水害経験をきっかけに広がる団地企業の連携による事業継続の取り組み

協同組合福岡金属工業団地

代表取締役
梶川 豊司
業種
協同組合
所在地
富山県高岡市福岡町荒屋敷522
従業員数
13人
拠点
組合事務局(富山県高岡市)
ホームページ
https://www.fk-kd.jp/
協同組合福岡金属工業団地は、富山県高岡市に立地する金属関連企業を中心とした協同組合です。1973年、富山県内で初となる郊外移転型工業団地として整備され、現在は13社の組合員企業が参画。本組合では、高い技術力による「ニッチなモノづくり」と異業種・同業種の連携・技術向上を目的に、団地内の企業に対する事務代行業務をはじめ、労働保険事務組合業務、研修・セミナーの開催、情報発信、工場見学の受け入れなどを行っています。
2021年3月に協同組合(事務局)と組合に所属する企業で連携事業継続力強化計画の認定を取得し、2025年6月に2回目の認定を組合参加13企業全社で取得しました。
連携体:協同組合福岡金属工業団地(代表事業者)、大石鉄工所、株式会社北田製作所、さくらシャッター工業、サシヤマ製作所、三栄自動車工業株式会社、三雄工業株式会社、有限会社スパングル、高田農機商会、株式会社道峰、株式会社HARITA、株式会社フジタ、株式会社プロト、有限会社ヨツヤ鉄工所
 富山県高岡市福岡町に立地する福岡金属工業団地には、金属加工、鋳物、リサイクルなど、さまざまな金属関連企業が集積しています。長年にわたり浸水被害を経験してきたことをきっかけに、企業同士が連携し、事業継続力強化計画の取組を進めてきました。
当初は団地内の3社と組合事務局による取組としてスタートしましたが、2回目の申請時には全13社へと拡大しました。勉強会や訓練を重ねる中で、団地全体の防災意識が着実に高まっています。団地内企業が互いに防災・減災の取組を学び合い、災害時に助け合える体制づくりを進めている点が大きな特徴です。

少数から始めた連携の取り組み

団地のある高岡市福岡町は、小矢部川とその支流である黒石川・岸渡川などに囲まれた土地であり、氾濫が発生しやすい地形構造となっています。河川改修が十分に進んでいないことに加えて、近年はゲリラ豪雨も増えており、団地内の浸水リスクが年々高まっています。
事業継続力強化計画の策定に取り組んだきっかけは、組合事務局が富山県中小企業団体中央会のセミナーに参加したことでした。まだ認定制度が始まったばかりの頃で、講師から「今なら西日本側で連携型の認定第1号になれるかもしれない」という話を聞いたといいます。翌月の組合定例会でその内容を紹介したところ、数社が関心を示し、取組への参加に意欲を見せてくれました。
当初は、団地参加企業3社と組合事務局の4者で取組を開始し、専門家の指導受けながら勉強会を重ねました。また、メンバーからの提案でお互いの工場見学を行い、良いところや改善が必要なところを専門家も交えて検討しました。
「最初から全社に広げようとすると、各社の意識の違いもあり、うまくいかないと思いました。
絵に描いた餅にだけはしたくない、実際に対策することが大事だとの大きな思いがありました。」(組合事務局・浦野氏)

こうして、参加メンバー間で話し合いを重ね、少しずつ計画を具体化していき、2021年3月に1回目の認定を取得することができました。結果として西日本側一番とはなりませんでしたが、富山県のセミナーで事例として取り上げられたほか、新聞への掲載や他企業からの問い合わせも増え、認定マークの掲示によって取引先からの信頼があがった企業もあり、ほかの組合員企業にも自然と関心が広がっていきました。そこで、3年間の計画期間が終了する前に、次回の申請は全社で取り組むことを決めたといいます。

水害の経験が生んだ危機感

1回目の計画策定から2回目の認定取得までの間、この地域では大規模な水害が相次いで発生しました。2023年7月の豪雨、2024年元日に発生した能登半島地震(令和6年能登半島地震)に続き、同年9月には豪雨(令和6年奥能登豪雨)が発生し、さらに翌年の2025年8月にも豪雨により、団地内の企業が浸水被害を受けました。計画を策定していたことの効果を実感する一方で、それぞれの災害対応を通じて新たな課題も明らかになったといいます。
・10cm程度の浸水でも激流となり、大人の男性が足を取られるくらい
 危険で、移動することも困難
・高所に保管していても濡れる製品が発生した
・床に固定されている機械や重量のある機械は移動が困難
・設備に被害が生じた場合、代替生産できる企業がない
・加入していた損害保険の浸水深では保険が適用されなかった
洪水災害の様子のお写真

