ライバルから「頼れる仲間」へ、段ボール四社の連携型BCP
ユニオン紙器株式会社
- 代表取締役
- 森 省吾
- 業種
- 製造業(段ボール箱製造業)
- 所在地
- 神奈川県横浜市栄区長沼町639
- 従業員数
- 35人
- 拠点
- 本社(神奈川県横浜市)、支店(神奈川県足柄上郡)
ユニオン紙器株式会社は、神奈川県横浜市栄区に本社工場を構え、段ボール製品の加工販売、梱包資材の調達・加工販売を行っています。アパレル、スポーツ用品、食品など様々な分野で、多くの取引先を抱える。段ボール包装の総合メーカーである森紙業の外注会社4社で連携事業継続力強化計画を策定しました。
連携体:ユニオン紙器株式会社(代表事業者)、佐脇紙器株式会社、東海紙業有限会社、株式会社共立紙器製作所、森紙業株式会社(大企業)
大企業の取引先から「御社のBCP対策はどうなっていますか」と問われたとき、1社で解決するのは簡単ではありません。ユニオン紙器株式会社は、同じ大企業の外注会に所属する同業3社と連携型の事業継続力強化計画(ジギョケイ)を策定し、代替生産や情報共有の体制を整えました。日頃の交流が有事の備えにつながるという、連携型ならではの取り組みを紹介します。
取引先からの問いかけが、連携のきっかけに
段ボール業界には、シートの製造から箱の加工まで一貫して行う「一貫メーカー」と、シートを仕入れて加工・販売する「ボックスメーカー」の2種類があります。ユニオン紙器はボックスメーカーとして事業を営む中で、納品先の大企業から「BCP(事業継続計画)対策はどうなっているか」という問い合わせを受けることが増えていました。しかし、一社単独でBCPをやり切ることには限界を感じていたといいます。
「協力会社からジギョケイの制度を教えてもらい、ネットで中小機構を調べて電話したのが策定のきっかけです。単独では難しいと思っていたBCPも、仲間と連携すれば形にできるのではないかと考えました」(ユニオン紙器株式会社 代表取締役 森氏)
連携先として声をかけたのは、原材料を仕入れており、加工の依頼を受けることもある森紙業の「外注会」で知り合った同業3社——佐脇紙器、共立紙器製作所、東海紙業です。いずれも神奈川県内に拠点を持つボックスメーカーで、もともとはライバル関係にありました。外注会の場で提案し、賛同した4社でジギョケイの策定に踏み出しました。
「協力会社からジギョケイの制度を教えてもらい、ネットで中小機構を調べて電話したのが策定のきっかけです。単独では難しいと思っていたBCPも、仲間と連携すれば形にできるのではないかと考えました」(ユニオン紙器株式会社 代表取締役 森氏)
連携先として声をかけたのは、原材料を仕入れており、加工の依頼を受けることもある森紙業の「外注会」で知り合った同業3社——佐脇紙器、共立紙器製作所、東海紙業です。いずれも神奈川県内に拠点を持つボックスメーカーで、もともとはライバル関係にありました。外注会の場で提案し、賛同した4社でジギョケイの策定に踏み出しました。
機械故障が証明した「代替生産」の実力
4社連携の核となるのが代替生産であり、その体制をどう構築するのかが最大の課題となります。同じ段ボールの加工を行っていても、大きい箱が得意な会社、通販向けのワンタッチ箱に特化した会社など、各社の機械スペックや専門領域は少しずつ異なるため、これまでは得意分野で仕事の融通をしてきました。一方、代替生産は、原材料・型・機械・作業レベルをあわせないと、一社が被災や設備トラブルに見舞われた際に、他社がカバーできる仕組みが成り立ちません。
代替生産を可能にしているのは、製造データのクラウド保存や、原材料の届け先変更の手順、機密情報の取り扱いルールといった事前の取り決めです。また、同じメーカーの機械を導入した2社間では保守部品の共有も始まっており、互いに異なる部品を備蓄することで実質的なストック量を倍にするという工夫も生まれています。
「昨年、連携先の一社でプレス機が故障し、3カ月間その工程が止まりました。その際、各社で仕事を振り分けて代替生産を行いました。仕様書だけでは対応できない工程については、現地に来てもらって指導を受けながら製造しました」(同氏)
代替生産を可能にしているのは、製造データのクラウド保存や、原材料の届け先変更の手順、機密情報の取り扱いルールといった事前の取り決めです。また、同じメーカーの機械を導入した2社間では保守部品の共有も始まっており、互いに異なる部品を備蓄することで実質的なストック量を倍にするという工夫も生まれています。
「昨年、連携先の一社でプレス機が故障し、3カ月間その工程が止まりました。その際、各社で仕事を振り分けて代替生産を行いました。仕様書だけでは対応できない工程については、現地に来てもらって指導を受けながら製造しました」(同氏)
雪の夜の連絡が守った、ドライバーの安全
ジギョケイの効果は、大規模災害だけでなく日常的なリスク対応にも表れています。4社はグループLINEで常時つながっており、安否確認や被害情報、社会インフラの状況をリアルタイムで共有しています。
