ジギョケイ事例インタビュー ~南海トラフ地震に備える~

高松帝酸株式会社

代表取締役
太田 貴也
業種
製造業
所在地
香川県高松市朝日町5丁目14番1号
従業員数
256名
ホームページ
https://www.takatei.co.jp/
医療用ガスという災害時にも必要不可欠な商材を扱っている高松帝酸は、早くからBCPに取り組んでいたが、連携型ジギョケイを策定することでより強固な備えを実施。日常から社内にBCPが浸透するよう取り組んでいる。

三共運輸株式会社

代表取締役
三木 修二
業種
運輸業
所在地
香川県高松市福岡町3丁目32−3
従業員数
38名
ホームページ
https://www.logi-sankyo.co.jp/
「安全と安心を香川県の運送から」という理念をもとに、瀬戸内海を囲む四国・中国・九州地方まで、法人客の荷物を輸送。高松帝酸のガス輸送を担う大切なパートナー。

命を支える供給を止めないために──災害に備える企業の覚悟と連携

「弊社高松帝酸は高圧ガスを製造販売する会社でして、製造業でモノづくりに使われたり、医療機関で患者様の治療に使われるようなガスを販売しております」(太田氏)

医療用酸素を扱う高松帝酸にとって、災害時の供給停止は命に関わる問題。だからこそ、BCPには以前から強い関心を持ち、即時復旧を前提とした体制づくりに取り組んできました。
「大体どの企業さんに聞いても復旧目標は2週間とか1ヶ月とかなんですけれども、私どもは即時復旧することが使命だと思っています。ですからジギョケイの枠組みを使ってBCPの能力を向上させようと考えたのがきっかけです」(太田氏)

一方、三共運輸も過去の災害経験からジギョケイの必要性を痛感。
「平成16年の台風で水害による被害が発生し、パソコンや車両の修理などで700万円相当の損害を受けました」(三木氏)

その後、BCPに取り組もうと考えていたものの、「申請が難しい」「高松では必要ないのでは」という空気もあり、なかなか実行には至らなかったといいます。
「そんな中、荷主様である高松帝酸様から5社連携でのジギョケイのお声掛けをいただき、ようやく本格的に取り組むきっかけとなりました」(三木氏)

製造と運送、両輪で守る供給体制

「我々はガスを製造しますし、三共運輸さんにはそれを運んでいただく。一心同体、両輪です」(太田氏)

災害時にも止まらない供給体制を築くため、避難訓練や発電機・衛星電話の動作確認、食料備蓄の賞味期限の管理など、日常的なチェックを欠かしません。
「基本的に災害が起こった後で物資とか機械を調達しようとしてももう間に合いませんので、災害が起こる前に必要なものを完全に揃えておくことが重要だと思っています」(太田氏)

また三共運輸では、人的リソースの確保にも力を入れています。
「いざ災害が発生した場合に、ドライバーの誰が災害に遭うかわからないので、自分だけの業務だけではなく他の人の業務も賄えるような体制を作っている状況です」(三木氏)
さらに、資格が必要なタンクローリーの運行が増えている点も考慮し、会社が資格取得に必要な費用を全面的に支援する制度も整えています。
「資格の取得に必要な資金は全面バックアップし、一人でも多くの人が確保できるような体制をとっています」(三木氏)

事前の訓練が現場力を鍛える

高松帝酸では、災害時の対応力を高めるための図上演習を実施しています。これは、BCP事務局が事前に作成したシナリオをもとに、模擬訓練を行うものです。演習は、シナリオの内容が事前に参加者に知らされないため、臨機応変な対応が必要となります。

「会議室でBCP事務局が作ったシナリオで模擬訓練を行ったりしています。シナリオといってもBCP事務局に(事前に)聞いても教えてくれないんです」(太田氏)
「あそこの事務所が燃えました」「あの人が倒れました」といった緊急事態に対して、参加者はその場で状況を把握し、対応を考える必要があります。
こうした訓練は、計画を机上の空論に終わらせず、実際の災害時に即応できる力を養うことができます。

また、三共運輸では安否確認システムの導入や防災リュックの支給など、社員の安全を守る取り組みも進めています。
「こうした備えによって、社員の間で会社に対する信頼が深まったという点が、ジギョケイの大きな意義だったと感じています」(三木氏)

「やればいい」ではなく「本気で取り組む」べき理由

「必ず大手の会社や医療機関の方から聞かれるんです。BCPどうしてるの?って。南海トラフが来た時に、高松帝酸は酸素を持ってきてくれるのかと」(太田氏)

災害対策に取り組んでいることを示すだけでは不十分で、具体的にどんな取り組みをしているのかが問われる時代。国の認定制度であるジギョケイを策定していることで、取引先にも信頼してもらえます。
「自分で適当に作りましたって言うんじゃなくて、しっかりしたものがあるという根拠になります。BCPがしっかりしてないと企業っていうのは存続できないんです」(太田氏)

企業の存続は、社会への貢献や従業員の生活を守るための前提条件です。

「会社って存続することが一番大事だという方もいらっしゃると思いますが、存続しないと社会に貢献できませんし、従業員の生活も守れない。だからこそ、『やればいい』ではなくて、本気で取り組む必要があると思います。」(太田氏)