既存のサプライチェーン事業者が連携し、被害情報の共有とモノ・ヒトの融通の「共助」で地域の物流を守る
伊勢三河湾海事事業協同組合
- 理事長
- 櫻田 剛彦
- 業種
- 協同組合
- 所在地
- 愛知県名古屋市港区入船2丁目4番6号
- 従業員数
- 4人
- 拠点
- 本社(愛知県名古屋市)
伊勢三河湾海事事業協同組合は、伊勢湾および三河湾において、大型船の安全な入出港を支える「水先業務」に必要な施設やサービスの提供・管理・運営を行っています。水先人※が大型船に赴くための水先艇(パイロットボート)の提供や、水先艇を運航する乗組員の業務管理、水先人や乗組員の待機施設の運営など、海上輸送物流の根幹を支える役割を担っており、名古屋港、四日市港、三河港など中部圏の主要港を対象範囲としている。水先業務用施設を保有するIMSおよび伊勢湾エステート、水先人送迎用の水先艇乗組員を雇用し、運航する伊良湖パイロットボートと連携事業継続力強化計画の認定を取得。
※水先人とは、特定の港湾または水域において、船舶を安全に航行させるために、船長を補佐して操船の助言・指導を行う専門職。
連携体:伊勢三河湾海事事業協同組合(代表事業者)、株式会社IMS、伊勢湾エステート株式会社、伊良湖パイロットボート株式会社
中部圏の海上輸送において、大型船の安全な入港を支える「水先人(パイロット)」の送迎は、地域物流の早期復旧を左右する極めて重要な業務です。伊勢三河湾海事事業協同組合は、南海トラフ巨大地震などの広域災害を見据え、被災時にサプライチェーンを構成する連携事業者の早期事業復旧を図るため「連携型事業継続力強化計画」を策定しました。現場目線の情報共有ツール選定や資金繰り対策など、実効性のある対策にこだわった取り組みを紐解きます。
社会的使命から「どうすれば事業を早期に復旧できるか」を形にする
伊勢湾の物流において、水先人は欠かせない存在です。彼らには法令上の応召義務があり、有事の際も大型船に赴くことが求められます。その「水先人の足」を担う当組合にとって、事業継続は地域の物資輸送の維持に直結する重い責任を伴うものでした。
「海上輸送物流の早期復旧には、水先人が船に赴くことが絶対条件です。送迎を可能にすることは何よりも重大だと考えています」(櫻田理事長)
「海上輸送物流の早期復旧には、水先人が船に赴くことが絶対条件です。送迎を可能にすることは何よりも重大だと考えています」(櫻田理事長)
水先人の送迎には、水先艇や乗組員、水先人の待機所といったモノ、ヒトを供給するサプライチェーンが不可欠です。当組合は、以前からBCPの具体的な策定について悩んでいました。
「重要性は理解していても、正直どうすればいいかわかりませんでした。そこに中小機構中部本部のアドバイザーのサポートをいただけることになり、策定に踏み切りました」(櫻田理事長)
発災後72時間後に緊急物資輸送体制を構築するという伊勢湾BCP及び近隣各港BCPが存在する中で、今回の連携ジギョケイは、自分たちが「水先人の足を確保する」という具体的な役割を果たすための重要なピースとなりました。
「重要性は理解していても、正直どうすればいいかわかりませんでした。そこに中小機構中部本部のアドバイザーのサポートをいただけることになり、策定に踏み切りました」(櫻田理事長)
発災後72時間後に緊急物資輸送体制を構築するという伊勢湾BCP及び近隣各港BCPが存在する中で、今回の連携ジギョケイは、自分たちが「水先人の足を確保する」という具体的な役割を果たすための重要なピースとなりました。
ITリテラシーを考慮した「有事専用」の情報共有ツール
被災時に、離れた連携事業者間で迅速に被害情報を共有するため、中小機構アドバイザーの助言を受け「LINE WORKS」と被害情報を迅速に入力可能な「Googleスプレッドシート」のツールを使うことを取り決めました。
「職員の多くがLINEを使っているため、操作への抵抗が少ないと考えました。スプレッドシートもExcelに近い感覚で導入障壁は低いと感じています」(櫻田理事長)
このツールは「有事専用」と位置づけ、夜間や外出時に事務所外で被災しても連絡が取れるよう、個人の携帯電話へのインストールを基本としています。
「被災により携帯電話の通話が不通の場合でも、Wi-Fiが開放されていればLINE WORKSを通して通信可能な点が選定理由です。また、LINE WORKS にGoogleスプレッドシートを貼り付け、各連携事業者の被害情報を、迅速、簡単に共有できるツールとしました」(岩田総務課長)
