事業継続力強化計画の策定を経営改善の契機に
事業継続力強化計画(ジギョケイ)の策定は、地震や台風、豪雨や豪雪等の自然災害による被害を想定し、事業を継続するための防災・減災対策を講ずることを目的としている。だがその一方、計画策定時に自社の事業を再検証することで、事業の効率化や自社の強みを生かした新たなる経営策を打ち出し、経営改善の目標を達成した企業がある。ここでは、事業継続力強化計画の策定をきっかけに、企業力をさらに高めた企業の例を紹介する。
下請けからの脱却。自社ブランドで活路を開く
そうした探究心が、LSPフランジ結合補強具(※)を生み出す原動力になったのかもしれない。同製品は瞬く間に評判となり、協和工業のブランド力を確かなものにした。
経営者が目指す方向を明確にすれば、企業は確実にその方向に向かって進んでいく。清水氏は、経営改善に取り組めば必ず達成できると感じた瞬間だった。
※「LSPフランジ結合補強具」開発の背景
立体倉庫の安全性向上と在庫管理の効率化を両立
上水道設備は重要なライフラインだけに、災害等で何かあった場合、その対応が遅れると、多くの人々の生活に影響を及ぼすことが考えられる。
現在、全国の自治体水道局が防災対策の整備を進めているが、清水氏も水道インフラを担う者の一人として、常に災害の危機意識を持って事業に取り組んでいる。
「大きな災害が起きると、水道管の破裂や漏水といった被害が出るため、これまでにも一時的に弁栓類の需要が増えました。それもあって、常に安定かつ迅速に製品を供給する体制作りをしなければいけないと感じました」(清水氏)
事業は何かきっかけがないと、大きく変革させるのは難しい。そこで清水氏は、事業継続力強化計画を策定する機会に自社の事業を再確認することで、業務の改善点を徹底的に探した。そこで着目したのが立体倉庫だった。
このほかにも、万一操業停止した場合に備えて約1か月分の製品在庫を常備するといった方法で、発災時でも迅速な製品出荷が可能になったという。
こうして2021年3月、単独事業継続力強化計画の認定事業者になった。清水氏は今回の計画を振り返り、
「災害時の避難ルートの確認や人的被害を抑えるための対策など、従業員たちは平時から防災についてミーティングするようになり、防災意識の高まりを感じます。今後もこれに止まらず、事業継続力強化計画が役立つ方向に取り組みたいと考えています」(清水氏)
災害時の危険に着目し、それを排除することで業務の効率化につなげ、効果的な災害対策に取り組んだ協和工業。今回の計画策定をきっかけに事業をさらに強靱化させるとともに、自社製品の開発やブランドのさらなる認知・向上など、今後目指すべき目標が明確になった。
今後、事業継続力強化計画の策定を検討している経営者は、平時から取り組める業務の効率化も踏まえ、経営を俯瞰して考えるきっかけにしてみてはいかがだろか。策定時に自社の無駄を調査し、業務効率を高める方法、あるいは経営改善の効率化まで検討すると、自社の新たなる課題が見えてくるだろう。
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