「先日、小田原地区で大雪が降り、東名高速も西湘バイパスも通行できなくなりました。午後2時ごろから天気状況を共有し始め、夜7時ごろまで翌日の配送について連絡を取り合いました。横浜から小田原まで8時間かかるような大渋滞が予想されたので、事前に配送を止めてドライバーの負担を軽減できました」(同氏)
大雨や地震の際にも「被害はありません」と連絡し合うことを習慣にしており、日頃からのやり取りの積み重ねがコミュニケーションの精度を高めていると感じているそうです。想定リスクには地震や水害に加え、富士山噴火による降灰も含まれており、災害時のマニュアルやフェーズごとの対応手順も整備されています。
「先日、小田原地区で大雪が降り、東名高速も西湘バイパスも通行できなくなりました。午後2時ごろから天気状況を共有し始め、夜7時ごろまで翌日の配送について連絡を取り合いました。横浜から小田原まで8時間かかるような大渋滞が予想されたので、事前に配送を止めてドライバーの負担を軽減できました」(同氏)
大雨や地震の際にも「被害はありません」と連絡し合うことを習慣にしており、日頃からのやり取りの積み重ねがコミュニケーションの精度を高めていると感じているそうです。想定リスクには地震や水害に加え、富士山噴火による降灰も含まれており、災害時のマニュアルやフェーズごとの対応手順も整備されています。
バーベキューから生まれる信頼関係
連携型ジギョケイの成功には、計画書の内容だけでなく、日常的な関係づくりが欠かせません。ユニオン紙器では、ジギョケイの会議以外にもさまざまな交流を重ねています。連携先の工場に新入社員を連れて行き機械のオペレーションを見学させたり、インドネシアでの実習生面接に一緒に行ったり、バーベキュー大会を開いたりと、社員同士が顔を合わせる機会を意識的に作っています。
「ジギョケイの取り組みだけで会社間の関係を作ろうとするのではなく、普段からのコミュニケーションがあってこそ有事の際に力を発揮します。連携先の工場に行くと社員全員に顔を覚えてもらっているくらいの関係性があり、自社ではないけれど自社と思えるようなパートナーになっています」(同氏)
こうした取り組みは外部からも高く評価されています。原材料メーカーである森紙業の事業所長が全国会議でこの連携を紹介したところ、他の地域に同様の取り組みはないと注目を集めたといいます。
「ジギョケイの取り組みだけで会社間の関係を作ろうとするのではなく、普段からのコミュニケーションがあってこそ有事の際に力を発揮します。連携先の工場に行くと社員全員に顔を覚えてもらっているくらいの関係性があり、自社ではないけれど自社と思えるようなパートナーになっています」(同氏)
こうした取り組みは外部からも高く評価されています。原材料メーカーである森紙業の事業所長が全国会議でこの連携を紹介したところ、他の地域に同様の取り組みはないと注目を集めたといいます。
経営者の安心感、そして社員を守る覚悟
連携型ジギョケイの策定を通じて、4社の間には計画策定前にはなかった深い信頼関係が生まれました。仕事を回し合う協力関係も、ジギョケイを契機に大きく強化されたといいます。社員の意識にも変化が見られ、連携先の社長や社員と顔を合わせるようになったことで、品質や納期への責任感が高まったと感じているそうです。
「連携型のジギョケイに取り組んでから、各社の経営者に安心感が生まれました。単独でやっていると心の余裕がありませんが、有事の際に頼れる存在がいるということが本当に大きい。社員を守る立場として、ぜひ取り組んだほうがいいと強く思っています」(同氏)
かつてのライバルが、いまでは互いの社員の顔まで知る「もう一つの自社」になっている。その関係を築いたのは、日々の対話と信頼の積み重ねでした。
「連携型のジギョケイに取り組んでから、各社の経営者に安心感が生まれました。単独でやっていると心の余裕がありませんが、有事の際に頼れる存在がいるということが本当に大きい。社員を守る立場として、ぜひ取り組んだほうがいいと強く思っています」(同氏)
かつてのライバルが、いまでは互いの社員の顔まで知る「もう一つの自社」になっている。その関係を築いたのは、日々の対話と信頼の積み重ねでした。
- 本事例のポイント
- ユニオン紙器の事例のポイントは、大きく2つあります。第一に、同業のライバル4社が連携型ジギョケイを策定し、各社の得意分野や機械スペックの違いを乗り越え、代替生産体制を構築していること。実際に連携先の機械故障時に仕事を振り分けた実績があり、計画が実効性を伴っている点が特徴的です。第二に、計画書の策定にとどまらず、工場見学や社員同士の交流など日常的な関係づくりを重ねることで、有事に機能する信頼関係を育んでいること。大雪時の配送判断のように、日頃のコミュニケーションがリスク対応に活きています。ライバルから「頼れる仲間」へと関係を変えたこの取り組みは、連携型ジギョケイの模範的な事例といえます。