「職員の多くがLINEを使っているため、操作への抵抗が少ないと考えました。スプレッドシートもExcelに近い感覚で導入障壁は低いと感じています」(櫻田理事長)
このツールは「有事専用」と位置づけ、夜間や外出時に事務所外で被災しても連絡が取れるよう、個人の携帯電話へのインストールを基本としています。
「被災により携帯電話の通話が不通の場合でも、Wi-Fiが開放されていればLINE WORKSを通して通信可能な点が選定理由です。また、LINE WORKS にGoogleスプレッドシートを貼り付け、各連携事業者の被害情報を、迅速、簡単に共有できるツールとしました」(岩田総務課長)
今後は中小機構のフォローアップ支援によるシミュレーション訓練を通じ、大規模災害という極限状態でも操作、入力を迷わないよう、スプレッドシートの入力形式をさらに簡素化するなどのブラッシュアップを予定しています。
経営を守る「支払の一時猶予」と「共助」の意識
資金面では、被災による業務停止により水先人(組合員)からの経費支払が遅れ、組合から各連携事業者への業務委託料等の支払が遅延するリスクがありました。
「港が被災し業務が止まると、サプライチェーンを構成している連携事業者への支払いも遅延します。支払の一時猶予の協力体制を構築するうえで、連携型が適していると考えました」(櫻田理事長)
また、連携事業継続力強化計画の策定プロセスを通じて「提供するモノの融通=共助」への意識も芽生えました。
「自社のボートが被災した際、湾内の他社からボートや乗組員を融通してもらう必要性に気づきました。サプライチェーンの輪を広げる意識が生まれたことは大きな効果です」(谷川事務長)
完璧を求めず、連携事業者間の対話、実効性のある取組みから始める
今回は、「日頃サプライチェーンで繋がっている、意思疎通が容易な事業者」から連携に向けた声掛けをしていきました。
「連携の枠をどこまで広げるかが重要ポイントです。最初から広げすぎると、連携ジギョケイがまとまらなくなる懸念もあるため、最初の連携体の組成は重視すべきです」(岩田総務課長)
これから連携事業継続力強化計画の策定に取り組む企業に対し、理事長は次のように語ります。
「計画を立てて終わりではなく、立てた計画に取り組み、訓練等を通して見直しをして、実効性のある対策にすることが重要です。いきなり完成度を求めず、まずは連携事業者間の対話から始めてほしいと思います」(櫻田理事長)
2年後、2回目の連携ジギョケイ認定を目指し、策定した連携事業継続力強化計画の取組の検証や、シミュレーション訓練に取り組む同組合。その歩みは、地域の海運輸送を支える誇りに満ちています。
「連携の枠をどこまで広げるかが重要ポイントです。最初から広げすぎると、連携ジギョケイがまとまらなくなる懸念もあるため、最初の連携体の組成は重視すべきです」(岩田総務課長)
これから連携事業継続力強化計画の策定に取り組む企業に対し、理事長は次のように語ります。
「計画を立てて終わりではなく、立てた計画に取り組み、訓練等を通して見直しをして、実効性のある対策にすることが重要です。いきなり完成度を求めず、まずは連携事業者間の対話から始めてほしいと思います」(櫻田理事長)
2年後、2回目の連携ジギョケイ認定を目指し、策定した連携事業継続力強化計画の取組の検証や、シミュレーション訓練に取り組む同組合。その歩みは、地域の海運輸送を支える誇りに満ちています。
- 本事例のポイント
- 伊勢三河湾海事事業協同組合様の事例のポイントは、大きく3つあります。
第一に、「地域物流の早期復旧」という明確な目的に基づき、水先人の送迎のためのサプライチェーンに関わるリソース(艇・人・施設)を提供する連携事業者が一体となって、連携事業継続力強化計画に取り組んだ点です。
第二に、「被災時に迅速に繋がること」を優先した情報共有ツールの運用です。LINE WORKS、スプレッドシートのような馴染みのあるツールを選び、大規模災害時にも有効に機能し、被害情報を共有することにより、ヒト、モノを供給する連携体制を作った点です。
第三に、「スモールスタートと平時の実効性ある取り組み」です。まずは日頃から密にサプライチェーンの関係のある小さな連携体による連携事業継続力強化計画策定から着手しています。
また、計画作りで終わらせず、中小機構のフォローアップを受けシミュレーション訓練を実施するなど、実効性のある対策となるよう取り組んでいます。これらの組合を中心とした連携事業者との取組みは、極めて示唆に富む連携事業継続力強化計画のモデルといえます。