訓練が育てる「備え」と「意識」~絵に描いた餅にしない実践的な防災訓練~
下野毛工業協同組合
川崎市に拠点を置く下野毛工業協同組合は、度重なる自然災害の教訓から企業同士、さらに地域と一体となった強固な防災体制づくりを進めています。絵に描いた餅にしない実践的な防災訓練や、独自のポータルサイトを活用した共助の仕組みは、多くの注目を集めています。ここでは、組合理事長の阿部早苗氏、副理事長の手塚健一郎氏、櫻井秀一氏に、組合として防災にかける思いを聞きました。
会員企業の3分の1が被災して高まった防災意識
「令和元年の東日本台風で、企業数の約三分の一の人たちが被害を受けました。その時から皆さんさらに防災意識が高まったかなというふうに思っております」(阿部氏)
下野毛工業協同組合 理事長 阿部 早苗氏
2019(令和元)年に日本に上陸し、各地に甚大な被害をもたらした東日本台風(台風19号)。特に関東・甲信越地域では記録的な大雨となり、下野毛工業協同組合が拠点とする川崎市高津区でも、多摩川やその支流の増水により広い範囲で浸水、多くの会員企業が被災しました。
「組合として何をこう連携できるか、何やっていくかみたいなところを、やれるところから、もうすでに一昨年ぐらいに復旧がだいぶ目処がついたあたりから、組合の中で話し始めていました」(手塚氏)
こうしたことが、組合として事業継続力強化計画(ジギョケイ)策定に取り組むきっかけとなりました。
下野毛工業協同組合 副理事長 手塚 健一郎氏
課題は「どうやって情報を共有していくか」
中小企業では、防災対策や事業継続計画を推進するのは社長自身というケースがほとんどです。手塚氏も社長だけではなく防災担当者や従業員にどう伝えていくかが課題ととらえていました。
「情報をどう共有していくかっていうことは、ひとつ大きな課題にありましたので、ポータルサイトを作成しようというような動きを、色々議論を重ねる中で一つ考えました」(手塚氏)
そこで、組合員の情報共有、安否確認、被災時の設備の誘いなどができるMicrosoft Teamsを活用したポータルサイトを独自に作成しました。QRコードを読み込むだけで簡単にアクセスし、安否確認等が行えるように工夫されています。
「システムがある程度形になってきた時に、これ実際難しいよねと、動くんですかっていう話が当然出てきたので、じゃあ動かすってどうやってやるの?となって、防災訓練とか避難訓練とか、そこに移っていった。必然的でしたね」(櫻井氏)
下野毛工業協同組合 副理事長 櫻井 秀一氏
「結局ポータルサイト立ち上げて、いいものができたとしても、使わなければまったく意味がないじゃないですか。なので、それをやっぱ活用していこうというのがあって、訓練を毎年やっている」(阿部氏)
机上で作ったものを現実で動かした時に浮き彫りになるであろう様々な課題、それに我々が気づくこと。それが最大の目的であると手塚氏は話します。
ブラッシュアップを繰り返すことに防災訓練をリアルでやる意味がある
訓練では、参加者に各社の安否や被害状況をポータルサイトに入力してもらいます。
「入れてもらったものが、ちゃんとシステム上に入ってくるかどうかっていうのを確認。それができてれば、ひとまずよし。で、あとはどれぐらいの方が参加してくれるか」(櫻井氏)
土嚢の積み上げや止水板の設置なども防災訓練の中で実施しています。
独自に作成した防災マニュアルも毎年ブラッシュアップ、より分かりやすく伝えやすくなるよう工夫しているといいます。
「もっともっとこういうのがあったらいいねとか、こういうのも用意できるみたいな声も出てきましたので、できるところから修正反映していくっていうことには、防災訓練のリアルにやる意味があったかなというふうには思っています」(手塚氏)
「どのぐらいそれを使いこなせているのか、あることを知っているのか、もうこれに尽きるのかなと思いますね。細かいところのブラッシュアップってあるんですけど、それよりも何よりもみんなが使って、知って、いざというときに、簡単に使えるってことが一番大事」(櫻井氏)
安否確認は100%に、訓練により防災意識が向上
「安否確認も最初は全会員さんがしてくれたわけではありません。何年も繰り返しているうちに、去年は100%ということで、繰り返しやったことによって、効果があったのかなと」(阿部氏)
訓練を続けることで、様々な備えと意識が育っていきました。
- QRコードを用いた安否確認の定着
- 災害時にすぐ使える防災マニュアルの改善
- 土嚢止水板などを実際に扱う経験
- 一人一人が防災に参加する意識
- 地域で助け合い備える意識
「本来は毎年同じことを繰り返して、非常時にも対応できるようにという形が望ましいのかなと思いますけれども、それだけじゃやっぱり飽きてしまうということもあるのかなあと思っています。それなので、今回はちょっと視点を変えて、防災クッキングという形で防災訓練を取り入れました」(阿部氏)
この日の防災訓練では、ポータルサイトへの安否確認や被害状況の入力を行った後、カセットコンロを使って乾物や非常食を美味しく食べる「防災クッキング」を、参加者全員で実践しました。
「なんで、結構前向きにやってんの?って言うと、あの時やっとけばよかったなっていうのが僕は結構嫌なので、やっといた方がいいかな、それに尽きるかな」(櫻井氏)
「まずはやれることの計画。で、やれることの計画がゴールじゃなくて、それを実行に移してみて、修正しながら改善していくというようなところ、我々も今そういう取り組みでやっておりますので、最初はスモールスタートでいいんじゃないかなと」(手塚氏)
「みんなまず集まって話し合うっていうことが大切かなと思っています。私たちもそこからスタートしました。最初は町の地図を広げて私たち実際に被害を受けましたので、どこがどうだったよとか、ここはこうに困ったよということを付箋でペタペタ貼っていったんですね。それを元に、また町を歩いてみる。町を歩いてみるとまた違うことが見えたりしましたので、実際にみんなでやってみるっていうのがいいんじゃないかなあと思います」(阿部氏)
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