部に被害を受けました。取引先を多く抱える企業として、機械設備や社内データを保護しなければならないという強い思いがありました。また、取引先に対して「最低限の対策を講じている」ことを示す必要性も感じていました。
「当社はサプライチェーンの接着剤的な役割は担えますが、代替生産を一手に引き受けるほどの規模はありません。それでも、有事の際に少しでも貢献できるよう、備えをしておきたいという気持ちは常にありました」(代表取締役 南郷氏)
そこで、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」を参考に、BCPの策定に取り組みました。また、避難訓練やAED訓練にも継続的に取り組んでいました。そうした取組の中で、京都府が主催したセミナーに総務担当の社員とともに参加した際、事業継続力強化計画の認定制度を知り、認定取得を目指すことにしました。
事業継続力強化計画については、「BCPの入り口」であり、これまで社内で行ってきた取組を集約し、形にするためのツールであると捉えたそうです。事業継続力強化計画は経済産業大臣が認定する制度であるため、「国が認めている」という裏付けが、社外に対する説得力につながるという考えもありました。
事業継続力強化計画策定の手引きを参照しながら策定を進めましたが、「ひな型があるため、策定自体はそれほど難しく感じなかった」と当時を振り返ります。
ポケットマニュアルと緊急LINEで「全員が動ける」体制を整備
同社では、実効性の高い初動対応を目指し、社内周知や安否確認に力を入れています。
「緊急時に誰でも迷わず動けるよう、初動対応を手帳サイズのポケットマニュアルにまとめました。緊急連絡先や避難場所などを一冊に集約し、全員が常に携帯しています」(プロジェクトグループ室グループ長 奥野氏)。
事業継続力強化計画の情報を含む社内情報は、基本的に全社公開としており、全員が必要な情報にアクセスできる環境を整えています。
また、LINEグループによる安否確認体制も整備しています。社長と工場長のみが発信できる設定とすることで、情報の錯綜を防ぎ、緊急時にも迅速に状況を把握できる仕組みを構築しています。電話連絡網もあわせて備えており、複数の手段で社員全員に連絡が届く体制を整えています。
このLINEグループによる連絡手段は、平時の緊急トラブルや悪天候対応などにも活用されています。
さらに、会社に徒歩で通勤できる距離に居住している3名は、緊急時の初動対応を意識した体制をとっています。
さらに、会社に徒歩で通勤できる距離に居住している3名は、緊急時の初動対応を意識した体制をとっています。
多様な連携により、事業継続力強化計画の実効力を高める
同社の取組のもう一つの特徴は、他社や近隣住民なども巻き込んだ対策となっている点です。同社では、重要業務として「受注済み製品の納品継続」を最優先に位置づけ、万一、自社での生産が困難になった場合に備え、他府県の同業者と代替生産に関する協定を結んでいます。この協定先とは、ISOの認定の際にも協力し合ってきた関係にあるそうです。また、年1回実施している避難訓練・AED訓練・火災訓練には、近隣の3社に声をかけ、参加を促しています。さらに、隣接する老人ホームに対しても、自社にAEDが設置されていることを周知し、いざというときには自社のAEDを活用できる関係を築いています。
そのほか、訓練内容においても、効果を高めるための工夫を行っています。
「火災訓練では、発生場所を訓練開始まで社員に知らせないようにしています。その場で状況を判断して行動する力を養うためです。訓練後は、社員全員がフィードバックやコメントを出し合い、PDCAを回しています」(奥野氏)
さらに、自動販売機メーカーとの協力により、被災時には社員や近隣の方々が水を確保できる手段を整備しています。
「火災訓練では、発生場所を訓練開始まで社員に知らせないようにしています。その場で状況を判断して行動する力を養うためです。訓練後は、社員全員がフィードバックやコメントを出し合い、PDCAを回しています」(奥野氏)
さらに、自動販売機メーカーとの協力により、被災時には社員や近隣の方々が水を確保できる手段を整備しています。
認定が社員のモチベーション向上と対外信頼の基盤に
事業継続力強化計画の認定取得による効果は、ほかにもあったといいます。以前から継続してきた防災活動や各種ルールを、事業継続力強化計画という形で集約・可視化したことで、取り組みに一貫性が生まれました。また、社員にも良い効果があったそうです。
「認定を受けることで社員のモチベーション向上にもつながっていると感じています。」(南郷氏)。
同社のBCPに対する取組は、京都BCP会議に参加したことも後押しとなり知名度が向上し、社会に向けて誠実に取り組む企業としてのイメージ発信にもつながっています。さらに、市からも注目を集めるようになっており、今後の地域連携においても良い影響があるのではないかと期待されているそうです。
「まず作ってみる」ことが重要
今後については、後継者への事業承継を見据えながら、事業継続力強化計画の見直しを進めていきたいと考えているそうです。あわせて、連携型の事業継続力強化計画の策定についても検討しており、地域との連携についても、今後も継続していきたいとしています。
最後に、今後、事業継続力強化計画の策定を目指す事業者へのメッセージを伺いました。
「事業継続力強化計画は、必ず作らなければならないものではないかもしれません。しかし、自社の身の丈に合った事業継続プランを考え、会社に合った形で運用していくことは大切だと思っています。
会社を続けていくために何が必要なのかを洗い出し、課題を見える化するだけでも、完璧でなくとも一歩ずつ前に進むことができます。
大層なものだと構えず、まずは作ってみることが重要です。そのうえで、支援の手も借りながら、少しずつ固めていけばよいと思います。わからないことがあれば、すぐに人を頼ってよいのではないでしょうか。」(南郷氏)
会社を続けていくために何が必要なのかを洗い出し、課題を見える化するだけでも、完璧でなくとも一歩ずつ前に進むことができます。
大層なものだと構えず、まずは作ってみることが重要です。そのうえで、支援の手も借りながら、少しずつ固めていけばよいと思います。わからないことがあれば、すぐに人を頼ってよいのではないでしょうか。」(南郷氏)
- 本事例のポイント
- 株式会社ナンゴーの取組は、「できることから、着実に」という防災の基本に沿った内容であることが特徴です。ポケットマニュアルの整備、緊急LINEの運用、避難訓練の実施、代替生産先との協定締結など、自社の規模と実情に合わせた工夫を積み重ねることで、少しずつ事業継続力を高めています。事業継続力強化計画は取得がゴールではなく、日常の訓練やPDCAを通じて「生きた計画」として育てていくものです。こうした取組は、社員のモチベーション向上や対外的な信頼の向上にもつながっています。