異業種35社の卸売団地が「連携」で守る命と事業

協同組合徳島総合流通センター

代表理事
北 哲也
業種
協同組合
所在地
徳島県徳島市川内町平石流通団地51番地
従業員数
4人
拠点
組合事務所(徳島県徳島市)
ホームページ
https://www.trc.or.jp/
協同組合徳島総合流通センターは、空港や高速道路のインターチェンジに近い好立地にある、卸売業を中心とした異業種が集まる流通団地。創立50周年を迎え、34社が入居、約1000名が勤務(2026年2月時点)しています。共同施設の維持管理、物流の効率化のほか、研修や交流事業を通じ、組合企業の連携強化に取り組み、地域貢献活動も行っています。
連携体:協同組合徳島総合流通センター(代表事業者)、同団地に入居する35社(2025年3月申請時点)
徳島県東部、四国の玄関口に位置する徳島総合流通センターは、ハザードマップ上で浸水リスクが指摘されている場所に立地しています。同団地では、2022年に14社が連携して事業継続力強化計画(通称ジギョケイ)を策定し、2025年の2回目の申請時には、参加企業を35社へと大幅に拡大しました。発災時に異業種だからこそ持ち寄ることのできる物資の可視化や、13年にわたり継続して実施されている地域住民参加型の避難訓練など、地域に根づいた大規模団地ならではの強みを生かした計画となっている点が特徴です。

14社から35社へ——2度目の計画策定で全員参加を目指す

 徳島総合流通センターは、徳島インターチェンジに隣接し、鳴門インターチェンジや徳島阿波おどり空港からも車で15分という好立地にあります。民間主導で立ち上げられた団地で、卸売業を中心に異業種の中小企業が力を合わせ、大企業に負けないタッグを組むことを理念とする協同組合です。ハザードマップ上では団地内は50cm~3mの浸水が想定される区域に該当しています。一方で、団地は造成時に周囲より高く整備されており、団地外ではさらに浸水深が深くなることが想定されています。このため、団地内にとどまることで命を守ることができるとの判断のもと、日頃からの防災意識の醸成が求められてきました。
1回目のジギョケイは2022年、全国卸商業団地協同組合連合会を通じて中小機構の連携型ジギョケイの策定支援を知り、まず手を挙げてくれた14社で策定しました。その後、計画をさらに充実させるため、2回目の策定では入居するすべての企業に参加を呼びかけました。
「前回は手を挙げた企業だけで策定しましたが、今回は37社全員で具体的に何をどうするかを話し合って取り組もうと声をかけました」(徳島総合流通センター事業委員会 委員長 黒崎氏)
その結果、退去予定の1社と手続きが間に合わなかった大企業1社を除く35社が参加しました。能登半島地震の記憶も新しい中、理事長より「もし今災害が起こったとしたら何ができるのか、検討することが大事だ」と後押しがありました。
代表理事 北 哲也 氏 のお写真

「実体」を重視し、組合の委員会組織を利用した計画づくり

 策定体制においても、前回の経験が活かされました。事業委員会の委員長・副委員長・事務局など4名が参加し、率直に議論できる場を設けるとともに、中小機構のアドバイザーから知見を得ながら、たたき台を作成しました。その内容を、月1回開催する事業委員会及び全組合員参加の定例会で共有する流れで進めました。
9月の定例会では、アドバイザーによる勉強会を開催し、ジギョケイの仕組みや取得のメリットについて、全組合員に向けて説明を行いました。ここでの合意形成を経て、理事会から正式に「進めろ」との指示が出されました。
また、アドバイザーからは、申請書の表現を整えることよりも、「実態として何を行うのか」を重視すべきとの助言を受けました。前回は申請書の言葉選びに時間を費やしていましたが、今回は計画の実効性に重点を置いて進めた点が、大きな違いでした。
「事業継続力強化計画について『こうしよう』という話に反対する企業はありませんでした。むしろ、『まとめてくれてありがとう』という雰囲気でした」(流通センター専務理事 桑内氏)
アドバイザーが特に時間をかけたのは、約1,000人に及ぶ安否確認の課題でした。組合員だけでなく、取引先や来訪中の顧客、災害時に避難場所に押し寄せる可能性のある地域住民への対応、さらにはトリアージ(対応の優先順位づけ)をどう行うかまで含め、実際に何が起こり得るのか想像力を広げながら、検討を重ねました。
 
 35社が入居する協同組合徳島総合流通センターの地図
 定例会での勉強会(2024年9月24日)