訓練と災害時の連絡体制の整備

訓練に関しては、工業団地では計画策定以前から、長年にわたり防災訓練を継続して実施してきました。通報訓練・避難訓練だけでなく、毎回100個を超える土嚢を製作して各社へ配布するとともに、効果的な積み方の講習も行っています。
さらに、救急救命講習&AED講習も毎年実施しており、けがの応急処置や熱中症への対応の他、毎回テーマを工夫しながら訓練を行っています。
そのほか、毎年3月末には排水溝の清掃にも取り組んでいます。これらの活動には、団地内企業から100名以上が参加しており、防災意識の向上につながっています。
災害時の連絡手段としては、企業の経営者間でショートメールの一斉連絡サービスを利用し、注意喚起や各社の状況確認、写真や動画による情報共有も行っています。

被災経験を活かした計画の見直しと団地全体での訓練による継続的な取組

組合では、団地各社の被災経験を共有し、計画の策定や見直し、訓練を通じて課題を洗い出し、継続的な改善に取り組んでいます。毎月の定例会議では、商工会のセミナーで教わった事例問答集も活用しながら、災害が発生した場合のシミュレーションも行っています。
連携した取組に加えて、各企業においても個別の対策が進められています。例えば、コンセントを高い位置に設置する、製品や備品・書類等を床に直置きしないといった、費用をかけずに実施できる取組です。同じ団地内で互いの取組を参考にしながら対策を検討できる点も、連携のメリットだといいます。
また、実際に水害を経験したことで、計画に記載した内容と、実際に必要だった対応との間に違いがあることも分かりました。道路が水没すると工場内に閉じ込められる可能性があるなど、新たな気づきもあったといいます。簡単に考え過ぎていた点への反省もあったそうです。
勉強会の様子のお写真

最後に、これから連携型での策定を目指す事業者へのメッセージを伺いました。

「立派なことはそもそもできない。内容のレベルは高くなくても計画は作れる。『そんなに難しくないよ』という声かけが一番大事だと思っています。みんな一緒にやれば心強い、一社で抱え込まなくていい、ということが伝わると参加してもらいやすくなります。計画をその場で書いてしまうくらいの気軽さで始めてもらうのが一番だと思います。」(道峰・滋野氏)

「事業継続力強化計画をきっかけに、みんなで防災に取り組もうという機運が盛り上がったのは良かったと思っています。災害対策や資金の確保について、みんなで話し合いができるというのは本当にすばらしいことだと思います。」(ヨツヤ鉄工所・四津谷氏)

「最初は補助金に注目して参加しましたが、それだけが目的では具体的な取組にはつながりにくいと思います。ただ、地震があった際に普段の整理整頓のおかげで機械が一つも倒れなかったことがあり、取り組んだことが実際に役立つ瞬間は確実にあります。しないよりはした方が絶対にいい、そういう気持ちで続けることが大切だと思います。」(三雄工業・寺西氏)

「実際に災害が発生した時のことを普段からシミュレーションしておくことで、いざという時に立ちすくむのではなく、A案、B案と考えられる心の余裕が生まれるのではないかと感じています。消防へ通報する訓練の中で、自社の住所や電話番号を言えなかった社員がおり、それをきっかけに、常に見える場所に掲示するようにしています。そうした小さな取組の積み重ねが大切だと思います。」(浦野氏)
工業団地の配置図の看板のお写真
本事例のポイント
福岡金属工業団地の事例のポイントは、まず少数の企業から連携型の取組を開始し、無理のない形で参加企業を広げていった点です。小さなことから少しずつ、自分達が無理せずにできるという身の丈に合った進め方が、継続的な取り組みにつながりました。
もう一つの特徴は、防災訓練や情報共有などの日常的な活動を通じて、団地内企業同士の助け合いの関係を築いている点です。計画を作るだけでなく、継続的な対策検討や訓練を積み重ねることで、防災意識の向上と事業継続力の強化につなげています。