分散型の働き方の中で推進する実践的な事業継続への取り組み

ノグチコンピュータサービス株式会社

代表取締役社長
中村 康之
業種
情報サービス業(ソフトウェア開発・ITサービス)
所在地
埼玉県さいたま市中央区下落合1085-15
従業員数
63人
拠点
本社(埼玉県さいたま市)
ホームページ
https://ncsnet.jp/
 1968年設立のIT企業で、システム開発やネットワーク構築、保守運用などを手がけています。特定メーカーに依存しないマルチベンダー体制により地域密着型のサービスを展開し、企業の業務効率化や情報活用を支援しています。近年はクラウド活用やリモート環境の整備にも取り組み、顧客の業務や規模に応じた最適な提案を行うことで、幅広い分野で事業を展開しています。

ノグチコンピュータサービス株式会社は、県内外の様々な業種の顧客を対象に、システムの開発から運用、保守までのサービスを一貫して提供しています。そのため、社員が顧客の事務所等に常駐して業務を行うケースが多くなっています。
同社では新型コロナウイルス感染症の感染拡大以前からリモートワーク環境の整備を進めており、コロナ禍を契機として、社内サテライトオフィスや自宅からの開発が可能となりました。
現在では本社に勤務する社員は約2割程度、多い時でも3割程度にとどまり、約5割の社員がテレワークで業務を行える環境が整備されています。このような分散型の働き方は、災害時の対応として、新たな課題をもたらしました。社員の所在が分散する中で、安否確認や指示伝達をどのように行うかという問題です。

震災経験が安否確認の課題を浮き彫りにする

 同社が事業継続力強化計画の策定に取り組んだ背景には、2011年の東日本大震災の経験があります。本社は1885年に完成した自社ビルで、岩盤層が深かったため43メートルの杭を打ち込んだ頑丈な構造となっています。それでも震災時には4階まで大きく揺れ、停電や計画停電の影響により業務が停止しました。この際、特に大きな課題となったのが社員の安否確認でした。

当時はグループウェアが必要十分なレベルにまで整備されていなかったため、連絡が取れない社員が発生し、なかでも顧客先に常駐している社員については、状況把握が困難だったといいます。

「常駐している社員とは連絡がつかず、安否確認ができない状況がありました。最低限のルールを決めておく必要性を強く感じました」(取締役 野口氏)

また、顧客から「業務が停止した場合にどのように対応するのか」と問われた際にも、具体的な提案ができなかった経験があったといいます。

社員保護を起点に計画策定へ踏み出す

 こうした問題意識を持つ中、IT業界の勉強会においてBCPに関する情報に触れたことを契機に、「社員を守ること」を第一の目標として、事業継続力強化計画の策定に着手することとなりました。着手時期は20248月です。

まずは自らインターネットで情報収集を行い、地元の支援機関である埼玉県産業振興公社へ問い合わせるところから取組を開始しました。

「社員を守るために、まず自社として取り組む必要があると考えました」(野口氏)

埼玉県産業振興公社から専門家による支援をしていただけることになり、野口取締役を中心に、社長および専務がサポートする体制のもと、役員3名が中心となって取組を進めたといいます。社員については日常業務を優先する方針とし、まずは経営層において計画を作成したうえで、その後、全社へ周知することにしていました。

策定にあたっては、総務担当者およびシステム管理者へのヒアリングを実施し、設備やシステムの現状整理等を行いました。専門家から、同じような業種の取組事例を紹介いただきながら、「当社の場合はどういった取組をするのがよいか」を考えていくという対話形式で検討が進められたといいます。こうした支援を通じて、抽象的であった構想が、少しずつ具体的な行動計画として整理されました。

専門家は事業継続力強化計画の電子申請についても実際のパソコン画面を用いながら支援をしてくれたため、策定は順調に進み、着手してから3カ月未満の同年10月には認定を取得することができたそうです。

分散環境に対応した安否確認体制を整備する

 同社の社員は本社ビル、顧客の事務所、サテライトオフィス、自宅と分散して勤務しているため、安否確認の仕組みづくりに工夫が必要でした。そこで、日常業務でも使用しているグループウェア「サイボウズ」を活用し、安否確認専用ページを設けました。災害時には社員がそのページに状況を入力することで、情報を一元的に把握できるようにしています。顧客先常駐の社員も同様にアクセス可能であり、場所に依存しない情報共有が可能です。

「電話がつながらない状況でも、インターネットを通じて安否確認ができる仕組みにしています」(野口氏)

また、避難行動についても見直しました。従来は隣接する空き地に集まる程度でしたが、新たに小学校への避難まで含めた具体的な導線を整理し、社員に周知しました。

安否確認専用ページ

IT環境を活かした業務継続体制を構築する

 その他の地震対策として、IT企業の特性を踏まえ、データ保護に関する取組も進めています。まず、開発用サーバーのクラウド化を推進し、社内設備への依存度を低減しました。

また、IT企業にとって重要な事業継続対策として、社員は会社からの支給端末を使い、自宅から社内環境へリモート接続できる仕組みを整備しています。現在では、約5割の社員がテレワーク可能な環境にあります。

一方、テレワークの導入が進む中でも社員の一体感を維持するため、月1回の帰社日を設け、対面による情報共有やコミュニケーションの機会を確保しています。

設備面では、震度6弱を想定し、キャビネットの転倒防止対策を実施しています。さらに、サーバーにはUPS(無停電電源装置)を導入し、停電時の影響を軽減する体制を整えています。

備蓄と地域対応を見据えた体制づくり

 備蓄については、社員に加え近隣からの避難者も含めた70名・7日分を想定し、ローリングストック方式による備蓄計画を策定しています。

また、社内には休憩スペースを整備しており、災害時には滞在場所としての利用や備蓄品の活用が可能な環境づくりを進めています。あわせて、本スペースは平時においても社員同士の交流の場として活用されています。

実践を通じた見直しが今後の課題となる

計画はサイボウズ上で共有されており、社員への周知が図られています。また、社内での点検活動を通じて、防災意識の向上にもつながっています。

一方で、訓練の実施については、計画上は、3月および9月に訓練を実施することとしています。3月は繁忙期においても冷静に対応できる体制の構築を目的とし、9月は防災の日に合わせた実施を想定しています。しかし、まだ計画通り実施できてはいないとのことで、今後は実際に動いて検証し、課題を洗い出していきたいと考えています。

「実際に動いてみて初めて課題が見えてくるため、訓練を通じて改善していきたいと考えています」(野口氏)

本事例のポイント
 ノグチコンピュータサービスの取組の特徴は、分散型の働き方に対応した事業継続のための体制を構築している点にあります。グループウェアを活用した安否確認や、テレワーク環境の整備により、場所に依存しない働き方を実現しています。

また、東日本大震災の経験から社員の安全を第一に考え、自らの意思で策定に着手した点、支援機関の専門家の支援を活用しながら、2024年8月から3か月以内で認定を取得した点も参考になります。

今後は3月と9月の訓練を通じて実効性を高めていくことが求められます。自社の特徴にあった計画を策定した好事例といえるでしょう。