異業種の集まりであることの強み——「うちはこれを出せる」を一覧に

同社の取組のもう一つの特徴は、他社や近隣住民なども巻き込んだ対策となっている点です。同社では、重要業務として「受注済み製品の納品継続」を最優先に位置づけ、万一、自社での生産が困難になった場合に備え、他府県の同業者と代替生産に関する協定を結んでいます。この協定先とは、ISOの認定の際にも協力し合ってきた関係にあるそうです。
また、年1回実施している避難訓練・AED訓練・火災訓練には、近隣の3社に声をかけ、参加を促しています。さらに、隣接する老人ホームに対しても、自社にAEDが設置されていることを周知し、いざというときには自社のAEDを活用できる関係を築いています。
そのほか、訓練内容においても、効果を高めるための工夫を行っています。
「火災訓練では、発生場所を訓練開始まで社員に知らせないようにしています。その場で状況を判断して行動する力を養うためです。訓練後は、社員全員がフィードバックやコメントを出し合い、PDCAを回しています」(奥野氏)
さらに、自動販売機メーカーとの協力により、被災時には社員や近隣の方々が水を確保できる手段を整備しています。

13年続く避難訓練——地域に根ざした「伝統行事」



 同団地では、ジギョケイ以前から毎年避難訓練を実施しており、今年で13回目となります。訓練は、団地内にある徳島市指定の避難場所である銀行の研修センター宿泊棟へ、各社から歩いて避難する内容です。組合と銀行がそれぞれ発電機や水、食料などの備蓄品を用意しています。また、近隣住民も毎年20〜30人が参加しており、町内会長に案内状を届け、回覧してもらう仕組みが定着した、地域に根ざした行事となっています。

「案内がちょっと遅れると『今年はやらないのか』と聞いてこられます。『こういうのは継続することが大事ですよ』という声もいただいています」(流通センター専務理事 桑内氏)
流通センター内の銀行の研修センター屋上への避難訓練(2025年10月15日)
過去には消防署の協力を得て消防車を呼び、消火器の使い方を訓練した回もあり、直近2回では、避難場所の建物内部を初めて開放する試みを実施するなど、地域住民の要望にこたえながら、内容も工夫しています。そのため、毎回100人を超える参加があるといいます。
組合が保有する発電機も、訓練を機に初めて実際に稼働させたところ、オイルの補充が必要であることが判明。すぐに団地内企業のオートバイ用品取扱企業に相談して専用オイルを入れ、カセットボンベでいつでも動かせる状態に整備しました。計画を立てるだけでなく、実際に動かしてみることの重要性を示す出来事です。
約1,000人の安否確認では、試行錯誤を続けています。従来のメール配信では返信率が低く、アプリへの移行を進めていますが、まだ全員導入はできていません。そこで現実的な対応として、現時点では、各社から社長ともう1名の計2名がまず団地の安否確認に返信し、そこから社内の状況を把握する段階的な仕組みとなっています。

訓練の継続が入居企業の定着と防災意識の底上げに

 ジギョケイを策定した効果は、入居企業の定着にも寄与しています。浸水リスクのある団地のため、支店の移転を検討しているという話を聞くこともあり、県外の本社から「本当に訓練をやっているのか」と電話で確認を受けることもあるといいます。そのような際には、毎年実施している避難訓練や備蓄品の状況について説明し、「ぜひ、次の訓練にご参加ください。』と案内することで、安心してもらっているそうです。13年にわたる継続的な取組実績があるからこそ、こうした問いかけにも即答できているといえます。
また、先日は組合員企業が自社で補助金申請を行う際、連携型の認定書の写しを添付したことで加点を得られたという事例も生まれました。認定を取得したことによる具体的なメリットとして、組合内で共有されています。
委員会での情報交換は、各社の意識を大きく変えました。ある会社が保有する衛星電話をめぐっては、「曇りの日はつながらない」「いざという時は貸してほしい」といった具体的な議論が生まれたほか、発電機の仕様や価格についても、初めて本格的に検討する機会となりました。これまで、こうした設備に関する情報は各社が個別に調べるしかありませんでしたが、委員会の場で自然に共有されるようになったのです。各企業において自社の防災用品の見直しも進み、防災意識の向上にもつながりました。
発電機や水、食料などの備蓄品

まずやってみる——巻き込むほど計画は強くなる

 最後に、連携型ジギョケイに取り組む企業へのメッセージを伺いました。
「やろうと思ったらやってみるべきです。大変だと言い出したら話が進まない。やってみたら周りから『もっとこうしたらいい』という意見がもらえます。楽して形にするよりは、何人巻き込めるかだと思います」(流通センター専務理事 桑内氏)
「防災は災害があれば意識するけれど、普段はほとんど意識しない。今回の取り組みが問題提起のきっかけになったと思います。どんな形でもいいので、意識づけのツールとして手始めにやってみることが大事です」(株式会社クロサキ 黒崎氏)
本事例のポイント
徳島総合流通センターの事例のポイントは、大きく2つあります。第一に、14社から35社へと参加企業を増やし、2回目の策定の過程で、申請書の体裁よりも「実態として何をするか」を重視する方針に転換し、計画の実効性を高めたこと。第二に、卸売業を中心にした異業種の集まりという特性を活かし、各社が災害時に提供できる物資を一覧化するなど、異業種の強みを活かした点です。13年にわたる地域住民参加型の避難訓練の継続が入居企業の定着にもつながるなど、防災の取り組みが組合の運営面の効果も生んでいます。巻き込む範囲を広げて計画をより強くできた取り組みは、団地や組合単位での連携型ジギョケイの好例といえます。